†Scar†
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目覚めると彼はいない。
大佐の執務室のソファに、私は独り寝かされていた。
もっとも、二人仲良く寝る訳にもいかないが…。
起き上がった反動でかけられていた何かが落ちる。
よく見覚えのあるもので、知っている物。
あの日も着ていた。
大佐の黒いコート
拾い上げて抱き締めると、あの人の匂いがした
少しだけその余韻に浸って、そのコートを大佐の椅子に掛ける。
そして乱れた髪を直す為、彼に外されたコンドルを探した。
しかし
どこを探しても無い
見当たらない
あれは、彼が錬成してくれた‥
あぁ…捨てられたんだ‥
そう思っても、あまり悲しいと思わなかった
始めから何もなかったと思えば‥
大した事無い
とにかくこのままで仕事をするには支障があった
大佐の部屋を出て、自分のデスクに置いてあった鞄の中からポーチを取って化粧室へ向かう。
ブラシで髪をとかし、見た目だけ落ち着かせる。
そこで、ポーチの中に珍しい物がある事に気付いた。
まだ一度も使った事のないルージュ。
買ってみた物の、一度も使用しなかった物…私はそれを手に取り唇をなぞった
ラメの少し入った淡いピンクのルージュ…
それだけで別人のように見えた
襟元を整えようとして目をやり、ふと気付く
紅の痕
彼のモノだという証
私はそれを襟で隠し、化粧室を後にした。
「あら、ガーラント少尉。ちょうど良かったわ」
「ホークアイ中尉…私に何か?」
「大佐が今日は帰っていいって。最近残業が多かったから、そのお陰ね。ゆっくり休むといいわ」
中尉はそれだけ言うと踵を返して廊下の奥に消えた。
こんな時に休みをもらっても
迷うだけで
何も無いというのに
本当に私は
貴方のモノなのですね
一大佐…一
暇。
この一言に尽きた。
制服では目立つので一度着替えてから、街に繰り出した。
けれど、遊び方なんて知らない私は、適当に気を紛らわす事さえ出来ない。
一番問題だったのは
髪を止めるコンドルに気に入った物が無いという事。
髪は暫くこのままか…ゴムでくくると頭が痛くなるから好きではない。そんなことを考えながら公園のベンチに座り込み、空を見上げる
雲一つない青い空が広がっていて、綺麗だと思う前に軍服の色を思い出すから始末が悪い
自分でも呆れてしまう
いつからこんなに愚かだったのだろうか…
いつからこんなに
私は貴方を求めていたのだろうか
会いたい
今すぐ貴方に会いたい
愛してなんかくれなくていい
この痕が示すように
私は貴方のモノでいいから
ロイ
私の名前を
呼んで
どうあがいても
貴方無しで
生きれない
一‥ロイ…一