塾帰りにミュータントになってしまいました
不慮の事故だった。
今となってはそう結論付けるしかない。
塾帰り喧騒が聞こえる路地裏に好奇心で入り込んでしまった所が運の尽きだった。
得体の知れないモンスターに訳の分からない液体をぶっかけられて…気付けば私は…狼の化け物になっていたのだ…
「ど、どうすればいいの…?元に戻るには一体…私、これからどうなるの…?」
1人であわあわと慌てふためく。
こんな事誰にも相談できないし、このまま一生この姿のままなの!?そんなの嫌だよぉ!!
「んー?レオ〜何か聞こえなかったぁ?」
私が1人パニックに陥っている最中、上の方から声が聞こえてきた。
「そうか?」
「はっ、どーせ猫の鳴き声とかだろ?こいつは何か都合のいい理由をつけてパトロールサボりたいだけだ」
「えぇー!ラファ〜、それは言い掛かりだよー!」
「うん、マイキーの言っていることは正しいね、僕も声が聞こえたよ。女性…の声かな?」
「そーだよね!ドニ〜僕間違ってない!」
「はぁ?お前らグルか?じゃあどこから聞こえたんだよ」
「この辺かな…?ほら、ここから見れるよ」
青年の声?4人…いるのかな
この近くに……?
私は恐る恐る顔を上げてみた。
そこには人間ではない何かが私を見下ろしていた。
「きゃあああああっ!!!!!」
「「「うわああああああっ!!!」」」
「おっと、びっくりした」
4人の内3人は私の叫び声に反応して驚いたようだ。
もう1人が特に驚いていない様子なのは慣れているのか、それともただ鈍感なのか……。
でも何より驚いたのはその格好だった。
なんだろう……?
暗くてよく見えないがあれは鎧だろうか……?
全身緑色で腰あたりに武器を身に付けていて…目元ではハチマキのような物がひらひらと風に揺れていた。
「わぁ!おねーさんミュータント?」
オレンジ色の鉢巻をした化け物が目を輝かせながら私に向かって話しかけてくる。
「え、ミュータントって……あの……」
「ねぇ、あなたはどうしてここにいるの?まさか何か悪さをしようとしていたんじゃないよね?」
紫色の鉢巻をしたひょろ長い化け物が訝しみながら質問してくる。
「ち、違います!ちょっと興味本位で路地裏に入ったらいきなり変な薬をかけられて……気がつけばこうなってました……」
私は正直に答える。ここで嘘をついても仕方ないし、下手に刺激して暴れられたりしたくはないからだ。
「ふぅん……そうなんだ、まぁとりあえずここから出ようよ、ここは危ないからさ」
「え、いや、その……」
「大丈夫だって、オレらが守ってやるからさ」
「ふん、俺は女だからって遠慮しないからな!」
赤いハチマキをした化け物が何か言っているけど…私この人達を信用していいのだろうか?
そもそも人と言っていいのかどうかもよく分からないけれど……。
「レオ〜、この子怯えてるみたいだし早く行こうよ〜」
オレンジ色の鉢巻きをつけた怪物が痺れを切らすように急かす。
「うん、そうしよう。君もそれでいいかな?」
青色の鉢巻をした化け物は私の意思を確認してくれた。
「は、はい、分かりました……」
こうして私達はその場を離れたのであった。
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