†夢見†
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夢を見てた
ただ
あの人の傍にいれれば
それでいいと…
ただ
それだけの
小さな夢
「おはようございます!」
いつものように出勤して挨拶
「…ぁ……」
ふと目にした姿に声が詰まる
「おはようございます…大佐」
「…あぁ、おはよう。鏡花少尉」
小さく横目でこちらを確認し、そしてすぐに書類へと目を戻す
「あの…まだ、大佐お一人ですか…?」
「見て解らないか…?」
「あ…すいません…」
その一言に気持ちが重くなる
いたたまれなくなり
溜息と共に自分の机に座り、頭を抱えた
私はあの人が好きなのだ
今更確認しなくても自分の気持ちなのだから解る
しかし
あのプレイボーイはどうにもこうにも私にだけ冷たい
女と見たなら甘い言葉の一つでもかけてくるような人が
何故か私にだけ…
「おはよう、鏡花」
「ぁ…おはようございます、リザ中尉」
「どうしたの?あまり顔色が良く無いみたいだけど…」
「いえ、ちょっと最近寝不足で…あはは…」
軽く笑って誤魔化す
嫌われてるんじゃないかと思うたび眠れなくなる
夢の中でさえも冷たいあの人に恐怖してしまう
夢にさえも逃げれなくて
いっそ明日なんてこなければ良いと…
「鏡花少尉、体調が優れないなら帰りたまえ。途中で倒れられても困る」
「大佐、そんな良い方…」
リザ中尉がそう大佐を咎めても、顔色一つ変えない
あぁ
やっぱり
私は嫌われてるんだ
好きになんてなってもらえない
解ってた
でも
傍にいたかった
「大佐…」
顔をあげた大佐の顔が何を見たのか歪む
頬を生暖かい雫が伝った
「そんなに…私がお嫌いですか…?そんなに私はっ……失礼しますっ!」
声にならなくなって、思わず部屋を飛び出した
どこに向かっているのかも解らなくて
とにかく
誰もいないところに行きたくて
無我夢中で走った
気がつくと
倉庫の立ち並ぶところまで来ていた
備品なんかが置いてある場所だけに人気はない
倉庫と倉庫の間に座り込み、声をあげて泣いた
咽がつまるような
胸がつまるような
正体の解らないモヤモヤを取り払いたくて
ただ
泣いた
ジャリ…―
ひとしきり泣いたところで、誰かの靴音が聞こえた
少し出来た影に顔をあげると、そこにはあの人の姿
「…たぃ…さ…」
泣いていたせいで声が上手くでない
「探したぞ」
「…すいません。…すぐ…戻ります」
「すまない」
足を進めて耳朶に滑り込んだ声
「…ぇ…?」
「君がそんなに思いつめていたとは思わなくて…あ、いや…これではただの言い訳だな…」
口元を手で押え、大佐は小さく呟く
「あの…?」
「あぁ…すまない。私は別に君を嫌っていたわけではないんだ…」
「え…?」
嫌われて…ない…?
「むしろ君を…」
「私を…?」
また言葉を濁して大佐は視線を逸らす
「……あの、さっきの事は忘れてください…ちょっと、疲れてたんで、あんな事…」
「いや、君のせいじゃない。あれは私が悪いんだ」
「だから…―」
「好き…なんだ…」
セリフを奪われ
一瞬思考が停止した
「こう…本気になった相手に軽口が出てこなくて…つい、冷たい態度を取りがちになっていた…」
「…大佐…?」
「鏡花、私は君が好きだ」
少し頬を染めた大佐の一言に
枯れたと思っていた涙がまたあふれて
でもそれは
さっきみたいな苦しい為に流れる涙じゃなくて
嬉しくて
嬉しくて
嬉しくて仕方ない
夢見る事しか出来なかった事への
嬉し涙
END