黄瀬涼太
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なんでこうなってしまったのだろうか。
壁に背中を預け、目の前には一人の男性が壁に手を当てている。
これは今はやりの壁どんではないだろうか。
こんなひとけの少ないところで、真っ正面で見られている私の顔。
私の身長に合わせているので、顔が目の前にある。
あぁ、こんなの見られたら絶対勘違いされる。
『で、用ってなんッスか?』
『あー、その、えっと…とりあえず、離れてくれるかな?』
『ええー、俺といるのイヤなんスか?』
『そうじゃないけど!こんなところでこんなことしてたら騒がれるでしょ。黄瀬君はアイドルなんだから』
『でもここに呼んだのは君ッスよ?』
そう言われるとなにも言い返せなくて。
ニヤニヤする黄瀬に内心ドキドキしている私。
あぁ、もう!こんなところ選ぶんじゃなかった!
早く終わらせちゃおっと!
『あの、これ……』
『お?チョコッスか!やったー!君から貰えるとは思ってなかったッス!』
『あ、いや、それ、私のじゃなくて…』
『へ?』
『ゆ、友人の……』
そういって持っていたバックを開くと5~6個の可愛い箱が。
もちろん中にはチョコレートが入ってる。
最近ちょっとした出来事から仲良くなった黄瀬君。
彼と仲がいいという理由でこんな役に回されるとは運がない。
だって、多分彼は……
『あぁ、悪いけど受け取れないッスね~。持ち帰れないし……』
はい、知ってます。
人気すぎる彼はやっぱりプレゼントが多い。
女子の気持ちを無下にしないように、と極力受け取っているようだが限界はある。
早い者勝ちの世界なのだ。
(ま、そうなるよね……困ったなあ、私が怒られそう…)
友人の不満そうな顔を思い浮かべ、ハァとため息をつく私。
そのとき、彼がぐいっと近づいた。
『君のはないんスか?』
『え?』
真面目な顔にどこか寂しさを漂わせた瞳が近づき、思わずドキッとしてしまう。
実は用意してないわけではない。
でも友人のは渡せずに自分のを受け取って貰うのは気が引ける。
うーんと悩んでるうちに、今度は彼がうつむきため息をついた。
そして何かボソッと呟くと、顔をあげにっこり笑った。
『その子達のチョコ、受け取ってあげてもいいッスよ』
『ほんと?!』
『ただし、君からのチョコが貰えるならッスけど』
『え?』
予想外の要求にきょとんとする私。
我にかえって自分のチョコを取り出す前より先に彼の言葉が私の行動を止めた。
『チョコがないなら、キスでもいいッス』
『へ?……ちょ!なになに!?ぁ…!』
彼の身体がと私の身体が密着する。
太ももの間に足を入れられ、彼の唇は私の耳元に。
スーッと耳を軽く舐められると、突然のことでビクッとする私。
『耳、敏感なんスね~』
『ちょ、まッ、ゃ…ん。いぁ……』
耳元でちゅちゅッとリップ音がすると、そのまま舌の感覚が伝わってくる。
中に入れられ、ゆっくり掻き回されると、クチュクチュといった音が私の身体をさらに熱くさせる。
私が彼を離そうと手で押してみるも、両手で両方の手首を捕まれ、そのまま壁のところで固定。
同時に私の太ももに挟まれていた彼の足がさらに押しつけられ、驚きでまた小さく声をあげた。
『ぁあ…だめ、ダメだよ黄瀬君…!』
『じゃあ、今度はこっちを戴こうかな?』
私の耳元から離れ、ニヤリとした顔を見せると角度を変えて近づいてくる。
唇と唇が近づき、もう少しで重なりそうな瞬間。
私はついに告白した。
『チョコあります!!』
『……へ?』
『ももも持ってます!黄瀬君用のチョコレート!だから、その……!』
お互いの顔は見えず、息が混じるほどの近さに私はふらついていた。
少しすると、彼はクスクス笑いながら私を解放してくれた。
『くく、そうッスね、そうゆう話だったッスもんね。喜んで貰うッス』
『ほんと?ありがとうございます!』
『いや、ふつうはお礼言うのこっちだから。…まぁ、キスしてくれた方が喜ぶんだけどね』
『え?なにか言いましたか?』
『なんでもないッス』
彼は私から複数のチョコを受け取ると、ひとつひとつ外観を確認した。
赤いリボンで縛られた三個入りの箱や、お花がついた四個入りの青い箱。
どれも可愛いし、綺麗だ。
(……で、どれが彼女ッスか?)
名前が書いてあるわけではないし、こればかりは本人に聞かないと分からない。
確かめようと顔を上げたときだった。
『こ、これ……受け取ってください!』
差し出されたピンクの箱。結ばれたリボンにはメッセージカードが挟まっている。
(聞く必要なかったッスね……)
彼女の手から自分が最も欲しかったチョコレートを貰うと、その箱に軽くキスを落とす。
『ありがとう。キスの方はこれで我慢するッス』
『え?はい?キ、キス!?』
『ホワイトデー、楽しみにしててほしいッスよ』
ニコニコ笑う彼は手を振ると、そこから去っていった。
時計を見るともう部活が始まって30分経過している。
彼がいなくなったことを確認し、ホッとした気持ちとまだ続いている鼓動で私はその場に崩れ落ちた。
(心臓、爆発するかと思った……)
まだ耳元から伝わった彼の唇の感触と押しつけられた足の感覚を思い出すと、身体が熱くなってしまう。
ドキドキする心臓を抑えることができないまま、私は立ち上がりふらふらと歩きだした。
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