†Must come again†
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暗い部屋
夜が
明けようとしていた
気だるさが残る身体をゆっくりと起こして
隣で眠るケイヤの寝顔を見つめる
従兄弟よりも兄弟かと思えるようなほど
似通った顔立ち
「………ごめんなさい・・」
口を突いたのはその言葉だけ
「………」
「………」
ゆっくりと開かれた瞳が
私を捕らえる
「……東に…こないか…?」
「……・・え・・?」
ゆっくりと伸ばされた手が
身体を起こしていた私を捕らえて抱き寄せた
「帰って来い………アズサ」
「……ケイヤ・・?」
「俺はお前を連れ戻しに来た」
驚いて声もあげられない
「戻っても…いいの…?」
言葉が震える
「私は、ハヤテを…殺したのよ…?」
「習わしだ。誰もお前を責めちゃいない」
どうしてそんなに優しく言葉を紡ぐの?
「……連れて行くなら・・」
連れて行ってくれるなら
「今すぐ…すぐにして…」
この地を離れれば
何か変わるのだろうか…?
殺したいほど憎くて
それでも
殺せない
この理由も
東に
あるような気がして…
「ケイヤ」
「?」
「東には…私の答えはあるのかしら…?」
「…きっと・・」
ケイヤの言葉に頷いて
私は
ケイヤの腕の中から抜け出した
鳥の囀りが響く森
澄んだ色をした空気
懐かしい景色
想いでの中の顔ぶれ
「お帰り、アズサ」
「ツイネ婆…」
「綺麗になったな」
「そっちはどうだった?」
「元気にしてたか?」
あぁ…どうして
どうしてみんな
そんな笑顔で迎えてくれるのだろう
どうせなら
罵倒してくれた方がどんなに楽か
どんなに…
「ごめ…な…さぃ…ごめんなさいっ…私っ…」
それ以上の言葉はいらない
ツイネ婆が静かに私の手を取って言った
数年の月日の間に
その手は少しやつれたような気がした
里の風景も
少しは変わった気がした
時が流れていたのだと
止まってなどいなかったのだと
そう
実感する
「アズサ、サイカに会ってやっておくれ」
ツイネ婆の悲しげな声
長く無いと言われた体
「はい」
短く返事をして
ケイヤと共にサイカの家へ向かう
今はもう
サイカしか住んでいない家
「アズサっ!?」
庭先で、花に水をやっていたサイカは
こちらの姿を確認するなり声をあげた
「………サイカ・・」
「元気にしてた?急にいなくなったからどこへ行ったのかと思って心配していたのよ?」
くったくない笑顔を向けられ思わず目をそむけそうになる
傍目に見て解るほど痩せてしまったサイカの身体
健康じゃない事はすぐに見て取れる
これが
これが
あの日、彼を手にかけた報いだというのだろうか…?