紫原敦
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『ちょっと辛いんだよね~』
『え?!』
目の前にいる彼氏の突然の言葉に私は不安と焦りを感じた。自由気ままな彼のことだ。いつ恋人解消になるか分からない。
(まさか、私に飽きたの…?)
そんなネガティブな妄想を浮かべると、さすがに次の言葉を聞くのを躊躇ってしまう。
私は一旦深呼吸をすると、いつもと変わらない笑みを作った。
『えっと、なにが辛いの?お菓子?』
『ん~ん、ちがーう』
そう言いながらポテトチップスを頬張る紫原。持っていた袋が空になると、自分のロッカーを開け、また新しいお菓子に手を伸ばす。他の選手が練習中の間にたまりにたまった紫原のお菓子を処分しろと監督からの命令があったのだ。紫原のロッカーを見た限りではそんなになさそうなのだが、問題は隣の空きロッカー。開くとお菓子の雪崩が目の前に広がった。
『…………』
『ゆりと俺との距離がさぁ~』
話を続ける紫原は、崩れたお菓子を見ると、あ、それ、踏まないでね~と軽く注意された。
『きょ、距離…?』
『そ、距離』
『えっと、物理的な?それとも心の距離的な…?』
『…はぁ?』
おそるおそる聞くと紫原は語尾をあげ、首を傾げる。
『え~?心の距離ってなに?そんなにゆりは俺と離れたかったの?』
『違うよ!ただ、なんの距離かなって考えたら…』
『そんなの、身長に決まってんじゃん』
『身長……』
彼の言葉を繰り返すと、ホッとして胸をなでおろした。
言われてみればたしかに、彼と私の身長差はかなりある。遠くから見ても絶対に間違わない自信があるほどの身長を持つ彼。さすがにこればかりは私にはどうにもできない。
(一応、牛乳は飲んでるんだけどなぁ。でもそんなに成果得られてないし……やっぱり鉄棒とかにぶら下がってみないと…)
『ちょっとゆり~?聞いてる~?』
『ん、ちゃんと聞いてる…よ…』
作業しながら考えていたので、彼が今何をしているかまでは把握していなかった。顔を挙げると紫原が正面でじっとこちらを見ている。
『やっぱり聞いてない~』
『え、あ、ごめん。なんだっけ?』
『だから~、ゆりと俺がするときって、こーなっちゃうよね~って』
『こーなるって何を……んんっ!?』
一瞬にして視界が天井と紫原へと変わった。
ふいの出来事で油断していたこともあり、唇を重ねてから舌が侵入するまで時間がかからなかった。
音を立てまるで生きているかのように、私の口内で激しく舌を動かす。
『んむ!…んん、ぁ…ん、ん……ん…』
ゆっくりと舌が離れると銀色の糸があとを引いた。紫原はにこりとも笑わず、自分の唇をペロリと舐めるその仕草は色気を感じさせる。押し倒されキスをされたと認識したのは、全てが終わってからだった。
『ハァ、ハァ……急すぎる……』
『だからさっき言ったじゃん。俺たちがするときってこーするしかないよねって』
『するときって、こーゆーこと?!』
『そ、キスするとき~。だってゆりは小さいし、俺も首が痛くなるしさ~』
身長は高いけど性格は可愛い人だなと思っていただけに、こんなことがあると改めて彼は男なんだと気づかされる。同時に心臓がうるさいくらい鳴り響いていた。
『ねーねー、もう一回してもいいー?』
『だ、だめ!まだ、だめ……、早く片付けないと…』
『ゆり、顔真っ赤~。誘ってるようにしか見えないよ~』
『は?…んん!ん……あ…!んぁ、ん!』
彼の舌が再び侵入してくると、またビクッとしてしまう私。
でもどこか期待してしまっている自分もいて拒否することができなかった。
ざらざらとした触覚とゆっくり舐め回すような紫原の舌を感じながら、私は彼が先ほど食べていたポテトチップスの味を堪能させられたのであった。
(ゆり、さっきのポテトチップスの味、わかった~?)(のり塩、味……)(せいかーい!じゃあ次は…)(もういい!もういいよ!無理して食べ……んむむー!)