†指輪†
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昔の話だけど
私はヒューズと付き合ってた事があって
グレイシアとは親友で
ヒューズとは幼馴染みで
私は軍属で
今は
ロイの彼女
「…ごめんね…葬儀に出なくて・・」
煙草片手に墓標にもたれて座り込む
『気にすんな』
とアイツの声が聞こえた気がした
「覚えてるマース?まだ・・私たちが付き合ってた頃の話・・」
私はまだ
覚えてるよ?
「マース!お昼食べよう♪」
私はいつものように手作りの弁当を持参してマースのいる部屋に向かった
この頃はお互いまだ階級も低くて
でも
ロイと3人で過ごしてる日々がとても楽しくて
部署は違えど
私はマースを愛していたし
マースも私を愛してくれてた
「千麟・・オマエなぁ…ここではファーストネームで呼ぶなって言ってんだろ…」
少し照れた顔が嬉しくて私はそれを辞めなかった
「クセだから仕方ないじゃん」
軽く言って机にお弁当を広げた
「ロイは?」
「私ならここだ」
ひょい、と弁当のウィンナーを摘み上げる手が見えたかと思うと、それはロイの口に放り込まれた
「あぁっ!つまみ食い厳禁!!」
叫ぶが時既に遅し
「つれないね。ヒューズなら許される行為も、私には適用されないものと見える」
指差されて振り返ると
既にマースは一人昼食を開始していた
「ふん!ふふぇう!ふぇう!(うん!いける!いける!)」
さながらハムスターのように膨らませた顔で喋るものだから、
私達は思わず噴き出してしまう
「いゃあ~・・千麟の手料理をロイの野郎に食われる訳にはいかねーからなぁ」
「どうせ夕飯も千麟の手料理なのだから、少しくらい私に譲れ」
などと言って二人は争うように弁当を食べ出す
私は
それが微笑ましくて
そんな光景を見るのが好きだった
そんないつもの風景が私は何よりも大切で
でも
グレイシアがマースを好きになったと聞いて
私はその生活にピリオドを打つことにした
正確には
ある二つの出来事から・・
一つは
ロイからの告白・・
「・・ごめん…私、マースが好きだから・・」
雨の降る日
ロイらしい、洒落たカフェで私はそう告げた
「まぁ、そういうのは解ってたさ」
「ロイを振る私って、結構根性あるかも」
互いに笑って
「ヒューズに飽きたら私の元へ来い」
「振られたら?」
「私が慰めてやる」
また笑った
「あ、ごめん。マースと約束してるの」
そう言って席を立って
私はカフェを後にした
私の足は揚々としていて
いつもの待ち合わせ場所へと向かった
そこで私は
恋人の様に抱き合う
グレイシアとマースの姿を見付けた
思わず傘を取り落として
先に私に気付いたマースが驚愕する
「千麟っ…!?」
悲鳴を上げたのはグレイシア
「いつからそこに・・?」
「さっき」
答えながら私は左手の薬指にはめていた指輪を抜き取る
別に
将来の約束をしていた訳でもない
幼馴染みの馴れ合いだったのかもしれない
「千麟…あのなっ・・」
「マース」
名前を呼んでその先は言わせないようにする
何も言わないで
「・・私、ロイと付き合う事にしたの…」
嘘
「だから・・それを言おうと思って…」
さっきロイは振ったところ
「千麟・・」
マースが私の名前を呼んだ
「この指輪・・返そうと思ったんだけど…壊した方がいいね」
言って
かじった程度の錬金術で指輪を砕く
「…千麟・・」
今更呼ばないで
「マースっ…グレイシアっ…幸せになって・・でないと…承知しない」
出来るだけ笑顔で言ってやった
傘を拾って
歩き出す
行き先は
ロイの家
ムシのいい女は・・嫌いかな?
私は
―嫌い―
「千麟っ!?どうした…?とにかく中に・・」
突然訪ねていった私をロイは快く家に入れてくれた
傘はどこかで無くしてしまった
タオルに包んで、ソファに座らせてくれたロイは黙って私を見ている
「・・ムシのいい女は嫌い…?」
突然聞かれてロイは答えきれないでいる
「・・私は…嫌い・・」
「私のモノになるなら・・構わないと思っている」
感の良いロイはそれだけで全部を悟ってくれたようで
食器棚から銀のスプーンを取り出すと、練成陣を書いて指輪を練成した
「私が忘れさせてやる」
今までマースの指輪をはめていた場所にその指輪を差入れて彼は言った