murderous love
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セントラル指令部の会議室
一様に眉間に皺を寄せてもっともらしい顔をしたお偉いさん方の顔を横目で見つつ、ロイももっともらしく敬礼を返した
『この事件を片付けるまで昇進は無いと思え』
上司にたたき付けられた言葉はやっかみと失敗への希望がふんだんに盛り込まれていて
わざわざそれだけの為に会議室に呼び出されたロイは辟易して溜め息をついた
そう、国家資格を取ったばかりの若い少佐はその有能さから疎まれていた
「まったく‥簡単に言ってくれるな…」
自分に与えられた執務室の扉を閉めて、今日何度目かの溜め息をついた
「辛気臭い」
突然の声に顔をあげれば、馴染みの顔が革張りのソファからこちらを見ていた
「アリシア…どうしたんだ‥?」
今度は安堵の溜め息をつきながら、ロイはソファのアリシアに近づく
が
いつもと違うソレに足を止める
「‥今朝の死体…兄さんのだった‥」
「っ‥!?」
思わず息が詰まる
その礼服の意味を知って動けなくなる
ここ最近、奇怪な事件が横行していた
軍属の男を狙った殺人事件
しかもそのやり口は酷く、被害者を必ず切り刻み、出血死にさせるという事
そして
殺人の事後報告
どこで
どんな階級の男を
どんな風に殺したのか‥
男の身体には必ず次回の殺人予告の日付が刻まれていて
予告されているにも関わらず
事件は防ぐ事ができないのだ
ただ一つ解るのは
その殺人鬼は女で
仮面娼婦に紛れているという事
仮面娼婦とは仮面を付けたセントラルでも有名な高級娼婦の事だった
「そう…か‥」
搾り出した声は慰めるにしては足りなすぎた
「慰めの言葉はいらないから」
そう言う彼女は
どこか儚げで
伏せられた双眸から零れるものがないように、強く自分の腕を掴むのも彼女の癖だ
「アリシア」
「何‥?」
こちらに足を向けた彼女の手を引いて
「ちょっ…」
自らの胸におしいだく
「俺の前くらいは泣いてくれ…」
彼女の父が悲しんだりしないから
母が過剰に悲しんで
だから
間にいる彼女は泣けなくて
「声を上げて泣いてくれ…その方が君らしい」
身動ぎするアリシアを強く胸に抱いて
逃さないように
俺のせいだと彼女が言えるように
恋人同士なら
いっそ身体で慰めあえただろうに
嗚咽を漏らし始めたアリシアの背中を撫でながらただそう思った
翌日アリシアは前日に何もなかったような顔をして執務室を訪ねてきて
上層部に掛け合い自分も調査に加わると言った
誰かの助けは欲しかったし、何よりも数少ない気を許せる相手との時間というのは、日々様々な視線に晒される自分にとっての救いの時間でもあった
一方
彼女は
『兄の仇を討つ』
それだけに没頭していた
事件の調査資料や、類似事件の精査は言うに及ばず
時間を見つけては、調査にあたった人間に話を聞いて回った
資料室で黙々と資料に目を通していたアリシアがふいに顔をあげた
「ロイ、今日の夜‥もちろん空けてるわよね?」
「あぁ‥」
「殺人予告が2日も続けて来るなんて‥」
悔しそうにアリシアは爪を噛む
アリシアの兄が殺された後の予告は昨日
例によって防ぐこともできず、その遺体には今日の日付が刻まれていた
こんな風に殺人予告が続くなんていうのは初めてで
それだけ軍がなめられているというのは明白だった
夜
哨戒に当たるのも無意味だと取れる騒がしさ
仮面娼婦達の動向を伺いながら、アリシアの肩を抱き周囲に意識を配る
「…噂に違わず、女性のエスコートが上手みたいね」
アリシアは軽口を叩いてこちらを見上げた
「でも‥いつまでこうしてるつもり?」
「サキュバスの姿を見るまで」
少し茶化して言うとアリシアは深い溜息をつく
「ロイ、私は真剣なの」
「解ってる。だが、今の君は張り詰めた風船の様だ。少し心の休息を取った方がいい」
彼女は怪訝そうに眉を潜め
もう一度溜息を付いた