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白い肌にしなやかな髪。
クラスを越えるほどの人気を持つ彼女に
俺は恋をしていた。
片思いで肩重い…とか
新入部員として迎えた彼女に一目惚れをして早数ヶ月。
あの日以来、俺は運動する楽しさ、仲間と共有する素晴らしさの他にもうひとつ新たな感情を抱えていた。
(シャレにならねーぞ、マジで…)
まさか部活に行く=彼女に会えるというドキドキした生活を毎日送っている。
彼女は1年生。3年生である俺はどうやっても授業や用事なしに休憩時間で会うことはできない。
だから唯一の会えるのが部活しかないのだ。
『……ハッ!部活動に部下集う!』
思い浮かんだギャグをメモしながら俺は首を横にふった。
彼女はギャグを嫌うタイプでも好むタイプでもない。
にこにこして自然に流す。
まぁ、苦い顔されるよりはマシだよな。
(どうすれば…いいんだよ…)
最初は見ているだけで、仲良くするだけでよかったのに。
最近はどうも欲張りになってきている気がする。
うーん、と悩む俺の肩を後ろからポンポンと叩く奴がいた。
『ん?なんだ………』
『わーい、引っ掛かったー!』
振り向いた瞬間頬をむにゅっ!と指され、にこにこする監督。
相田リコ……俺たち、バスケ部のマネージャーだ。
『…マネージャー、何の真似じゃー』
『あ、うん。そーゆーのいらない。寒くなるから』
フゥとため息をつく監督に俺は用を尋ねた。
日向に渡すものがあったらしい。
あいにく教室にはいなかったので俺が受け取り、あとで渡すことにした。
『それより、どうかしたの?』
『え?』
『なんか、思い詰めた顔してる』
『…そう見える?』
『うん、すっごく』
マジか、他人にまで分かるほどか。
さすがに本当のことを言うわけにもいかないので適当に誤魔化してその場を流す。
……なーんてこと、監督には通用しないわけで。
『…で?何かあったんでしょ?何があったの?言いなさい!』
何かあったこと前提で話を進められてしまう。
いくら3年生で授業は被らないとはいえ、部活ではバリバリ彼女と話している監督に相談するのはなぁ。
でもこの場はどうにかしないと…。
『……うんうん。それで?もうアタックとかしたわけ?』
『いや、まだ……』
『じゃあライン交換とか』
『それもまだ……』
『ハァ?アンタ、男でしょ?!』
大きくため息をつく監督。
とりあえず名を伏せて話したが、さすが女子だけあって食い付きが凄い。
(でも、まぁ………)
『やっぱり女の子というのは相手から来てほしいものなのよ。それが興味ない人だとしてもね!来てくれたらドキッてするし、そうゆう目で見てなかった人から告白されるわけだから…』
女の子のアドバイスはこちらが考えていたもののさらに上を行く。
とりあえず俺は適当に聞くふりをしてその場をやり過ごした。
チャイムが鳴り、放課後を迎える。
俺は日向と一緒に体育館に向かおうと席を立った。
『日向、部活行こうぜ』
『あ、わりぃ。ちょっとこれから約束あるんだわ。先に行っててくれ』
『おう、わかった。早く来いよー』
そう言葉を交わすと、俺は教室を出た。
いつもなら早足で降りる階段。
今日は少しゆっくり歩いた。
監督の言葉が気になっていた俺はうーんと頭を悩ませた。
だいたい、そんな簡単に行動できてたらこんなに数ヵ月も黙ってないって。
今だって少し話すくらいで、すぐ終わっちゃうし。
俺は立ち止まり深いため息をつく。
彼女の言葉を変に意識しているのは明らかだ。
(……あ)
今日の部活について心配していたら、うっかりメモ帳を忘れてきたことに気づいた。
焦って教室に引き返す。
ゆっくり歩いていただけあり、すぐたどり着いた。
閉まっていた扉を開けようと、取手に手をかけると中から声が聞こえた。
あれ?日向、まだいたんだ?
『お前しかいないんだ』
ん?
『俺だって色々考えたけどやっぱりお前しか……』
お?
『好き、なんだ…ほんとに』
これは大変なところに遭遇してしまったようです。
友達の告白シーンを盗み聞きとか良くないことは分かってるが、気になってしまう。
とりあえず相手だけ確認して、すぐ体育館に向かおう。
ちょっと見るだけなら大丈夫だよな?
