†Survivor†
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「これで止血はできてるから、今夜くらいは大人しくしてて」
リビングで
彼の手当てをしてそう言った
「…どうして軍などにいる?どうして国家錬金術師になどなった…?」
解せない
そんな目で私を見つめる彼に
一瞬答えを無くした
でも
それは一瞬だけ
「あの男を殺す為…兄さんお願い。焔の錬金術師は私に殺らせて」
言うと彼はまた怪訝そうな顔をした
「変わったな…冷たい瞳をしている」
「もう…引き返せないの…兄さんと一緒よ」
即答して
視線を合わせる
先に目をそらしたのは
彼だった
そして見付ける
テーブルに置いた
銀時計を・・
彼の手が伸びて
咽を閉める
「…イシュヴァラの教えはどうした…」
「…捨てたわ」
「何?」
即答した私に彼は眉を寄せた
「だって…イシュヴァラは何もしてくれなかった!!兄さんも父さんも母さんも助けてはくれなかった!!私……軍の奴等に犯されたわ…」
「っ…!?」
「力さえあればっ…錬金術があればっ……奴等に対抗できた!!私は半端な事はしない」
そう
兄さんとは違う
「イシュヴァラの神にすがったりしない…兄さんみたいにっ…イシュヴァラの御名に責任を押し付けたりなんかしないっ!」
私は人殺しだ
そして
もう一度だけ人を殺す
自分の為だけに
「私はイシュヴァール人だけど…錬金術を使うわ!あの男を殺す為だけにっ…他の誰でも無い私だけの為に殺すわ!!死んだ人達の為なんて大義名分はいらないっ…全部私自身の為よっ!!」
咽にかかった右手に力が篭る
「殺すなら早くして…」
あいまいな苦しさは辛いだけ
「国家錬金術師を殺すつもりで…イシュヴァール人の私でなく、『暁の錬金術師』を殺すつもりなら…一思いに殺して」
「…っ…」
彼の瞳が揺れて
その手が離れた
イシュヴァール人は血の繋がりを何より重んじる
彼が私を殺せないのは端から解っていた
だって
今死ぬわけにはいかない
「っ…兄さん!?ドコ行くの!?」
突然ふらりと歩き出した彼を止める
「そんな身体じゃもたないわよ!!」
「国家錬金術師の厄介になるつもりはない……いいか…焔の錬金術師が死しても尚、暁の錬金術師の存在を聞きし時は…遠慮なく殺させてもらう」
それは
今の彼なりの
優しさだと解っていた
彼は不器用だ
兄と慕う私をいつも持て余していて
遠ざけ様とするのに
言葉は冷たくなくて
「兄さん…ありがとう・・」
玄関へ向かう背中に
そう告げた
同じ生き残り…
私と彼は
違う道を歩いた
一方は
不特定多数の全てを憎み
一方は
特定された一つを憎んだ
正しいものなんてない
ただ
想いが違うだけ
他の生き方を
選べないだけ
生きる事を選んだあの時に
力を欲したあの時に
私の道は
決まっていた
生き残った私は
一つの目的の為に
今も
生きている
彼も
きっと
変わらない
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あとがきより注釈抜粋
スカーとアズサの関係→アズサの亡き兄の友人という設定