†Foll dwon me†
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その日の朝は雨が降っていて
広い家で
独り目覚める
ゆっくりと起き上がっていつものように支度した
焼き上がったトーストを齧りながら卓上カレンダーを見つめる…
「そろそろ…帰ってきてよ」
誰にとも無く呟いた時
玄関の
呼び鈴がなった
扉を開けると
悲痛そうなロイの顔
「かぇっ…て…たんだ」
言葉が上手く紡げない
早く何か言ってほしい
ねぇ
何か言ってよ
雨水を弾き返すような素早い敬礼
黒い喪章は誰の為なの?
ねぇ
どうして何も言ってくれないの?
「…連れって…」
口をついたのは
解ってしまった自分の
精一杯の言葉
「彼を返してっ!!レックスをっ…ガイルを返してよぉっ!!」
ヒステリックに喚き散らした私をロイがなだめようとする
叫んだって仕方ない
生き返らない
―解ってる―
「ガイルっ…私一度も言ってない…あぃし…るって…ぃ…どもっ……っ!?」
下腹部に走る鈍痛
足に力が入らなくて
汗が急に滲み出て
息が詰まる
「リョウ!?」
「だ…め…痛い…」
呻くだけが精一杯…
「…ぃるの…」
「何て言った!?」
「赤ちゃ…が…ぃるの…お願っ…ガイルっ……連…てかな…でっ…」
そこで
意識が途切れた
「リョウ…気がついたか…?」
白い壁
白い天井
黒い髪
うっすらと目を開けた私にロイが声をかけた
「軍属病院だ」
どこかと訊くより先に答えてくれる
「ね…ロイっ…」
言いかけた時、ノックと共に女医らしき人が入ってくる
「気がついたのね」
「あの…」
「…ごめんなさい…母体の方が優先だったから…」
辿るように呟く
視界が暗くなった気がした
否
実際は何も変わっていない
「連れて…たの…?ガイルっ…独りにしな…でって…ったじゃなぃっ…!!」
涙ガ止マラナイ
止まらない
いつまで泣いていただろう
ずっと
泣いていた気がする
「リョウ…最後だぞ…?」
国葬になったガイルの葬儀
私が病院にいたせいで
ガイルの葬儀はズレていた
レックスや死んだ子供の葬儀は無い
レックスは
遺体が無いから行方不明者扱い
子供は
生まれなかったから存在しない事になった
だから
ちゃんと葬儀があるのは
別れを告げるのは
彼だけだ
彼の棺が
ゆっくりと穴に置かれる
「…ぃや…」
「リョウ…?」
「お願いっ…辞めてっ!!」
わけも解らず
ただ
衝動的に
駆け出していた
駆け出した手をロイが掴む
それを振りきって
棺の入った穴に飛び込んだ
「お願っ…埋めな…でっ…彼が…ガイルが消えてしまうっ…」
「リョウ…上がってくるんだ」
「ぃや…っ!!いゃぁっ!!」
癇癪を起こした子供のように叫んで耳を塞ぐ
「リョウ!!」
強く名を呼ばれて
温かい腕に包まれる
「リョウ…辛いのは解るが…私達が騒いでは……ガイルが眠れないだろ…?」
優しく
諭すような声
「ぁ…あぁ…わ…たし…」
いきなり現実に引き戻された意識
「さよならを…言うんだ…」
聞き分けの無い子供をあやすかのように
彼は
私を
なだめる
「さ…ょ…なら」
涙が止まらなくて
上に上がってもロイに背を預けて泣いた