緑間真太郎
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バレンタインが終わり、冬休みに入ろうとしている。
この学年ともおさらばか、結構早かったな、次はどんな1年になるかな…なーんて考えながら窓から校庭を見ていた。
毎年、この時期になるとどうもわくわくしてしまう。
終わりを迎え、始まりがやってくるこの季節。
まさか、今年は学年以外にもうひとつ新しい始まりが迫っているとは思っていなかった。
『あれ、ゆり!髪型変えたの?』
『うん、ちょっと前に……』
『そっかぁ!凄く似合ってるよー!』
『ありがとう』
『これから冬休みだし、ゆりも春までには恋人できるといいね!あ、でもせっかくの冬休みだし旅行もいいなー』
『うん……無事冬休みを迎えられたらね』
そう言ってシャープペンをくるりと回す私。
ただいま追試のお勉強中です。
親友の彼女も教科は違うけど、教室で一緒に勉強しています。
『あーもー!なんで追試とかあるのー?!学年最後なんだし休ませてよーー!』
『仕方ないよ、赤点取った私たちが悪いんだよ…』
『そうだけど!……ゆりはいいよねー。追試1教科で。私なんて3教科。』
『えっと、国語と化学でよければ教えるよ?ほら、今回のほとんどこの範囲から出たし、山はったらちょうど当たったから…』
『さすがー!』
キラキラと輝いている目で私を見つめてくる。私も頭は良くないが、彼女はもっと厳しいのだ。放課後に入ってから2回目のチャイムが鳴ると、今日は用事があるそうで親友は帰ってしまった。私も一緒に帰ろうと誘われたけど、まだ解いてない問題があったので断った。
(恋人、か……)
ふいに親友に言われた言葉が頭をよぎる。
恋をしたことはあるが、それが必ず実るとは限らない。悩んで迷って後ろから見守っているうちに、片想いの人に彼女ができてしまうなんて、よくあることだ。
『…私だって恋人ほしいよー!』
ガラッ
叫んだのと同時にドアが空く音が聞こえ、ビクッと肩を揺らす。おそるおそる振り返ると、この高校で最も有名な彼がそこにいた。
『なにを騒いでいるのだよ』
『ヒッ…!』
バスケ部に所属している緑間だ。
話したことはないけど、何度か表彰台に上っているのを見たことがある。
『え、えっと…』
『居残りは自由だが、大きな声で騒ぐのは他の生徒の迷惑なのだよ。考えて行動しろ』
『すみません…』
うぅ…今日は最悪だ。
あんなことを叫んで、よりによって有名な彼に聞かれて。まだ先生に聞かれる方がマシだった。じーとこちらを見てくる緑間の視線に固まる私。まるで蛇に睨まれた蛙のようだった。
『……テスト勉強か』
『え?』
『追試組なのだな。この時期に勉強しているということは』
そう言って私の方へ近づいてくると、机の上に開いてあったノートを手に取り、ペラペラとめくり始めた。
私は慌てて彼からノートを奪う。
すると、突如挟んであったテストがひらひらと床に落ちてしまった。
ヤバイと思って拾おうとするも、彼の方が先に手に届き、四つ降りにしてあったそれを開いてしまう。
『…………』
『ちょ、だめだめ!返してー!』
『……ハァ、あまり良くないのだな』
頭が、というようにため息をつく緑間。
見られた恥ずかしさでゆりは顔を真っ赤にして叫んだ。
『み、緑間君には関係ないでしょッ!勝手に人のテスト見てガッカリしないでよ…ッ!』
変な言葉を聞かれるわ、テストの点数を見られ飽きられるわでもう穴があったら入りたい。
彼が頭がいいのは誰でも知ってることだ。
それでいてスポーツもできるので女の子達からモテていることも有名である。
だからテストができなくて、恋人のいない私を見下しているのだと思った。
『……ここ、少し解き方が違うのだよ』
『…は?』
緑間は私のノートの一番新しいページをめくると、そこに計算式を書き込んでいた。
私が問う間もなく、彼の言葉が続く。
『ここにこの式を使うのは遠回りなのだよ。もっと効率的に解く式がある。これならここに数字を代入して…』
反論するどころか熱心に聞いてしまう私。
1つの問題を解いては少し沈黙をおき、再び次の問題を解説し始める。
彼がノートとシャープペンを持っているため、私は聞くだけだったがそれでも彼の解説は分かりやすかった。
全ての問題を終了したあと、彼は細かくメモしてくれたノートを返してくれた。
『お前は手際が悪いだけだ。後の問題はよく考えれば解けるものなのだよ。』
たしかに、この赤点の敗因は勉強しなかったことではなく時間がなかったからだ。
使う公式の選択でこんなにも短縮できるのかと思うとそれは驚きと感動でしかなかった。
『……えっと、その、ありがとう。教えてくれて』
『礼には及ばん。勝手に見た俺にも非はある』
『でも、こんなに、丁寧に教えてくれるなんて。部活も始まってるのに…』
緑間は時計に目をやると、そうだな、と発しただけで焦っているようには見えなかった。
私はもう一度頭を下げてお礼を言うと、彼は立ち上がりドアの方へ向かった。
ガラガラとドアを開け、去ろうとする瞬間、彼は振り返りこう言った。
『効率的にやれば解けるのだよ。勉強も、恋愛も』
『!?』
最後の言葉に硬直する私。
やっぱり聞かれてたかとガッカリしたのもつかの間、彼は次の言葉を並べ教室から出ていった。
『テスト、できないのなら教えてやる。今度の日曜日に来い』
なにを言われたのか分からず呆然と立っている私。
え?今度の日曜日?……どこに!?
結局彼の連絡先を知らない私は高尾君に聞いて、近くのカフェで待ち合わせすることになる。
一般的に見たらこれをデートというのだろうか。
その後初めて体験する複数デートに翻弄されるゆりだった。
(ちょっと待て、複数デートってどーゆことだ。なぜ高尾がここにいる)(いいーじゃんいいーじゃん!真ちゃんとゆりちゃんが二人きりってなんか危ないじゃんだから俺も…)(誤解を生むような発言はやめろ。そしてさっさと帰れ)(冷たいなー、じゃあゆりちゃん!俺とデートしよっか?)(え!?二人でですか!?)(ふざけるな、こいつは俺と勉強するのだよ。)(勉強なら俺がいても問題ないよねー?真ちゃーん?)(貴様………ッ!)