†Cry for the moon†
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君を喪って
随分と時間が経った
君の好きな
氷の結晶が舞う
冬の季節がまたこようとしてる
そうだ…一年ぐらいは経っているのかな・・
実質的な時間の経過など
今の私には関係無い
君を喪ったあの時に
私の時間も止まっている
・・アクア…
気持ちは傍にいるといっていたけど
君は今
私のドコにいるんだい…?
「…ィ…ロイ!もぅっ!!ロイってばぁ~聞いてる~?」
「…すまない。何の話だったかな…?」
「も~余所見ばっかりしてぇ~」
女が私の横で言った
名前は確か…『ハイネ・フォルトーネ』といった
古物商の娘だ
君が
『また誰かを愛して』
そう言ったから
私は誰かを『愛そうと』している
別に
キッカケなど単純で
私にいつものように言い寄ってきた女が
たまたま
君と同じ
青銀髪紫眼だったという事
それだけだ
「ね…?いいでしょ?今日は・・貴方の家に連れてって…?」
「あぁ…構わない・・」
別に
愛するフリぐらい
どうって事ない
男は
愛していない女でも抱ける
どうせ
長続きさせるつもりもない
一度抱けば
それで終わる
アクア…
君は
今の私をどう思うかな…?
きっと許しはしまい
しかし
どうにもならないんだ
君を求めて
心が
まだ
泣き叫んでいる
「ねぇロイ~?」
女がグラス片手に私の首へ腕を絡ませた
「どうして私を選んでくれたの?」
『愛しているから』とでも言ってほしかったのか
私はそれに応えない
「…お父様から聞いたの・・ロイには昔私と同じ髪と目の女がいたって…」
「だから・・なんだ…?」
「別に昔の女の事なんて気にしないわ。でもね…私をその女と重ねてるっていうなら話は ベ・ツ…」
別れ話を切り出すのならそれもいい
また代わりを見繕うだけだ
「お父様がね…私と結婚したら、セントラルの上の人に顔をきかせるって言ってくれてるの…ね?ロイ…悪い話じゃないでしょ…?」
娼婦の方がもっと品が良いのではないかと思わされるような目
だからここで抱けと視線で要求している
くだらない
「…それで…君はどうしたい…?軍部の上級階級の夫を持って・・どうしたい…?」
「え…」
私は彼女の腕を引き剥がして言った
「…君は私を愛してなどいないのだろう?ただ、この地位と能力に惹かれているだけだ。違うか?」
「そんな事…」
「では何故、私にエサをちらつかせる?」
聞くと女の顔が歪んだ
「私を愛していないのは貴方の方じゃない」
「気付いていたか」
私は大してそれに驚く気にはなれなかった
向こうも解っていただけあって泣く訳でもなく
ただ私を睨んだ
「では、このゲームも終わりだな」
「…ゲーム…!?」
「所詮・・男女の駆け引きなどゲームと同じさ…」
私にとっては
ただの暇つぶしにすらならないが
「帰りたまえ。あまり遅くなると物騒だからな」
「…っ・・酷いっ!!」
女は自らの鞄をひっつかむと部屋を出て行った
玄関口で扉の閉まる音がする
「酷い…ね・・君だって私の地位だけに惹かれていたのだからお相子だろうに…」
誰にともなく独りごちて呟いた
私は飲みかけのグラスの中身を全てあおり
新しく瓶の中身を注いだ
『ロイ!最近飲み過ぎ!!』
「っ…」
幻聴が聞こえた気がした
確かに最近酒量が増えた
部下達にも忠告を受けていたのをふと思い出し、私は苦笑した
「アクア…今日は君の忠告に従うとしよう…」
そうして酒瓶をテーブルにおいて
ベッドの上に身体を投げ出した