†Must come again†
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「アズサ、ごめんなさいね…?」
「ぇ…」
どうして
サイカが…?
「私、何も気付いてあげれなかった…」
「サイカっ…私は…」
辿るように言葉が口をつく
「誰かに罵倒して欲しかったっ…首領を殺したと!お前が死ねば良かったってっ!!フヌケになって現実から逃げ出した私を許して欲しくなかったっ…」
無意識にサイカを強く抱きしめた
「サイカ…貴女は何も悪く無い。背負う覚悟を持たずにあの日を迎えた私が悪いんだ…サイカ、身体を大事にして…」
サイカから小さな嗚咽が漏れる
あの日から
サイカが泣いたのを見た事が無い
今
こうして
サイカが涙を流す事が
サイカを生き長らえさせる事に繋がれば良いのにと
サイカを抱きしめながら
願わずにはいられない
いつから私は
誰かを抱きしめられるほど
強くなったのだろう…
以前は
抱きしめられていたのに…
サイカに別れを告げて
ケイヤは
「着いて来い」と
一言こちらに向けて歩き出した
10分ほど歩いている
ケイヤはただ無言だ
何故そう広く無い里の敷地内で
この道だけがこんなに長いのかを知っている
二人が生きて帰らない為
深手を負ってどちらかが倒れて
どちらかがどちらかを連れ帰っても
二人が生きて帰らないように作られた道
この道は
最後の修行を行った場所に続く道
『行きたく無い』と
気持ちのどこかで拒絶しようとする
でも
今ここで目を逸らす事は許されないのだと
先を行くケイヤに置いてかれぬよう足を進める
ここで目を逸らしてはいけない
ここに帰ってきたという事は
『過去と立ち向かう』という事だから…
―・・目を…―
「…嘘・・でしょ…」
―逸らしちゃ―
「ケイヤっ!!どういう事なのっ!?ねぇっ…」
―いけない―
「どうしてハヤテがここにいるのよっ!?」
その場所に辿りついた時
その場所には
漆黒の着物を身に纏った
黒い髪の男が
静かに
立っていた…
「……アズサ…」
「・・よばないで…」
その声で
その唇で
その瞳で
ハヤテの声でっ・・
「……俺はそんなに、ハヤテという男に似ているのか…?」
「え…?」
独白というより苦笑めいて
そいつは小さく呟いた
「・・どういう事…?」
困惑する私を置いて事体は進行する
「俺の名はレンヤ。性はハクジ、字はレンヤ。ハヤテとは俺の双子の兄だ」
「…レンヤ・・?」
「もっとも、奴が死ぬ前日に顔を合わせただけの間柄だがな」
レンヤは嘲笑と苦笑を交えたような表情でこちらに一歩近づいた
自然と身体が一歩下がる
首を傾げてレンヤは数歩こちらに近づいた
こちらも再び下がる
駄目だ
距離が無いと
耐えられない
「お願いっ…それ以上、こないで…」
必死に搾り出した声は情けない程に震えていて
いきなり突き付けられた現実に
思考回路が追いつけずにいる
弟がいるなんて聞いて無い
宴の席でも見かけた事が無い
ましてやそれが
双子だなんて事も…
「・・どこに行っても『ハヤテ』の影は付きまとうのだな…」
レンヤは小さく溜息をついて視界から消えた
「アズサ、お前とはもう少し話がしたい。気が向いたら、俺の名を呼べ…」
声だけが残る
そして気配も消えた
「っ・・…」
腰が抜けたのか、その場にへたりこんでしまう身体
「…アズサ…すまない」
「謝らないで」
何に対して謝られたのかさえ解らないのに
「謝らないで」
「すまない」
「…ケイヤ、レンヤの話を聞かせて・・ケイヤは、彼を私に会わせたかったのでしょう?そして、きっと私は彼を乗り越えなきゃいけない…その先に答えがあるハズだから…」
ケイヤに腕を支えられて立ちあがる
東で見付けたのは
答えではなくて
封印したはずの記憶達
忘れていたはずの記憶
そして
乗り越えなければいけない
―過去―
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あとがきより注釈抜粋
レンヤの漢字名は『狛司 煉夜』ハヤテの双子の弟です。