†嫉妬†
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そいつに会ったのは
月が綺麗な夜だった
そいつは
驚いたような顔をして
オレを見つめた
「‥…」
「…ここ‥私の家なんだけど…?」
「みたいだね」
「不法進入よ」
「屋根の上が?」
オレは思わず笑っていた
そいつは眉根を寄せて首をかしげた
ベランダからこちらを見上げて
クスリと笑う
「中でお茶でもどう‥?今紅茶を飲もうと思ってた所なの」
「いいねぇ‥」
口元だけに笑みを留めてソイツの隣に降り立つ
「誘うからには、美味しいんだろ?その紅茶」
屋根の上からトンと降り立ち
誰に促されるでもなく室内に足を踏み入れる
「アンタ、名前は?」
「イオ よ」
「そ、オレはエンヴィー」
簡単な自己紹介をしてオレはソファーに座る
何の気まぐれだったんだろうか…?
「はい、どうぞ」
淡い色をした液体が目の前に差し出されたのは数分後
上品な香りと共に湯気が立ち上る
「私のオリジナルブレンドなの」
そう言ってイオはオレの横に座った
少し寂しげに
その紅茶を飲んで
虚ろともとれる視線の先に
一枚の写真を見つける
「あー…そういう事」
口元をニヤリとさせてオレは笑った
「エンヴィー…?」
「…恋人……だろ?」
「っ…」
イオの顔が歪む
見なくても解る
別れたんだろ…?
「…やっぱり・・恋人には見れないんだって…」
そう呟いて
イオは全てのいきさつを話した
オレはどうでもよさ気に聞いていた
いや
どうでもいいんじゃなくて
退屈で
でも
こういうのも
悪くないとは思う
「…あ、ごめんね。エンヴィー…こんな話して…」
中身がなくなって冷え切ったカップをテーブルにおいて
イオは儚げに微笑んだ
オレは何だか無性に腹が立って
なんでか笑えなくて
イオの肩を掴んでソファーに押し付けた
「エンヴィー…?・・痛いっ…」
「何でアンタは笑ってんのさ…?」
「え…?」
イオは困ったような驚いたような顔をしてオレを見返した
「泣きたいんじゃないの…?」
「…泣かないって決めたの…・・泣いたら、あの人を好きになった事後悔する事になると思ったから…」
だから・・ね…?
と言ってまたイオは儚げに微笑んだ
ヤメロヨ
ナンダヨソレ…
「エンヴ……」
言いかけた口をオレの口で塞いで
言葉をつむげないようにした
痛いよ
アンタ
今痛すぎるよ
「……エン・・ヴィー…?」
「オレにしとけよ…?」
何でこんな事言ってるのかさえ解らない
「エンヴィー…?」
そんな困った顔して見ないでよ
「…なんちゃってね……また来るよ…」
「エンっ…-」
それ以上は聞かなかった
もう一度唇を塞いで
笑う
その笑みがどんなものだったのか
鏡が無いから解らないし
知ろうとも思わなかった
でも
悪くは無いと思った
「ご機嫌ねエンヴィー」
「まぁね♪」
「エンヴィー…ご機嫌~」
ラストのおばはんもグラトニーも知らない
おいしい紅茶と
イオの笑顔
今のオレにはそれがあればいい
鋼のおチビさんを追いかけたり
あの人の命令に従うより
おもしろい事を見つけたから
ほら
今日もまた
紅茶を入れて待ってるんだろ?
他の男なんて忘れて
オレだけ見ててよ
ホントはアンタが一人になるのをずっと待ってたんだからさ
「いらっしゃい、エンヴィー」
「なぁ、イオ…オレってさぁ…嫉妬深いんだよ?」
だからさ
ずっと
オレだけ見ててよ…?
END