†The Origin†
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その子供達に逆らって歩いてくる人影
子供達のいたずらをかわしながらゆっくりとこちらに向かってくる
炎のような紅の髪に
それを溶かしたようなルビーの瞳
女の目から見ても綺麗だと言えるような整った顔立ち
―ガイル・スタッド―
「おはよう、ガイル」
「おはよう、リョウ」
挨拶を交わしながら立ちあがった私の前で足を止めるガイル
何故かその顔色が優れない
「どうしたの?…顔色が悪いよ・・?なにかあったの?」
「あぁ・・義父さんが呼んでる」
「父さんが…?」
薄々何かを感じながら、私は首をかしげた
「俺とレックスも一緒に研究所へ来いって…」
「…研究が完成したの…?」
「かもしれない・・」
ガイルが少し不安げに答えた
「レックスは起きた?」
「…さっき起こしたけど、多分寝てるな」
ガイルが苦笑して言った
レックスはかなり寝起きが悪い
目覚ましを最大音量で6個かけても起きないくらいの筋金入りだ
「起こしに行こうか」
お互いに苦笑して、元来た道を戻った
「…リョウ・・俺が…絶対お前の事護るから・・義父さんが何をしたとしても…」
「ありがとう…でも、危ない事はしないで…」
私達は父が狂気に侵されてるのを知っていた
それでも家を出なかったのは
優しかった頃の父を知っていたから…
父を見捨てたくなかった
でもそれは
ただの自己満足だったかもしれない
「…父さん…?」
研究室…といってもただの小屋に私達は足を踏み入れた
「いないの…?」
呼んでみても返事が無いので私達はゆっくりと足を進める
レックスは未だ眠たそうにしていた
いつもは点いている電球も今はない
不思議な寒気に駆られながら
感覚だけで部屋の中央へと歩く
「義父さん…?」
ガイルがその言葉を口にした瞬間だった
硬い鉄の擦れ合う音がしたかと思うと、私達を囲むように鉄の檻が落ちてくる
「っ!?なんだこりゃ!?」
この騒ぎで目を覚ましたのかレックスが叫ぶ
そして…
「脅える事は無い!お前達は錬金術において完璧な存在となるのだ!」
さながら宗教団体の教主のように
神の教えを語るかのように
歓喜に満ちた父の声が響いた
「親父!!何いってんだっ!?出せよ!!」
レックスが鉄格子を掴む
父の姿は未だ見えない
「私の研究が遂に完成する!お前達という協力者を得てな…!!」
「協力者っ…!?まさかっ…人体実験なんて錬金術の理念に反してるっ!!ここから出してっ!!」
叫んで鉄格子を掴むと、闇から現れた手がその手にゆっくりと重なった
「大丈夫だ…間違い無くお前達は完全なものとなる…安心しなさい」
その狂気とは裏腹に言葉は酷く優しい
かえってそれが怖い
「リョウっ…」
狼狽した私をガイルが抱き寄せ
レックスが私に代わって父の前に立った
「父さん!実験なら俺達が付き合う!だからせめてリョウは外にっ…!!」
叫んだレックスに怪訝そうな父の声が聞こえた
「せめて…?何を言う…私の大切な子供達に苦労をさせたくないというだけではないか…」
「苦労…?」
「あぁ…レックスは失敗を気にしているのだな?大丈夫だ。今それを証明してやる」
檻から離れた手が地面に触れる
ここでやっと気付いた
床の前面に練成陣が描かれていた事に…
「っ…!?やめっ…―」
誰の声ともつかぬ声があがった
瞬間的に意識が暗闇へ飛ぶ
覚えているのはここまで
意識を失っていたのがどれくらいなのか解らない
私が次に目覚めたのは
ガイルに揺さぶられた時だった…