†First murder†
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初めて人を殺した時の事を覚えてる?
もちろん
覚えている
人を殺す事に抵抗はなかった
それまでにも『コロス』という行為を幾度となく繰り返した
でも
『殺人』というモノを認識したのは
あれが最初だった…
あれが
私の
最初の殺人
「何…ここ…」
少女はうめくように呟いた
東の島国
大陸ではそう呼ばれていたがそれ以外は解っていない
木々に囲まれた中に
ひっそりと木造の建築物が建っていた
「隠れ里っと言ったところだな…ようこそ。我々の里へ。まずは婆様に会ってもらおう」
そう言って少女は促され、一つの建物に案内される
木製の引き戸を開け
ハヤテはこちらに背を向け、床に座した老婆に声をかけようとした
「遅かったねぇ…ハヤテ」
「探すのに手間取った」
「あぁ…知ってるよ…お前もそんなトコに立ってないでこっちへおいで」
「ぁ…の…」
「ツイネ婆だ。夢占に君の事が出て兄者が救いに行った。ツイネ婆は何でも知ってる」
突然の声に少女はビクリと肩を振るわせた
まったく気付かなかった
ハヤテの他にもう一人そこに立っている
「ケイヤ。外に出ていろ。ややこしくなる」
「へーい…」
ハヤテが言ってのけ、ケイヤと呼ばれた男は外へ出て行った
「さて…まずは名前をつけてやらねばね…」
そこでやっと老婆は振り返った
老婆の目は白い布で覆われていた
「私の養子という事で構わないだろう?ハヤテ」
「狛司を名乗らせるか御笠置を名乗らせるかの問題だ」
「だろうよ……お前の名前はアズサ…」
老婆の皺だらけの手が少女の頬に触れる
「性はミカサギ、名はアズサ…お前はもう一度生まれたんだよ」
「アズサ…私の名前…」
少女―アズサが反芻するように呟いた
「私の事はツイネ婆と呼んでくれればいい…あぁ…聞きたいことが沢山あるのだろう?」
「何故…私はここに…?」
「夢占にでたからだとハヤテがいわなんだか?」
「では…何故大陸を越える必要があったのですか…?戦争に巻き込まれて死ぬ人間はこちらでも少なくは無いはずです…」
「俺達はツイネ婆の夢占で全てを決めている。婆様はそちらでいう信託者だ」
隣に立っていたハヤテが静かに言った
「じゃあ…」
「そうだ。理由なんて無い」
冷たく言い放ち、アズサから視線を逸らす
「俺がお前の望むだけの力を与えてやる。お前は、それだけに集中すればいい…」
「……そう…ありがとう…ハヤテ…」
視線を下に落としたままアズサが呟いた
「細かい事は後で話す。付いて来い。里の案内をしてやる」
「ハヤテ」
引き戸に手をかけたハヤテをツイネが止めた
「解ってるね…」
「言われるまでもなく」
視線だけをアズサに巡らせ、外に出て行く
アズサも戸惑いながらそれに続いた
「ケイヤ、サイカはどこにいる?」
外にでて開口一発目
ハヤテは引き戸のすぐ傍に座っていた男にそう言った
「服取りに行ったぜ」
「そうか」
短い会話の後、ハヤテはアズサを振り返って言う
「性はハクジ。名はケイヤ。俺の従兄弟だ」
「ケイヤでいい。ヨロシクな」
差し出された手を握り返すのを、アズサは一瞬躊躇った
握りかけた手をハヤテが遮る
「兄者?」
「アズサは軍属の人間に暴行されている…触れてやるな…」
「…大丈夫…ヨロシク・・ケイヤ」
それでも差し出した手は少し震えていた
「ヨロシク」
触れるだけのような形でケイヤがその手を握り返す
「兄者、どうせ案内してやるならそのままサイカの家に行った方が良くないか?どうせ何着せるかで悩んでるハズだし」
「そうだな…アズサ、行くぞ」
「ちょい待ち」
歩きかけたハヤテの肩をケイヤが掴む。
「名前、聞いてない」
「あ…アズサ…呼び捨てで構わないから…」
「ふーん…ま、夕飯の時に会おうや」
それだけ言い残してケイヤは姿を消した
驚きに目を瞬かせるアズサをよそにハヤテは歩き出す。
アズサは慌ててその後を追った…