†Cloudy sky†
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宿に戻ってベットに転がり、ぼんやりと考える
失う事を知ってる
哀しみも
怒りも
絶望も
虚無も
あの男は知っているのだ
「‥アズサ中佐、今いいかね?」
「…はい」
ノックに気がついて扉を開ければ、グラスとワインを持った奴がまた微妙な顔で立っていた
「付き合ってくれないか」
「どうぞ」
入室を許可すればホッとしたように息をつき、テーブルの上にグラスと瓶を置く
「一人だと、飲む気になれなくてね」
親友が好きだった物なんだ
そう一言呟いてワインオープナーで口を開け、奴はコルクを抜いた
グラスに赤いワインを注いで、こちらにその一つを
「…ご友人に‥」
一言そえて口をつける
赤ワイン独特の渋味と香りが口の中に広がって、喉を通り過ぎた
「‥アズサ…君の師について、聞いても構わないかね?」
暫く違いに無言のままだったが、ふいに奴が口を開く
「聞かせて、楽しい話はないですよ」
「聞きたいんだ。‥君さえよければだがね」
「…師匠の名前は、ハヤテ。‥私をあの地獄から救い…新しく生きる為に必要な事、全てを教えてくれました…人を、愛するという事も‥」
話さなくてもいいのに
聞かなくてもいいのに
この口は
奴の耳は
ハヤテの存在をこの空間に書き込んでいく
「‥貴方を殺す為に彼を殺した今でも‥そうしてまで生きる価値が自分にあるのか解らないくらい、素晴らしい人でした…」
「‥そう…」
小さな同意を漏らし、空のグラスにもう一度ワインを注ぐと、奴はグラスを掲げて呟く
「君の師匠に」
同意を込めてグラスをかかげ、中身を一気に飲み干す
窓の外を見れば、陽が落ちた曇り空が更に黒く染まろうとしていた
空になったグラスに再びワインが注がれる
「二人で飲むと、意外に早いものだな」
瓶を蛍光灯にすかして見れば後一杯ずつくらいの量
それに同意しようとした時、街中に相応しくない爆音が轟く
部屋全体を揺らすような衝撃
慌てて窓を開ければ、セントラルの町並みから不釣り合いに立ち上る黒煙と、人々の戸惑いの声が響く
そして銃器を持った人間が数人ずつの小隊でかけていく姿
それらが着ているローブに刻印された模様を見て気づく
「大佐、宗教テロです」
「そのようだな。行くぞ、アズサ」
「はい」
飲みかけのグラスをテーブルに置いて駆け出す
この時の事件が
今後
予想だにしない事態へ発展するとも思わず
イシュヴァールを
東の里を思いながら
ただ
市民への被害をだしたくないと
それだけを考えていた
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メモ:2011/1/17
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