†With me a waltz†
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二日かけて戻ったイーストシティ
駅のホームには見なれた顔があって
会いたくて仕方ないはずなのに
足がすくんでしまう
「ホラ、行ってこいよ」
背中を押されても足がいう事をきかない
「あぁ、そうそう。こいつを忘れてた」
そう言って中佐が取り出したのは『コンドル』
あの日
無くしてしまったもの
「奴に頼まれてたんだがすっかり忘れててな」
少し戸惑いながらそれを受け取り、髪をまとめてみる
首筋が少し寒い
正面には少し苛立っている様子の彼
まだ足は動かない
「しゃーねぇなぁ…ほれ、手」
言って中佐が手を差し出すので、私はそれに従う。
中佐が私の手を引いてゆっくりと歩きだす
まるで
彼の元へエスコートされているような気分で
なんだかおかしかった
彼の目の前に辿り付くと
中佐は私の手を離して一歩後退した
戸惑う私に
ただ笑っている中佐
ねぇロイ
どうしてそんな顔をしているの?
聞くよりも先に
呟くよりも先に
抱きしめられると同時に強いキス
何度も角度を変えて
食らいつくように
貪るように
舌を絡ませて
互いの吐息さえ飲み込んで
止まらない
「…アクア」
唇が離れても
この腕だけは離れない
―離さない―
「…コホン…」
中佐の咳払いで我に返って腕を離したが
彼はそのまま私を抱きしめて中佐に声をかけた
「野暮だな…ヒューズ・・」
こんな所でこんな事をしている私達の方が
この際問題だと思うのだが…
「ったく、もうちょっと場所を考えろってんだ。こんな公衆の面前で…」
言いかけた中佐の声が止まる
「中佐?」
彼の腕の中からなんとか抜け出して振り返ると、中佐が笑っていた
「いや…俺はセントラルに帰る。またセントラルに寄る事があったら、ウチに寄ってくれや。エリシアもアクアに会いたがってたしな」
小さく頷くだけの返事
「ヒューズ、世話をかけた」
「まったくだ。俺の娘泣かせんじゃねぇぞ」
「娘?」
疑問符をつけた彼のセリフには答えず、中佐はそのままセントラルに向かう列車に乗り込んだ
「アクア、私達も帰るとしよう」
「でも大佐、仕事が残っているのでは?」
聞くと彼は少し苦笑して私の肩を抱いた
「少しぐらいサボっても問題はあるまい?」
「…いつもサボってるくせに…」
お互いに小さく笑って
走り出した列車に背を向けた
私達が
生きている
『マース・ヒューズ中佐』という人を見たのは
それが最期だった
次に会ったのは
一ヶ月後
『マース・ヒューズ准将』という
殉職して
動けなくなった
―彼の遺体―