†Penitent†
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ごめんなさい
貴方は優しいから
きっと
許してくれる
でも
いつか
いつか失わなければいけないのなら
私は
早い方がいいと思っていた
きっと泣いてしまう
別れを
惜しまない程の仲なら
何も言わない
けれど
愛しあってしまったら
哀しいじゃない
私だったら
きっと
死んでしまう
その瞬間まで
貴方を想いながら…
ごめんなさい
懺悔の言葉もない
重い沈黙が部屋を包んでいた
夕日が沈みかけて
朱い光が部屋に差し込んでいる
それを背にして
彼は机に軽く座り、こちらを見ていた
―全て知られてしまった―
彼から渡された書類には事細かに全てが記されていた
どうしようもない事実
「何故隠していた」
彼は大変ご立腹な様子で…
隣にいるヒューズ中佐が、どうしようもないといった顔であらぬ方向を見ている
「大佐には関係のない・・―」
「私は少尉ではなく、アクアに聞いている」
「っ…」
また
彼の怒気が倍増する
「…知らない方が良いと思ったから・・」
「はぁ…」
何度目のため息だろうか?
もう数えるのが億劫になるようなほど聞いた気がする・・
「…ヒューズ、外してくれ」
彼がそういうと、片手を上げて応じた彼もまた、ため息の後に退室した
だって
仕方ないじゃない
「…アクア、私はその程度の価値の扱いなのか?」
「いいえ」
言えるわけ
無い
「…大切だから言えなかった」
知られているなら
もう
隠す必要なんてない
もう
彼を騙せるような理由が
見当たらない
「いつまで・・生きられる…」
「・・解らない・・母の残っていた命の分だけ」
「そうか」
それ以上は何も言わない
彼は黙って私を優しく抱き寄せた
私が創られたのは
雪の降る朝
病に侵された事で子供を産めない身体になっていた母は、それでも子供が欲しいと雪に錬成陣を描いた
「うまくいけばいいのだけど・・」
そう父に呟いて、母は私を練成したらしい
練成は成功。
代償は
母の命
練成陣の雪をもえぐって私は産まれた
錬成陣や触媒などの手助けもなく冷気を発するのは、きっとその雪のせいだと父が言っていた
そしてその力は、時折私の制御を超えて暴走する
暴走と共に寿命を縮め、母の生きるはずだった命が終わる時、オーバーロードを起こして消滅するのだと、昔、町にいた錬金術師に言われた
「これは人体練成だから…」
悲しそうにその人が言っていたのを今でも覚えている
彼の手が頬に触れる
「…冷たいな・・」
「冬だから…」
私は答えた
「この部屋は暖かいが?」
「じゃあ・・ロイがきっと温かいんだ」
頬に当てられた手に自分の手を重ねる
「…アクアは冷たすぎる・・」
「・・人間じゃないから…仕方ない…」
「言うな」
抱きしめられている手に力がこもる
「また…ロイが温めてくれる…?」
「もちろん…」
優しくされると
失うのではないかと
怖くなる
いつか
失うことを知っているのに
どうして
求めてしまうのだろう
貴方に聞かせる懺悔の言葉も無い
―ごめんなさい―
貴方を傷つけると解っていても
あの日
あの言葉を口にした時から
止まらない
止まれない
ねぇ、ロイ
貴方は不器用だから
余計な事は言わなくていいの
ただ
私を抱いて
温めて
愛して
そして
名前を呼んで…
「…アクア・・」