†With me a waltz†
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「イーストシティに着いたら降ろしてやるよ」
「中佐!」
冗談めかして言う彼に、必死に声をかけるも歩調は緩まない
「アクア、アイツの事裏切ってるの解ってるのか?あのバカ、面には出さねぇが…どれだけショック受けてるか…お前に解るか?」
「………」
何も言えない
少し
お互いが痛ければ
それで済むと思った
「無駄に意地張ってないで、素直になれって。昔からアクアは余計な気を使いすぎなんだよ」
だって
私はいつだって蚊帳の外だから
いつも
あの人の隣に立つには
背伸びしないと
ついていけない
「甘えてしまえばいい。頼られずに独り抱えこまれるのは結構こたえるもんなんだぜ?」
中佐が軽く笑った
「中佐…」
「ん?」
「…ヒューズ…おじさん」
ずいぶん昔
家を飛び出した時も
こうして中佐が迎えに来てくれた
私は年がいもなくだだをこねて…
中佐の事を『おじさん』と呼んだ
そしたら中佐はいたくショックを受けた後に少し悩んで
「…お父さん…でどうだ?」
と、いつもの笑顔で言った。
「……お父・・さん…」
「なんだ?」
「降ろして…ください・・」
あぁ・・
私は愚かだ
こんなにも暖かい人達に囲まれて
私はまだ震えている
「娘は娘らしく、大人しく父親に甘えてな」
それは嬉しいのだけど…
「私…エリシアちゃんと違って重いし…自分で歩きたいんです…」
「そうか」
中佐は私を降ろすと、くしゃりと頭を撫でた。
それがなんだかくすぐったくて口元が緩む
「エリシアもアクアみたいに美人になるだろうなぁ…」
「私…美人じゃないです…きっと、エリシアちゃんの方が何倍も美人になりますよ」
そう言うと、中佐の顔がニヤけた
そしていつもの様に胸ポケットから写真を取り出してこちらに向ける
―どうせ仲睦まじい家族の姿が写っているのだろう―
そう思って見たソレには
私を真中にして撮られた写真
私が国家錬金術師の資格を取って
初めて軍服を着た時の記念写真
「…そんなもの…まだ持っていたのですか…?」
「『まだ』って何だ『まだ』って…持ってちゃ悪いかよ」
「いいえ…ありがとうございます…お父さん…」
こんな暖かい人を父と呼べるのは
―とても幸せなのかもしれない…―
「あ…私…」
幸せだと感じた途端に
涙があふれた
「泣いちまえ。泣き止むまでこうしててやるから」
頭を軽く押され、中佐の胸に押しつけられた
「服が汚れます…」
「洗えばいい話だろ…?あぁ、アクアが練成してくれてもいいな…やってくれるか?」
「…はぃ…お父さん…」
父と呼べる人に愛して欲しかった
この人がいつも私に教えてくれる
この人の優しさにいつも温められる
家族を想う人の暖かさ
彼とは違う温もり
こんな人達に想われて
どうして私は自分を殺そうとしていたのだろうか
彼の立場が危うくなること
そんな事は
彼が自分で解っていて
それでも私を傍に居させてくれた
ただ
見にくい嫉妬心に駆られて
自分を可哀想にしていただけ
ただ
逃げていただけ
そして
―彼を傷つけた…―
ねぇロイ
私の居場所は…
まだ
ありますか…?