†Bloodstain†
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私がそう思い立ったのはその声がした時
散らかしたバスルームの中に転がっている剃刀
「これでいい」
それを左手で握り締めて右手の手首に添えて横に引いた。
肌を切る感触がして血がじわりと滲む
浅い…
その血はすぐにシャワーに洗い流されて、薄い皮膚の切れ目の線だけを覗かせる
どこを切ろうかと剃刀の刃を肌の上で遊ばせ
適当に柔らかそうな場所で力を込める
ゆっくりと
確実に
痛覚が肌に食い込む刃を拒むかのようにシグナルを鳴らすが止まらない
ある程度こじ開けたところで手を止める
今度はじわりとではなく、切った剃刀を追うように血が滲み出て、シャワーが洗い流す間も無く溢れた
水が紅に染まり
傷口から血が止めどなく溢れる
手元が震えた
剃刀を握った手がそれを取り落とす
「…父さん・・これで満足…?」
一度でいいから愛して欲しかった
「私に幸せになる権利なんてない・・そんなの解ってるっ…」
我知らずと自分の顔に爪を立てた
『アクアを見ていられないっ…』
「・・はは…はははっ…あははははは・・」
何がおかしいのか知らない
笑いが止まらない
愚かな自分が
今更痛みを知って嘲笑っているのだと思った
気がつくと私の手には包帯が巻かれており
ベッドの中で眠っていた
身体を起こすと書類に目を通しながらイスに座っているロイの姿が見える
「ロイ…?」
ロイは無言でこちらを見ると、険しい表情のままで私の頬を叩いた
「バカなことを…」
言って今度は私を抱きしめた
「ホークアイ中尉がこなかったらどうなっていたか…」
「…ごめんなさい・・」
「心配した・・アクア…」
「ロイ…」
「二度とこんな事はするな…」
「・・父さんが…生きてちゃいけないって・・」
「…」
「…私が殺した…みんな私がっ…凍らせて……私っ…」
今更罪の意識なんて
ムシが良すぎる
私が
代わりに消えればよかったと思うには
遅すぎる
だって
一度でいいから愛して欲しかった
今更泣くなんて
ムシが良すぎる
今更求めるなんて
私はっ…
「いい加減自分を許してやったらどうかね…?」
「自分を・・許す…?」
「私には、いつまでもアクアが自分を許せないでいるように見えるが…違うか?」
そう…かもしれない・・
自分を許せないから
ムシのいい自分が嫌いだから
愛されない事より
愛せない事が嫌で
私は
周りを殺して生き残った
自分自身が許せなかった
「ロイっ…わ・・たし…」
そこまで言うと何も喋れなくなる
何も言わなくてもいいと言ってくれた彼に甘えて
私は今日
自分を許すこと を
心の中に置くことにした