はじめて君としゃべった
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我愛羅は混乱していた。
初対面の女の子が自分の事を知っていた事よりも、自分に敵意を向けない事に戸惑っていた。
―ぼくと目があっても目をそらさなかった。
それどころか、ふつうにはなしかけてくれた。
それはいつも公園で独り遠くから眺めていた憧れていた光景。自分も混ざりたかった会話。
誰からも話しかけられず、避けられ、恐れられていた我愛羅にとって願っても叶わなかった光景。
―この子は本当にぼくにはなしかけてるの?
なんで?ぼくのこと、こわくないの?
きらいじゃないの?
……なんで?
女の子は火の国、木ノ葉隠れの里から来たと言う。
―そっか。
この里のひとじゃない……
ぼくのこと、しらないんだ。
だからやさしくしてくれるんだ……
我愛羅の胸がぎゅっと痛む。
―きっと、このこもぼくの事をしったら、
みんなみたくはなれていくんだ……
ぼくは、なかよくしたいのに……
我愛羅が目を伏せると、女の子が覗き込んできた。
至近距離にある顔に赤くなる。
こんなに近くで顔を見られたことは、彼の世話係の夜叉丸くらいのものだ。
「きれいな目のいろだね!
それと髪はにことおんなじ!」
―きれい……?ぼくの目が……?
ぼくはいまなんて言われたんだ?
我愛羅は敵意以外で他人から向けられる感情には全く慣れていない。
唯一夜叉丸だけは自分の味方でいてくれたが、それ以外の人間は全て自分に距離を置く存在だった。
夜叉丸にさえ「綺麗」と形容されたことが無い。
飲み込むのに時間がかかった。
ただ、理解した時に不思議と先程痛んだ胸の同じ場所がなんだか暖かくなった気がした。
我愛羅は、にこに名前を聞かれても答えたくなかった。
もしかしたら名前を聞いたら自分の正体が分かってしまうかもしれない。
尾獣と呼ばれる禍い。
砂の守鶴を宿した自分に
近づく者はいない。
せっかく友達になれるかもしれないのに、
またいつもの様に遠ざかって行ってしまうかもしれない。
なかなか答えられなかったが、にこの興味に満ちた目が我愛羅を離さなかった。
「…………我愛羅。」
終わった。
これでもうこの子は自分と関わろうとしなくなる。
里の者達の様に自分を避けるようになるだろう。
ただほんの少しだけでも皆の様に普通の楽しい時間を過ごせた事は嬉しかった。
拒絶される前に自分から去ろう……
我愛羅がそう思いベンチを立とうとした時
「我愛羅!あいたかった!!」
にこが勢いよく抱き着いてきた。
自分の予想を遥かに超えたにこの行動に理解が追いつかない。
我愛羅の頭はフル回転していた。
自身に危害が加えられる時に必ず盾となる砂は出ていない。
にこに我愛羅に対する敵意が全くない証拠だった。
―あいたかった?ぼくに?
それにいま、ぼくはだきしめられている?
このこはいったい何をしてるの?
夜叉丸以外に暖かい言葉を掛けてもらったことがない、ましてや触れられたことも無い我愛羅は、ただただ硬直していた。
どうすればいいのか皆目見当もつかなかったが、なんだかとても心地が良かった。
僕なんかが喋りかけたら
迷惑に思うかな
そんな不安を抱えて
勇気を出してみたよ
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