†First murder†
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勝敗が決したのは
それから数時間後
幾度も交わされた攻防の跡が森中に残る中
二つの影と
互いを刺し貫いた刀
滴り落ちる鮮血
その森で
その不自然な影の一つが
荒く息を吐いて言葉を紡いだ
「…・・は…ゃて…?」
「………」
「何で…?」
「くっ…かはっ…」
ハヤテの口から血塊が零れ落ちて
アズサの銀の髪を染めた
「ハヤテっ…」
アズサの刀は
ハヤテの肋骨の隙間を抜けて右肺を貫いていた
ハヤテの刀は
アズサの左の脇腹を貫いていた
どちらが致命傷か…
明らかにそれは解っていた
「はゃて…っ…」
己の腹に突き刺さったままの刃を抜き、倒れかけたハヤテの身体をささえようとする
ハヤテは膝を折って咽に溜まる血塊を吐き出した
「ど…して…手抜いたの…?」
むせ込むばかりのハヤテはそれに答える余裕は無い
肺に刺さったままの刀を抜くため手をかけ、それをアズサの手が止める
「血がっ…!抜いちゃだめでしょ…?今から里に帰ればまにあ…」
言いかけたアズサの言葉をハヤテの視線が貫く
「二人…いきて…か…る事は…ゅるさ…ない…」
気迫負けしたアズサの手が緩んだのを良い事にハヤテは一気に刀を抜いた
「ハヤテっ…!!」
「ぃきろ…お前は…っ…・・生きる…だ…」
「・・ハヤテ…」
失血量の多さにアズサ自身眩暈を起こしながらその名を呼ぶ
「…アズサ・・とどめを…さして・・く…いか…?もぅ…見えない…だ…」
「ハヤテ…ごめ・・なさい…私…」
「ほ…っと…泣き虫…・・だな…」
探るように頬に触れて言う
「はゃ…て…キス…して…」
「ん…」
探りながらのキス
触れるだけで濃い血の臭いと味がした
唇を離した途端に激しくむせこむハヤト
「私…絶対生きるから…ハヤテの分も…ぃきる…からっ…」
「あぁ…先に逝ってっ…ゲホッ…」
「喋らなくてい!!…もぅ・・ぃぃ…ょ…」
消え入りそうな声で呟き、己の忍刀を握り締めた
「け…ゃ…に…頼むと…」
「ぅん…」
「アズサ…」
「…なに…?」
「ぁ…してる…一緒に…ぃてや・・なくて……すまなぃ…」
「うん……さよなら…ハヤテ・・」
心臓近くにあてた刀に力を込めて刺し貫く
ハヤテの身体が一瞬硬直して
力なく地面に崩れ落ちた
「ね……生きれないよ…」
暫くその場に固まっていたアズサが呟くように言った
「こんな…こんな…血にまみれた手で…・・生きれないっ…」
紅い
どうしようもないほどに
拭えないほどに
「……約束…守れない…」
自刃するには勇気がいった
だから
手の甲に練成陣を血文字で書いて
自分を消そうとした
分解してしまおうと思った
でも
強烈なまでの情報量に出会っただけで
自らが死ぬことは許されなかった
喪ったのは
あの人を愛していたという記憶
忘れてしまったのは
師を殺したという記憶
ケイヤは
ショックの為に起こった一時的記憶喪失だろうと言った
けれど
違う事を知っている
アレは
確かにこう言ったのだ
『等価交換だろ?錬金術師…』
END
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あとがきより注釈抜粋
①
アズサが左利き→レイオットに右手を壊されてるから。
②
それからハヤテの『見えないんだ』→失血死の場合はまず目が見えなくなると何かで読んで。
③
登場人物の漢字名。
『狛司 蛍鵺』(ケイヤ)
『狛司 細華』(サイカ)
『御笠置 畢嶺』(ツイネ)
④
便利な練成陣なしの理由→とりあえず真理に遭ったと思ってください
⑤
最後の方『喪ったのは』という事と『忘れた』という事の差なのですが、『ハヤテを愛した』という事実は真理に持ってかれてます。
でも、感情までは奪われてません。
記憶だけで人を愛するわけでは無いと思っているので…。
『忘れた』のは愛していたことを感情が思い出すから、殺した事を忘れたフリをしてたんです。
自己暗示ですね。
と書いてありました。