†Cold fang†
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その日の朝
珍しく
大変稀な事に
ロイ・マスタング大佐は廊下を疾走していた。
理由は、親友であるヒューズからの一言。
『氷晶の錬金術師ってお前の部下だったよな?今朝、上層部に転属願をだしたらしいぞ。知ってたか?』
聞かされた彼は、その真偽をヒューズに問い詰めるのをそっちのけに、その部下を探していた。
アクア・ガーラントという名の部下を…
「っ‥ガーラント少尉!!!!」
廊下を歩いていた私の背後から、突然響く声。
誰の物か解っていたし。
何を言われるかも解っていた。
まさか、そのまま大佐の執務室に連行されるとは思ってなかったが‥。
「御用件は?」
聞いた私に大佐は深い溜息をついた。
「私の下は気に入らないか?」
「いいえ」
「では何故転属願を?」
「私が大佐に、私情を挟んで接してしまうからです」
答えた私に、彼は再び深い溜息をつき、自身のデスクに視線を落とす。
「転属に関しては私の許可が降りん限りは不可能だ」
「では、許可を」
食い下がった私に彼の視線が刺さる
「君は天邪鬼だな・・昨日と今日とではまるで態度が違う」
彼は少し自分の机に寄りかかると、前髪をかき上げて何度目かのため息をついた。
「それが何か?」
「君はこどもだ」
言われて少しムッとする。
「私はっ…」
何を言おうとしたのだろうか?
言葉が何も出てこない。
「…私は・・」
「『私は』・・なんだね?アクア」
「こんな時に呼ばないで下さい!」
「何故?」
「何故って…今は仕事中です・・」
「しかし、ここには私とアクアしかいないが?」
なんだか
何を言っても言いくるめられてしまいそうだった。
自分の行動に自信が持てていないせいかもしれない…。
これ以上…
こないで…―
「もう一度聞こう。何故転属願なんか出した?」
怒気をはらんだような声に体が硬直する。
「・・ボーダーラインを越えない為です…私が、越える事に甘んじない為です」
くだらないと
笑われるかもしれない
そんなこと と
怒られるかもしれない
「なるほど。私が避けられていたのはやはりそれか…」
「大佐を避けるなど…」
「少尉」
辿るように呼ばれ、下げていた視線を上げる
彼と目が合って
こなると、私はもう動けない・・
「そんな事を気にかけていたとは…」
「貴方にとってはそんな事でも…私にとっては重大問題でした…」
あぁ…ダメだ
昨日から感情の制御が利かない・・
ホラ
また
泣いてる
いつからこんな脆くなってしまったのだろう・・
そんな事より・・早くこの部屋を出なければ・・
「っ…失礼します」
「アクア!」
腕を掴まれて引き寄せられる
抵抗しても、意味がなくて
抱きしめられる
「離してっ・・離してください大佐!んっ…」
キスで口を塞がれる
息ができなくて
身体から力が抜けそうになる
「っ!?」
「離してくださいとっ…言ったはずです・・」
躊躇いもなく彼の唇を噛んだ私を、彼はあの冷めた目で見つめた
「…よく解った・・」
口もとの血をぬぐって彼が言う
「少尉が大佐である私とプライベートでも距離を取りたいという事、よく解った。出て行きたまえ…ただし、転属に間して許可はしない」
「っ!!…失礼します」
怒らせてしまった…
大丈夫
これでいい・・
彼にはもてあますほどの女性がいつも集っている
私の代わりくらい
すぐ見つかる
彼のモノになりたい女はいくらでもいるだろうから・・
そうやって自分に言い聞かせないと・・
どうにも私は耐えれそうになかった