そっと扉の隙間から覗く。
次の瞬間、俺は絶句した。
『考えておきます』
その声は聞き覚えのあるものだった。
俺が聞き間違うはずのない声。
今まで何度心臓が跳ねたことか。
『わかった』
『すみません、すぐに返事できなくて』
『大丈夫だ、急に言ったのは俺だしな』
なんで?
なんで彼女がここにいる?
なんでゆりがここに……
それに今の告白……日向が彼女に?
日向が教室を出ようとするところを察し、俺は近くの教室に隠れた。
ガラガラと扉が開き、日向だけが教室を出て階段を降りていく。
俺は複雑な気持ちでいっぱいだった。
(日向先輩、結構ガンガンいくタイプなんだよね…)
私、ゆりは悩んでいた。
このあとどうすればいいのだろうか。
先輩だし、無下にお断りはできないし。
あんな真剣な顔されたら断れないというか。
私は慣れない3年の教室の窓を見て考えていた。
『やっぱりOK するべきなのかぁ…』
ドン!
突然横から伸びてきた手が窓を叩く。
ハッとし振り替えるとそこには伊月先輩がいた。
『い、伊月先輩!?』
『何が?』
『へ?』
『何をOKするの?』
それはいつもの伊月先輩からは想像できないほど低い声ときつい表情。
壁ドンは女子の憧れてだとは知っていたけど、今の状況はとても恐かった。
『き、聞いてたんですか…?』
『ゆりはさ、日向のこと好き?』
『え?!』
そんなに身長が高くない伊月先輩だからこそ顔がこんなにも近くに感じる。
もちろんドキドキというよりひやひやに近い感情を抱いているのだが。
『俺さ、ダメだわ……黙って見てらんない』
『伊月先輩…?』
『ごめん』
そう言うと私を引き寄せ、力強く抱きしめた。
突然のことで頭がパニックになる。
『い、い伊月先ぱ…!』
『俺さ、ゆりのこと好きなんだ。ゆりが日向と付き合うって考えたら、いても立ってもいられなくて。』
その言葉は強く、そして悲しそうであった。
私の顔が赤く染められていく。
私、いま、凄くドキドキしてる。
『あの……伊月先輩』
『なに?』
『付き合うってなんの話ですか?』
………ん?
『え、だって日向と付き合うんじゃ…』
『へ?話聞いてなったんですか?日向先輩の恋愛相談を受けてたんですよ?』
『は!?』
聞けば、偶然日向の好きな人を知ってしまい、その日以来日向の恋愛相談を受けていたと。
そして日向が好きな人と近づくために、色々策を練ったらしく、協力してほしいとゆりに頼んでいたらしい。
(お前にしか頼めないってことだったのか…)
勘違いして突っ走った自分が恥ずかしく、みるみる顔が赤くなった。
“大丈夫ですか?”とゆりが顔を覗きこむ。
俺はため息をつくと、もう一度彼女を抱きしめた。
『ごめん、勘違いして』
『いえ、大丈夫です。…伊月先輩の気持ちも聞けましたし』
『う………』
気まずくなり、俺はゆっくりと彼女から離れる。
退かれた、か…?
チラリと彼女の様子を見ると、何か考えてうつむいていた彼女が静かに顔をあげる。
目が合うと彼女はにっこり笑い、今度は自分から俺に抱きついてきた。
そして小さく耳元で呟く。
『よろしくお願いします…!』
照れたような彼女の可愛い声は小さいながらもはっきりと耳に届いた。
俺は信じられない気持ちで目をぱちくりさせると、持っていた鞄を落とす。
そして心が暖かい何かで埋め尽くされる。
『ほんとに…?』
『ええ』
『付き合ってくれるのか?』
『はい』
『ほんとか?』
『好きです』
その言葉をどれほど夢見たことか。
俺は力強くゆりを抱き締めると、彼女の華やかな香りが俺を包んだ。
『好きだ、ゆり……!』
片思いで肩重い日々は卒業、
この恋は濃いものになるはず。
(今、すげーいいダジャレ思いついた)(…濃い恋来いとか言わないですよね?)(お!それもいいな!メモメモ!)