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アイツが俺を好きになるはずがない。
だってアイツの心は彼に一直線だから。
『あー!今日もかっこいいー!しびれる~!』
『またかよ、いつ見ても変わらねーじゃねぇか』
『分かってないな~、高尾は。手元をよく見てみ?ちゃんと持ってるでしょ?』
『はぁ~?なにを……』
うさちゃんのぬいぐるみ(ザ☆プリティー)
『超可愛いわー!』
『ぬいぐるみはな!持ってる奴はアウトだろ!』
『なんでよ~?緑間真太郎様よ~?』
ぐりん!と首を回してこちらを見るゆり。
輝いてる眼差しが、怖い。
こいつは昔からそうだからな…
(よりによって、なんで真ちゃんに…)
ゆりは俺の幼馴染みで、一途な女の子。
一度決めたら最後まで貫くというか、まぁそうゆうタイプだ。
『真太郎様ぁ~、今日もかっこいいわ~』
『あのさ、その“様”はやめないか?同級生だろ?』
『とんでもない!いくら同級生とはいっても彼と私の間には地球を2周半できるほどの心の距離が存在していて…!』
『意味わかんねぇ』
俺はハァとため息をつく。
ほんと、マジでなんでだよ。
なんで昔から好きな奴が、今度は同級生の…バスケ仲間に恋しちゃうんだよ!
『ありえねー!』
『何をしているのだよ高尾』
『え?真ちゃん?』
いつ移動したのだろうか。
後ろから聞こえた声は姿を確認しなくても誰のものか分かった。
ゆりになんてビクッと肩を震わせ、おそるおそる振り返る。
あぁ、やっぱりコイツ変わってないな。
『緑間様…!』
さっきまであんなにペラペラ喋ってたに、急に大人しくなるゆり。
顔を真っ赤にして次の言葉を必死に探している。
真ちゃんはというと、“様”と呼ばれたことを不信に思ったのか少し眉間に皺を寄せたが、すぐ元の表情に戻った。
『高尾、行くぞ』
『へ?!どこに!?』
『体育館に決まってる』
『あ、もうそんな時間かぁ~』
チラッと時計に目をやればあと少しで部活の時間だ。
真ちゃんはそれだけ言うと俺とゆりの間を抜けて、教室を出ようとした。
『あの!緑間様……ッ!』
隣で顔を真っ赤にしたゆりが彼の名を呼ぶ。
再び“様”で呼ばれながらも彼は足を止めた。
(え?!ゆり、なに考えて…!?)
まさか、と最悪な状況が頭をよぎる。
教室には帰宅部の生徒がまだ数人残っているこの状況で、彼女が彼を呼んだ。
俺は焦って身を乗りだし、止めようとする。
こんなところで告白させるわけにはいかない。
『おい、ゆり…!』
『ボールに、気をつけてくださいッ!』
俺の声と彼女の声はほぼ同時だった。
ん?ボール?
真ちゃんも理解できなかったらしく、頭にはてなマークが浮かんでいる。
ゆりは急いで言葉を繋いだ。
『私の占いによると…緑間様は、今日ボールに気を付けた方がいいって……』
恥ずかしいのか声がどんどん小さくなっていき語尾なんてほとんど聞こえない。
俺は勘違いしたらしい。
それにしても、ボールって…
今から部活行くんだけど。
『だから、気をつけてくださいッ!』
『あぁ、わかった』
とりあえず言い切ったゆりに、とりあえず答える真ちゃん。
そしてとりあえず安心する俺。
そのまま真ちゃんはすぐ体育館に向かい、俺もあとを追いかけようと走り出す。
『あ、高尾ッ!』
ゆりに呼ばれ、急いで足を止めて振り返る。
そこには満面の笑みで手を降っている彼女がいた。
『部活、頑張ってね!』
それはまるで天使のようだった。
俺の一番大好きな彼女の笑顔。
『おぅ!任せとけ!』
そう答えると俺は再び走り出した。
これは俺だけの特権。
たとえアイツが俺以外を見ていたとしても。
アイツのことは誰よりもわかる。
片想いと分かっていながらも、俺の心はいつも以上に満たされていた。
ちなみに。
その後、緑間が持っていたラッキーアイテム(うさぎのぬいぐるみ)が破れてしまう。
原因は部員が投げたバスケットボール。
それがたまたま置いてあったぬいぐるみにあたり、コート内に落ちたかと思うとボールを取りに走ってきた他の部員に踏み潰された。
そこでぬいぐるみの耳が……
それを見た緑間は思った。
(彼女の占いが当たるとは……)
後日、彼女のことが(正確には彼女の占いが)気になった緑間に対して、大きな焦りを感じた高尾だった。
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