†奪還†
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嫉妬がすぎると
いつしかその気持ちは
独占に変わる‥-
「…エンヴィー…!」
「よぉ。遅かったじゃん」
「貴方‥何してるの…?」
「アンタの帰りを待ってたけど」
「…」
呆れて…というより、観念したように、彗は溜息をついた
「来る時は前もって連絡してって言ったのに…」
呟きながら、未だ着ていたコートを脱ぎ、自室へと入る
暫くしてリビングに戻ってきた彗は、重々しい軍服から、普段着へと変わっていた
「今日は何にする?」
いつものように棚を開け、彗は困ったような顔を向けた
「ごめん。葉っぱ切らしてたみたい…」
葉っぱとは紅茶の事
彗との出会いが紅茶であった事から、彗はいつもオレにオリジナルブレンドの紅茶を入れてくれる
彗の入れる紅茶は格別に美味い
元々の味わいというよりは、彗が入れるから…なんだけどね
「どうしようエンヴィー…」
困った顔も好きだけど、オレは笑ってる顔の方が好き
「だと思ってさ。近くの店でちゃんと仕入れてきたよ」
「ホントに?ありがとう!」
オレが紙袋を渡せば、その顔はすぐに笑顔へと変わる
だからさ
あんまりそーゆー顔
オレ以外の前でして欲しく無いんだよね…
どうせいろんな奴に向けてんだろ…?
「エンヴィー?」
「何?」
呼ばれて意識を呼び戻せば、彗がオレの顔を覗き込んでた
「だから、いくらだった?って」
「あー…いいよ。今日はオレの奢り」
「いいの?」
いいの?って、そんな顔で聞かれて金を取れる奴がいたらオレはそいつに聞きたい
―人間の血流れてる?―って
その日は
紅茶を飲んで
たわいも無い話…例えば、彗の友達の話とか、仕事場での彗がやったミスとか…そんな話をして終わった
「明日も仕事だから…」と言った彗の言葉に従って、オレは早急に退散することにした
「おはようございます」
朝早く、司令室に顔を出した彗に帰ってきたのは、爽やかな朝の挨拶…では無かった
「彗。今日は随分と早いじゃないか。どうした?私の顔がそんなに見たかったのかね?」
「えっと…―」
「んな訳ねーだろバカ大佐。彗は俺に会いに来たんだよ」
「兄さん…それも無いと思うよ…。おはよう。彗」
「おはよう。アルフォンス君」
かろうじてまともに挨拶を交わしたのは鎧のアルフォンスのみ
しかし…
「うぉっ!アル!先に挨拶しやがったなぁっ!!」
「だって兄さんが大佐と遊んでるから…」
と次の瞬間には熾烈な兄弟ゲンカへと変わる
いつもの事だ…と彗はそのケンカに巻き込まれないよう、自分のデスクへと向かった
「おはようございます。ハボック少尉」
「おう…」
いつもはここで一絡みあるのだが、それも起こりそうにない
いぶかしげに彗がハボックをみやると、その顔は疲労に満ち溢れていた
「…どうしたんですか…?」
「いや、昨日徹夜で…」
「あー……コーヒーでもいれましょうか…?」
「頼むわ」
いつもならそこで心踊るはずのハボックも、今日はその気力さえ無いらしい
「ふむ。ハボックは戦意喪失か…チャンスだな…」
「誰がそうしたんですか」
「私だ……………!?」
満足気に答えたロイの隣には、静かにホークアイが銃を構えていた
五月蝿く響く彗の事で起こった兄弟喧嘩と、彗がハボックの為にいれたコーヒーをロイが奪うのを牽制する為、開け放たれた窓に向けて一度だけ銃打つ
「……おはようございます。中尉」
一人その場で冷静に挨拶をした彗を見とめると、ホークアイはツカツカと歩みより、その腕を引いた
「中尉!?」
驚く彗をよそに、ホークアイは彗を入口付近まで誘導し一言
「…やっぱりここにはおいとけない」
「は?」
「ここには彗をおいとけない」
「あの…どういう…―」
彗がそこまで喋ったと同時、ホークアイの姿が違うモノへと変わり出す
「「「エンヴィー!!!?」」」
エド・アル・彗の声が同時に重なる
「ちょっと…貴方どうしてこんな所に!?」
「アンタの事が心配でさ。だって、家に行くたびに『今日は誰々に肩を抱かれて、ホークアイ中尉が…』って。いい加減オレだって耐えられないよ」
「てめっ…エンヴィー!!!」
「あぁ…鋼のおチビさんもいたんだ…でも、ちょっとジャマしないでくれる?」
そういうとエンヴィーはエドを腕一振りで壁際げと吹き飛ばした
「エド!?」
「彗、オレとおいでよ。そんで、オレに毎日アンタが得意な紅茶を入れてよ」
「ちょっと…エンヴィー」
強引すぎる言葉に、彗は溜息をついた
「言い方が悪いね。彗、オレだけのモノになってよ。他の男の話なんか聞きたくない、オレの傍にずっと居て」
「エンヴィー…それって」
「続きが聞きたいなら、オレと一緒に来てよ」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ彗の手を取る
「……そんな事言われたら…振り払えないじゃない…」
「交渉成立…って訳で」
「えっ?ちょ…エンヴィー!?」
「お姫様奪還成功…っと♪」
あろう事か、肩に彗を担いだエンヴィーはそのまま司令室の窓から飛び出して行った
後に残されたのは
「エンヴィーっ!降ろしてー!!」
という彗の叫び声と
どうしたらいいか解らず、ただ戸惑うばかりの一同であった……
後に
大総統経由で彗の退役証明と、彗とエンヴィーの幸せそうな写真が彼等に手渡されたのだが、
何故大総統経由なのか…という疑問が解答に導かれるのは
まだまだ
先の話である
END