†Survivor†
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
欲しいものなんて何も無い
何もいらない
人の温もりも
肌の泡立つような恐怖も
癒されるような笑顔も
眩暈するような痛みも
何もいらない
感情が
抜け落ちた記憶を甦らせようとする
それさえも
要らない
邪魔だ
邪魔だ
邪魔だ
「ハヤテっ…私は…っ」
カチャリと音がなって扉が開く
瞬間的にクナイを手に取って
ベッドのスプリングをバネに入口へと跳躍した
無粋な侵入者の左肩を左手で抑え
右手に握ったクナイをそいつの首筋にあてる
上手く扱えない右手のせいで
その首に紅の筋が一本できあがった
「…手荒いな…」
「…ノックくらいは常識でしょう…大佐・・」
言いつつもクナイを握った手を緩める気はない
「そのまま一掻きで私は死ぬが?」
「…っ…今は…生かしといてやるっ…」
一言呟いて
跳ねるように一歩後退する
忍の術で壁を抜けて
この空間から
逃げ出す
今は
今は
殺れない
今?
いつなら
殺れるの?
解らない
ワ
カ
ラ
ナ
イ
抜け出したその日の夜は
何だか騒々しかった
忙しなく憲兵隊が走り回っている
その内の一人を捕まえて
銀時計を見せて
状況を聞く
スカーが
現れた
らしい
貴女も気をつけてください。と
それは言ってまた走り去った
気をつけるも何も無い
そう思いながら
ワザと
裏路地を歩く
「しまった…上着置いてきた…」
黒のシャツ一枚で
春先の夜は
少し
寒い
と、たまたま曲がった先に
人影を見付ける
荒い息
滴り落ちる水滴
それが
すぐに彼だと解った
「っ…どけっ…どかねば貴様を殺す!」
そう言いながら彼は右手の間接を鳴らした
「兄さん…私よ」
「軍人に知り合いなどおらぬ」
吐き棄てるように言って彼は右手を私に向けようとしている
「黒い髪じゃ…解らないか」
両手を合わせ
髪に触れ
元の色に戻す
「これでも…解らない?」
「お前はっ…」
驚愕の声をあげた彼の後を辿るように
憲兵隊の笛の音が近づいてくる
「こっち」
あちこちを駆けながら
自分の家に彼を連れて行く
「いいのか…?」
彼が訪ねる
「それなら…私を殺さなくていいの?…と聞くべき?」
家までの道のりを走りながら
私はそう言った
いつから
こんな
皮肉屋に
なっていたのだろう?