†First murder†
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歩きながらアズサは色々な話しを聞いた
ここが『忍』と呼ばれる隠密行動を生業とした者達の里だという事。
今もそれを生業としているという事。
ハヤテが頭領だという事。
そして
里が消滅しかけている事。
「サイカ、アズサを連れて来た」
無遠慮に上がり込んだ家のある部屋を開けてハヤテは言った
「ご苦労様。大体の話はしてあげたの?」
「あぁ…後は頼む」
それだけ言ってハヤテは部屋を出て行った。
残されたアズサはサイカと呼ばれたその女をただ見つめる。
「初めまして。私はサイカ。ハヤテの姉です。早速だけど、これ着てみてくれないかしら?」
差し出されたのは藤色の着物。
「私のお古で悪いんだけど…」
見慣れない衣装に戸惑いながらも着物を羽織る。
「とても似合ってる!後は髪を結って…妹が出来たみたいで嬉しいわ」
そう言ってサイカはアズサをあちこちといじり、全てが終わる頃には日が暮れていた
その日の夕食の席で、ハクジの家の者とミカサギの家の者とで宴席が組まれ、アズサを一族の輪に受け入れることとなった
酒の注がれた杯を片手にハヤテは隣に座るアズサを見ていぶかしそうに首を傾げる
料理に何一つ手を付けていないからだ
「食えないか?」
「違う…これ……ハシというのだろう…?……使い方が、…その、解らないんだ…」
「あぁ…気付かなくてすまない…」
杯を置き、アズサの手を取り箸の使い方を教える。
中々上達しないが、地道にやっていけばなんとかなりそうな気配を見せたところでアズサが口を開く
「ハヤテ…この里に錬金術を使える奴はいないか…?」
「錬金術…鍛錬術か…?それならケイヤが一番の使い手だ」
「教えを請うても構わないだろうか…?大陸に帰ったら、国家錬金術師の資格試験を受けたいから…」
「…いいだろう」
ハヤテが小さく頷く
イシュヴァールの民は錬金術を厭うていた
アズサが道中錬金術師を見ては嫌そうな顔を浮かべていたのも知っていた
だからこそハヤテは一瞬首肯するのを躊躇ったのだった
「…私は一度死んで・・もう一度生まれた…イシュヴァラの教えは……もう関係無い…」
自嘲めいた笑いにハヤテは顔の筋肉を一つも動かす事無く頷いた
「ケイヤには俺から話しておく。だが、俺の修行が減るわけでは無い。覚えておけ」
「ありがとうハヤテ」
再び杯を取ったハヤテの横顔に礼を言いつつ
アズサはぎこちない箸つきで食事に手を付けた
そうして
月日は流れる
2年
シュヴァール虐殺事件の時
アズサは若干18歳
それから
2年経った
頭領たるハヤテの教えを直に受け
アズサは里でも名の知れた『忍』になった
ケイヤに錬金術の教えを受け
ケイヤをも越える錬金術師になった
そんな
ある夜の事だった…