murderous love
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そっと胸を押して、アリシアは離れた
「ロイ‥お願い…私を殺して」
「何をっ…」
「逃げる事ができるなら、とうの昔に逃げてた…自分の罪を自分が許せない」
そう言った彼女の瞳は
あの日
兄の仇を討つと言った時の瞳と同じだった
「どうして…軍人を‥?」
「…知ってるでしょ‥?上層部がもみ消した事件‥‥死んで当然よ‥さぁ、早く私を殺して」
急かす彼女は、無理矢理発火布を構えさす
「もう一つ」
「何?」
「どうして‥―」
「兄さんを殺したのか?」
先んじてセリフを奪われる
.
「できるなら‥死んでほしく無かった…」
「なら何故っ‥」
「…自殺したの‥兄さんが自分で自分の首を切ったその後で、私が傷を付けたの…」
どうしてそんなに淡々と語るのか
どうしてそんなに笑っていられるのか
答えらしい物は何一つ見当たらない
ただ解るのは
彼女がもう戻れない場所にいるという事だけ
「アリシア‥」
「お願い‥ロイ…でなきゃ‥」
彼女の容貌が豹変する
「でなきゃ私が貴方を殺すわ」
断言して彼女はこちらと距離を取る
「どうせもう‥戻れない」
.
―もう戻れない―
頭の隅では理解していて
心のどこかで拒絶している
「っ…アリシアっ‥!!」
ただ
その手を伸ばしていた
気付けば
抱きしめていた
「俺に君を焼き殺すなんて事、出来る訳無いだろう…?」
解っていてそれを言う彼女は酷でしかなくて
「頼むっ…アリシアっ‥逃げてくれ…」
「‥ロイ…」
ふ、と和らいだ声に警戒心を解く
「…ダメね‥」
腹部にはしる鈍痛
.
「いかなる時も気を抜くべからず」
彼女が隠し持っていた短刀が脇腹を貫いたのだと理解するのに時間はいらなかった
「入軍してすぐに習わなかった?」
悪戯っぽく微笑む姿さえ何故美しく見える?
「ロイ‥愛してるなら…殺して…?」
触れるか否かの距離で紡がれた言葉は、その意味とは裏腹に甘い
「愛してるわ」
触れた唇の温もりと
彼女が拾い上げた仮面と
妖しく弧を描いた唇と
紅く燃え上がった焔と
それから
仮面の奥に隠れた寂しげな瞳が
こべりついて離れなかった
黒々とした煙が空へと昇る
赤々と光る焔が酷く滑稽だった
何が現実で夢なのか
理解出来ない
ただ
解る事
犯罪を嫌う彼女が罪を犯してまで裁いた軍人達は
各地の紛争で数々の強盗・暴行事件を起こしていて
それを上層部が揉み消していた事
そして
俺を愛していたという事
「…‥大佐‥」
背中で声がした
振り向こうとしたが、思うように身体が動かない
ただ、言葉が口をついた
「…雨が‥…雨が降ればいいのにな‥」
燃えていたのは誰だったのだろう
零れていったのは何だっただろう
もはや
その答えも解らない
ただ
ただ
この手には虚しさだけが重たくのしかかるだけだった
END
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よくもこんな話をマガで流してたな…と思ったけども履歴は履歴なので残します…。
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