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小さなニースの物語

次の日の朝、トロワに「釣りに行こう」と誘われるが、釣りが大嫌いなニースはこれを断る。

しかし、1時間後、ニースは自分用の釣竿を持ってトロワの数歩うしろを歩いていた。

「トロワおばちゃんっていつも強引。それにお母さんも」

どうしても姪っ子と釣りをしたいトロワは勝手に準備を進め、普段は仕事が忙しく遊びに連れてってやれない両親の後押しで断れなくなってしまったのだ。

妹のカンヌも行きたいと泣き叫んだが、6歳の子供には街の外は危険過ぎるという理由で置いてきた。

「11歳の私だって子供だし。なんで私だと危険じゃないんだろう?」

そう思ったけど言えなかった。


釣りは嫌いだが、道中に遠くから眺めるゲルミやコノミは可愛くて好きだった。

あんなに可愛いのに触れるくらい近寄ると襲って来るらしい。

『雪山と草原』と呼ばれるエリアに生息するゲルミやコノミの戦闘力は低い。

大人なら簡単に倒せてしまうが、武器なんて持った事のないニースは、少し近寄って来ただけでも釣竿を武器に見立ててビビりまくっていた。

ニースはビビっていたが、トロワは平気だった。

行商人として各地を旅して回る彼女は、街道を歩いていれば魔物に襲われるは無いという事を知っていた。

今まで1度も魔物に襲われた事はない。

魔物が遠くにいる時と、少しでも近寄って来た時のニースの表情の変化は面白かった。

これは話の種になる。帰ったら皆んなに話そう。

ビビりニースと、それを見て楽しむトロワの遠足は何事もなく順調に進んだ。
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