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「うわっ!?」
悲鳴と同時に小さなそれはよろけた。
「ってて…悪い‥って、アンタ、マスタング大佐の部下の…えと‥」
「アクア・ガーラント少尉だよ、兄さん」
「そう!!それっ!!アクア!!」
彼等の顔は見知っていた。エルリック兄弟。
なんでも、錬成陣無しで錬成するらしい…。
「なぁ、アクアがここに来たって事は、リスト持って来たんだろうな?」
リストとは先ほどの紙きれの事を言うのだろうか。
私は先ほどもらった紙を彼等に手渡した。すると彼等はそれを見て互いに顔を見合わせると、また室内へ戻っていこうとする。
そして、扉が閉まる直前に思い出したかのように言った。
「後は俺達がするから、アクアは大佐の所戻っていいぜ」
「え…」
バタン。と音を立てて閉まった資料室の扉はもはや戸惑うこちらを受け入れる気配はない。
「探すのは私の仕事じゃないのか…?」
釈然としない気持ちを抱え、私は元来た道を戻ることにした。
一応指示を仰がねば、職務怠慢としていらぬ始末書を書かねばならなくなる可能性があるからだ。
「‥失礼します」
先ほど出たばかりの部屋を再び訪れるのは、どうも妙な気分だった。
先ほどと違うのは卓上の書類が全て傍らのホークアイ中尉によって運び出されるところだったという事と、彼が立って窓の外を見ていたという事だけだ。
「エドワード・エルリックに追い出されたか?」
中尉の退室を気配で見ながら、彼は言った。
「はい。大佐は最初からそのおつもりだったのですか?でしたらわざわざ『探せ』などとおっしゃらなくても…」
「アクア」
また、名を呼ばれる。
「そうでもしないと、お前は私を避けるだろう?」
彼がこちらへ歩いてくる。
「避けてなどいません。マスタング大佐」
言葉とは裏腹に一歩退きそうになる自分を抑えると、彼は一瞬歩みを止めて、少しだけ苦笑した。
「アクア」
目の前に立った彼の手が腰に回り、片方の手は顎にそえられる。
「相変わらず、表情は変わらないな」
苦笑
「私を抱くのですか‥マスタング大佐」
「…」
背中で握った拳が震えている。
怯えてる?何に?
ただ自問を繰り返して耐えた。
無言で唇が触れる。
触れるだけの口づけ。
「…離してください。マスタング大佐!」
無意識に語尾が強調される。
抗っても、男の力には勝てない。
「何故私を避ける?アクア…国家錬金術師になってから、お前は私と向き合おうとしない」
「…‥…そうね。ごめんなさい、ロイ…‥こう答えれば満足ですか?マスタング大佐‥お忘れなく…貴方と私のボーダーラインが、既に引かれてあるという事‥失礼します!」
気の緩んだ彼の手を無理矢理ふりほどき、敬礼もせず退室した。