†Hold me tight†
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『…ヒューズが…死んだ・・』
受話器越しに聞こえる震えた声
「…何が…あったの…?」
『…殺された…』
嘘。
あの人が死んでしまうなんて…
―ウソ―
「・・うそ…」
嘘だと言って
『明後日…セントラルの墓地で・・葬儀が行われる…』
「言わないでっ!!」
『……』
「…ロイ…まだ・・司令部に……?」
「…あぁ・・」
「・・行って…いい…?」
返事は無い
『駄目だ。私は今…まともな思考をしていない…君を・・傷つけるかもしれない…』
『プツッ』と音を立てて電話が切れた
大切な人を喪うという事が
こんなに
辛い事だとは思わなかった
少し前まで笑ってたのに
いつもと変わらない
優しい笑顔だったのに
「ちゅぅ…さ…おとっ…さんっ…ヒューズ中佐っ!!」
名前を呼んでも返事なんて無い
今はただ
あの人の名前が懐かしくて
呼べば
あの人のぶっきらぼうな返事が
返ってくるような気がして
何度も
何度も呼んだ
明かりの消えた部屋で
ただ
泣き叫んだ
葬儀の参列者は
言うまでもなく
軍関係者が殆どで
彼の死に涙する者は
いなかった
『いかなる時でも己を律すべし』
軍人が
人の死を悼むのに
泣いてはいけないなんて
誰が決めたの?
「パパを埋めないでっ!」
悲鳴が周囲に響く
埋めないで
埋めてしまわないで
何度も繰り返し呟く
泣いてはいけないから
それでも
涙は溢れてしまうから
せめて
―嗚咽が漏れないように…―
「どうしてパパを埋めちゃったの?」
葬儀が終わって人々が去り始めた中
一人の幼女が周囲に訊いて回る
けれど
誰一人として答える者はいない
そして彼女は
私に照準を合わせる
「…アクアお姉ちゃん・・どうしてパパを埋めちゃったの?」
ただ不満気に
納得できない現実に
この子は『死』というものが理解できていなかった
でも
理解したく無いという意味では私も同じで…
答えを求める彼女の前にゆっくりとしゃがみ込む
「…パパはね…死んでしまったんだよ・・」
「し・・??」
「死ぬっていうのはね…もう、2度と…話してはくれないし、笑ってくれないし…抱きしめてもくれない…『死ぬ』っていうのは…そういう事なんだよ…」
「わかんなぃ…」
呟きながらも
その瞳から涙が滲み出て
零れ出す
幼いながらもその『死』を理解しようとしている
私は
思わずその小さい体を抱きしめた
「哀しいね…苦しいね…辛いねっ…泣いて・・良いよ…?涙は悲しみの成分を一緒に流してくれるんだって…だから・・好きなだけ泣くと良いよ・・」
昔
あの人が
教えてくれた
「っ…アクアお姉ちゃんは…泣かないの?哀しくないの?」
「泣けないの…泣いちゃいけないから…エリシアちゃんが…代わりに泣いてくれる…?」
しがみついてくる小さな体が嗚咽を漏らして泣いた
それは
もう一人の私の姿だったかもしれない