†欠損†
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愛してほしい
その腕で抱きしめて欲しい
今更こんな事言えないし
今更
愛してるだなんて言えない
アンタは私の気持ちに気付いてる?
ねぇ大佐
私はアンタの背中ばかり追いかけてるよ
ねぇ大佐
私に足りないのは何?
ねぇロイ
一方的でも人を愛することはできるんだよ?
ぱんっ!
久しぶりに行く事になった東方司令部
なんだかよく解らないが
私の手がいると
東方司令部司令官であるロイ・マスタング大佐
『直々』の
お呼び出しだった
因みに奴とは入軍前からの付き合いで
もう一つ言えば同時期に国家錬金術師の資格を取った
でも
階級は一つ下の中佐
でもって
さっきの音は
私を迎えに直々に出てきたロイが
突然女に頬を殴られた所
とりあえず
何よりも先に
腹を抱えて笑ってやった
女は私を見て
『新しい女』に手を出したと勘違いしたらしい
そして愛想が尽きたと宣言した後に一言
「ちょっと優しくされたら落ちると思わないでちょうだい!童顔男!」
私はとりあえずもう一度腹を抱えて笑った
そしてその女は私を睨むとまた一言
「苦労するといいわ!」
アンタは苦労したんだな
と思ったがあえてそれを無視して、泣きながら走り去るその姿を見つめた
「…遠路はるばるご苦労だったな。にょにょ・マルス中佐…」
僕たれた頬を押さえつつ奴は言った
私はそれを敬礼で返し、一言社交辞令を述べた
「お気遣い感謝致します。ロイ・マスタング大佐」
一応上司だし
奴の後ろで笑いをこらえて煙草を咥えてる部下も居る訳だし
「…大佐・・一言よろしいですか…?」
それでも一言言いたくて
敬礼を解いてから聞いてみる
「何かね?」
「アンタ馬鹿でしょ」
怪訝な顔をした奴とは正反対に
後ろの部下は煙草が落ちるのも構わずに笑っていた
自己紹介がまだだった
私の名は『にょにょ・マルス』
奴とは同期で29歳
二つ名は『軍神』
何故そんな名がついたかというと
私の苗字『Mars』のせい。
これを辞書でひくと『軍神』と出る為だ
なんともゴロが悪い
大総統もそうとう酔狂な人だと思った
東方司令部に帰還しても、ロイは機嫌が悪かった
そして2人だけになった執務室で小言を聞く羽目になる
「君がそんな格好をしているからこんな目にあったんだぞ」
「知るか。日頃の行いが悪いからだろ?」
言って自分の格好を確認してみる
単んにミニスカで、首元を崩しているだけだ
制服は着ている
「で、アンタがフラレた事に関してはどうでもいいんだけど、私に何をしろっていうのさ?ロイ」
奴は『どうでもいい』と言った私にまた怪訝そうな顔をした
そして渋々と書類を人束差し出す
ホントは
すごく
気になってる…
「何それ?」
「読めば解る。説明するのが面倒だ」
「うわっ…最悪」
と言いながらも書類を受け取り、机の縁に座る
「…武器・・弾薬…物資…?」
「おかしいと思わないか?ある時期を境に少しづつ東方司令部への供給が減ってる」
「ふぅん…ヒューズの奴が生きてたら奴の方が良く解ったんだろうけど・・」
ヒューズの死はまだ記憶に新しい
背後の気配が少しだけ変わった
「で…にょにょ」
「およ?」
ぐらりと視界が揺れ
その原因が襟首を掴んで引き倒されたのだと気付くのは
逆さに奴の顔を見たとき
「ぃったぁ…何すっ」
「今日の宿は決まってるのか?」
タチの悪い笑みで
奴がこちらを見ていた…
「滞在中は好きに使いたまえ」
結局攻防の末、私は奴の家に転がり込む事になった
正直不服
だって・・
「……女泊めたでしょ…」
化粧や香水の臭いがまだ残っている
少しは気を使えよ
と言ってやろうとして振り返るとまたタチの悪い笑みにぶつかった
「嫌なら私の部屋で一緒に寝るか?」
「もっと嫌」
即答で返して部屋に荷物をほり投げる
「さて、転がり込んだ訳だし、晩飯くらいつくるよ。どうせいつもまともな食事してないんだろ?」
ビシッろ右手で指差して問い詰めると、案外素直に頷いた
そして
何故だかその手を掴んで奴は驚いたような顔をする
「何?」
「まだ持っていたのか?」
「貰いものだし…悪い?」
「いや…」
そう言って勝手知ったる何とやらのキッチンに足を進めた
右手にあるのは指輪
少し幅の広いソレは、入軍して間も無い私の誕生日に
ロイとヒューズが薄給を合わせて買ってくれたシルバーリング
とにかく高かったらしい
そこに私が使う練成陣を掘り込んだものだから
二人は顔を青くさせていた
今思い出しても笑える
でも、私たちが繋がっていた証だった
「ねぇ…ロイ…」
「なんだにょにょ」
「…アンタの冷蔵庫どうなってんの…?」
「見たままだ」
ごった返したそこには、もはやどれが食材であるかなど区別がつかない
「…片付けてやる」
そう呟いた私に
何やら勝ち誇ったような笑いが聞こえてきたのは
きっと
幻聴ではないだろう