†放置†
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いいかげん
こっちを
向いてくれ
頼むから
他の男に
笑いかけないでくれ
いい加減
私を
半端に
放置するのは
やめてくれ
雨宮…
「はーい!お茶入りましたよー!」
そう言いながら雨宮はお盆片手に執務室を歩いていた
さながらウエィトレスのような手際の良さで
それぞれの机にマグカップを乗せていく
「今日はレモンティーにしてみましたvvコーヒーばかりじゃ胃があれますしね」
そう言いつつ、ロイの机に置かれたのはコーヒー
どう見ても黒い
他の奴には赤茶色の液体が入っている
「みなさん紅茶いけましたよね?」
ロイの殺気立つような雰囲気を無視して雨宮は言った
「僕は大丈夫ですよ」
「俺も」
「私もです」
「大丈夫よ。ありがとう」
フュリー
ブレダ
ファルマン
ホークアイ
の順に返事を貰い
雨宮は嬉しそうにお盆を抱えた
「この所、荷物の整理とかで皆さんお疲れだったから、コーヒーはキツイかなって」
「ありがとうございますvv」
フュリーが笑顔で言った
それにつられてか雨宮は再度微笑む
「そういえば…まだジャンはヘコんでるんですか?」
ホークアイに訪ねて溜息をつく
先日
ロイに半ば強制的にさせたれた
アームストロング少佐の妹とのお見合いで
見事
振られてしまい
ジャン…もといハボックは激しく家で落ち込んでいるらしい
「雨宮少尉、ど―」
「大佐のせいですよ!?」
かき消すようなセリフ
「私、気になるんでちょっと様子見てきます!あ、今ならカリンのトコのパンが焼き立てかも…」
「少尉!!」
扉を開けて今にも駆け出しかけていた雨宮を
ロイの鋭い一喝が縫いとめた
周囲の者が何事かと眉をひそめる中
一人ホークアイが涼しげな顔をしている
否
振り返った雨宮も涼しげな表情で
引き攣った笑いを浮かべるロイを見ている
「何です大佐?言っときますけど、仕事中にどっか行く事を大佐に責められる筋合いはありませんからね!」
まくし立ててから一睨み
「大体っ!!ロイが遊び半分で無理矢理お見合いなんかさせるからジャンが傷つくんじゃない!!ロイのバカ!!」
それだけ叫んで雨宮は部屋を飛び出す
そして
無様に何かと正面衝突した
「いったぁ~…」
「おい?大丈夫か…?」
「ジャン!!」
声の主は話題になっていたジャン・ハボック少尉
「もういいの?」
「いつまでも休んでる訳にはいかないっしょ。それより鼻赤いぞ?」
「だってぇ~」
等といいながら中々いい雰囲気になっていく雨宮とハボックを無意識に睨み付けるロイ
「ま、いいや。お茶に行こう」
「え?今休憩?」
「違うけどいいの。どうせ家に篭っててロクなもん食べてなかったでしょ?顔色悪い」
言って半ば強制的にハボックを連れて行ってしまう雨宮
唖然としながらロイを横目で見た一同は
置いてきぼりを食らった子犬のような顔をして扉を見つめているロイを発見して石化した
「ハボック少尉とは幼馴染みらしいですからね」
優雅に紅茶を口にしたホークアイがロイにそう告げた
「なんだと?」
「ご存じなかったんですか?雨宮少尉とハボック少尉は家族ぐるみでの付き合いがあるとか…」
「だからといってっ…」
そこまで言ってロイは自分が部下たちの前で醜態を晒している事に気づいた
「男の嫉妬はみっともないですよ大佐」
ホークアイがロイの方をちらりとも見ずに言う
「早急にお帰りくださいね。まだ色々片付けていただかねばなりませんから」
「解っている」
それだけ言ってロイは部屋を飛び出した
「まったく…」
「困った上司」
「ですね」
「はぁ…」
残された部下たちが小さく溜息をついたのはいうまでも無い
「少尉!!」
息を切らしながら
中庭に2人の姿を見つけて叫ぶ
「じゃ、俺行くわ」
くわえ煙草と紙袋片手ハボックは立ちあがった
「うん。夕飯作ってあげるから家開けといてね」
「へいへい」
背を向けたままヒラヒラと手を振り
目前のロイの横を過ぎる際に一言
「置いてけぼりくらった子犬みたいッスよ」
「なっ…」
慌てて振り返ったロイにニヤニヤとした笑いを浮かべながらハボックは言う
「いくら彼女にフラレたからって、雨宮には手だしませんよ。大事な妹みたいなもんッスから」
暫く唸るように黙り込んでいたロイは
当初の目的を思い出して向き直る
「…雨宮・・」
言いながら座っている雨宮に
倒れ込むようにして抱きつくロイ
「え…ロイ…?どうしたの…?」
「すまない」
「何が…?」
「君を怒らせた…」
「よろしい」
少しだけ笑ってロイの髪を指先に絡ませる
「私を…」
「うん?」
「あまりほっておかないでくれ」
「カワイイvv」
そう言ってロイを抱き返す
「あのね、ロイにはこうやって直に気持ちを伝えれるでしょ?でもね、他の人に抱きついたりするわけいかないでしょ?」
「それは困る」
顔をあげたロイが真剣に言った
「だからね、積極的に自分が前にでなきゃ」
「それでも―」
「ロイには私なりに好きって事伝えてるつもりだから」
笑って
キスをする
「あのコーヒーは…?」
思い出したようにロイが呟く
「ロイ、紅茶嫌いだったでしょ?カフェオレにしようかと思ったんだけど、こないだ嫌そうな顔してたし…ロイの趣向に合わせたつもりなんだけど…」
「………」
「……ロイ?」
石化してしまったロイに首をかしげる雨宮
「は・…そういう事か」
何がおかしいのかロイは一人笑い出した
中々収まりそうにない
「どうしたの…?」
「いや・・いらぬ心配をしただけだ」
「変なの」
首を傾げた雨宮にロイは唇を重ねる
「そうさ…君に出会ってから私は変なんだよ」
そう言ってゆっくりと芝生の上に押し倒し
もう一度強く抱きしめた
「だから…これ以上変にならないよう…いつも傍にいてくれ…」
「もちろん」
あまり
ほおっておかないでくれ
君の意思なんて関係無しに
閉じ込めてしまいたくなる
他に理由なんていらない
君が欲しい
そこにいて欲しい
他の男に構わないで欲しい
私だけの雨宮であってほしい
それは
ワガママだろうか
そうだとしても
君を
離したくないんだ
…雨宮・・―
END
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あとがきより注釈
コミックスおまけの「たたかう少尉さん」の背景を採用。