キミモノガタリ
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ここは火の国国境付近。
ある商隊が風の国を目指して森を進んでいた。
「にこ、そろそろ国境だ。」
初老の男性が荷車の荷台で眠る子供に声をかける。
新しい年を迎えた人々が休みを終えて仕事を再開して一週間が経たない頃だった。
にこと呼ばれたその女の子は欠伸をしながら荷台に敷かれた布団からゆっくり出ると、外気の冷たさに身震いをした。
寝起きだからこそ余計に寒く感じる。
吐く息が白い。
「にこちゃん、お帽子」
自分の隣りに座っている祖母から毛糸で編まれた小さな帽子を受け取り、動いている荷馬車の中を御者台へ移動する。
足元はおぼつかないが慣れたものだ。
小さな手で背もたれを掴みながら祖父の隣に座り、大好きな祖父の真似をして手網を操る真似をする。
そんな孫を祖父は目尻を下げながら見守っていた。
「にこ、そろそろ森を抜けるよ」
祖父の顔を見やると優しく微笑んでいた。
「ねぇおじいちゃん。風の国って、砂漠ってどんなところ?」
今日は生まれて初めて火の国を出る日。
森の空気の冷たさですっかり目が覚めたにこは、これから訪れる風の国がどんなところなのかわくわくしていた。
にこは両親を亡くしてから、この祖父母に育てられている。
両親もそして祖父母も木ノ葉隠れの里の忍者だった。
もう四年程前になるだろうか。
にこが生まれてすぐに起きた里の禍い。
九尾の妖狐の襲来によって、にこの家族は欠けてしまった。その為両親との思い出は何一つない。
遺されたのは二人の愛娘にこと、数々の写真たち。
当時上忍を務めていた両親は戦いの前線にいた。木の葉には優れた忍びが多い。地理的にも恵まれ安定した豊かな土地柄だろうか。
だが数々の高難度任務をこなしていた両親でも、そして里の他の忍者でも、九尾には到底適わなかった。
「次元が違う」
生き残った者達は口を揃えてそう言った。
祖父は九尾の妖狐が里に襲来した際に負った怪我が元で忍を引退していた。
命があるだけ有り難かった。
引退後は祖母が以前からはじめていた商売を手伝うようになり、今ではこうして何組かの仲間の業者と共に他国へ交易に向かうようにもなっていた。
当然護衛の忍も就くが、元特別上忍だったにこの祖父がいると商隊は安心するのであった。
火の国は資源にも恵まれている為、他国へ輸出する物は多い。
とりわけ国土の八割以上を砂漠地帯が占める砂の国へは農作物などが喜ばれていた。
逆に風の国からは革製品や蜂蜜、持久力に優れた馬、希少な鉱物や貴金属などが諸国へ輸出されていた。
さて、今回はどんな珍しいものが見れるのか。
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