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小さなニースの物語

釣り場に到着すると、トロワは早速水面に糸を垂らす。

ニースも仕方なくトロワの真似をした。

魚がヒットするまでの時間、トロワはいろんな話をしてくれた。


「ねぇ、ニース。三国国境って知ってる?

そうそう、連邦の南。あそこの近くにね魔王の城があるんだ。

え?偽物じゃないよ、本物の魔王だよ!

それがね、すんんんんごく怪しい建物なんだよ。

うーん、怖いっていうか、ピンクに光ってて怪しいの。

それでね、あたしは城の中を覗いてみることにしたんだ!

扉を開けた瞬間、目の前に魔王がいたらどうしよう?ってドキドキしたよ!

でね、足音もたてずに近づいて、

一旦深呼吸をしてから、そーっと扉を開けたらね、、、

えっ!?おっっっ!!ヒットしたよ!!!

話の続きは後でね!!!」

せっかく良いところだったのに、釣竿に魚が掛かった。

魚のせいで話が中断されてしまった。

「えー!?お魚なんていいよ!続きは?続きを話してよ!!」

ニースはほっぺを大きく膨らませ、むくれた顔でトロワと魚の格闘を見守った。



この時に釣り上げた魚は今まで見た事もないくらい大きかった。

トロワはもちろん、ニースもテンションが上がってしまった。

2人とも魔王城の事なんか忘れてしまい、ニースは話の続きを聞く事は出来なかった。



あれ以来、トロワの魔王城の話を思い出す事はなかった。


大人になったニースが、初めて自分の目で魔王城を見た時、あの時のトロワの話を思い出した。

「おばちゃん、確かにこれは怪しいね」
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