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日曜日の午後5時。
私はエプロンを着けて気合いを入れた。
「よし!じゃあ染谷先輩、よろしくお願いします!」
「おう」
同じくエプロンを着けた染谷先輩が隣に立つ。
私達が居るのは、先輩の部屋の台所。
あまりにも料理が出来ない私は、先輩に料理を教えてもらう事にしたのだ。
「ところで確認だが、本当に料理出来ないのかお前?」
「自慢じゃないですけど、最後に包丁持ったのは中1の最初の調理実習です。不器用過ぎて何度も指切って以来、皿洗い係です」
「へぇ……」
染谷先輩は若干引いている。
料理が得意な彼からしたら、無理も無いだろう。
「…ちなみに何を作るんですか?」
「無難だが、初心者にはカレーだな」
「本当に無難ですね」
「食材切って煮込めば出来るし、余程の事が無ければ失敗もしねぇし」
「私でも出来ますかね」
「むしろ出来なきゃ料理なんか出来ないと思え」
そんな事を言われ、私は緊張しながらも包丁を握り食材のカットに取り掛かった。
──のだが、先輩に止められてしまった。
「唯ストップ。そんなんじゃ指切って当然だ」
「え、指切らない方法なんかあるんですか?」
「家庭科で教わらなかったのかよ」
先輩が溜息を吐いて言った。
「食材はこう指先を丸めて、猫の手で押さえんだよ」
そう説明しながら、先輩は自分の左手を猫のように丸めた。
「先輩、そのまま猫の真似やってください!」
「早く作んねーと夕飯食えなくなるぞ」
私は大人しく、先輩が教えてくれた『猫の手』で作業を進めた。
「完成ー!簡単ですね、カレー作るの」
「なんとか出来たし、練習してけばレパートリーも増えるだろ。お疲れ」
先輩はニコリと笑って私の頭を強く撫でる。
些細な事で褒められた子供のように嬉しくなった私は、照れた笑顔を先輩に向けた。
「ま、肝心なのは料理の味だけどな」
「カレーって、失敗する事無くないですか?」
皿に盛ったカレーライスをテーブルに置き、私達はいただきますと声を揃えて一口食べる。
先輩を見ると、何やら眉間に皺を寄せていた。
「唯、俺が見てない隙に何入れた?」
「え…隠し味にとチョコレートを」
「全然隠れてねぇし!どれだけ入れたんだよ!そういうアレンジは普通のをまともに作れるようになってからやるもんだ!」
「すみません…」
「次は完成までずっと見てなきゃなんねぇな…今日より厳しく行くからな!」
「はっ、はい!」
料理になると途端に熱くなる先輩に、私はそう答えるしか無かった。
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「花曇」様よりお借りしました。
2014/05/18
私はエプロンを着けて気合いを入れた。
「よし!じゃあ染谷先輩、よろしくお願いします!」
「おう」
同じくエプロンを着けた染谷先輩が隣に立つ。
私達が居るのは、先輩の部屋の台所。
あまりにも料理が出来ない私は、先輩に料理を教えてもらう事にしたのだ。
「ところで確認だが、本当に料理出来ないのかお前?」
「自慢じゃないですけど、最後に包丁持ったのは中1の最初の調理実習です。不器用過ぎて何度も指切って以来、皿洗い係です」
「へぇ……」
染谷先輩は若干引いている。
料理が得意な彼からしたら、無理も無いだろう。
「…ちなみに何を作るんですか?」
「無難だが、初心者にはカレーだな」
「本当に無難ですね」
「食材切って煮込めば出来るし、余程の事が無ければ失敗もしねぇし」
「私でも出来ますかね」
「むしろ出来なきゃ料理なんか出来ないと思え」
そんな事を言われ、私は緊張しながらも包丁を握り食材のカットに取り掛かった。
──のだが、先輩に止められてしまった。
「唯ストップ。そんなんじゃ指切って当然だ」
「え、指切らない方法なんかあるんですか?」
「家庭科で教わらなかったのかよ」
先輩が溜息を吐いて言った。
「食材はこう指先を丸めて、猫の手で押さえんだよ」
そう説明しながら、先輩は自分の左手を猫のように丸めた。
「先輩、そのまま猫の真似やってください!」
「早く作んねーと夕飯食えなくなるぞ」
私は大人しく、先輩が教えてくれた『猫の手』で作業を進めた。
「完成ー!簡単ですね、カレー作るの」
「なんとか出来たし、練習してけばレパートリーも増えるだろ。お疲れ」
先輩はニコリと笑って私の頭を強く撫でる。
些細な事で褒められた子供のように嬉しくなった私は、照れた笑顔を先輩に向けた。
「ま、肝心なのは料理の味だけどな」
「カレーって、失敗する事無くないですか?」
皿に盛ったカレーライスをテーブルに置き、私達はいただきますと声を揃えて一口食べる。
先輩を見ると、何やら眉間に皺を寄せていた。
「唯、俺が見てない隙に何入れた?」
「え…隠し味にとチョコレートを」
「全然隠れてねぇし!どれだけ入れたんだよ!そういうアレンジは普通のをまともに作れるようになってからやるもんだ!」
「すみません…」
「次は完成までずっと見てなきゃなんねぇな…今日より厳しく行くからな!」
「はっ、はい!」
料理になると途端に熱くなる先輩に、私はそう答えるしか無かった。
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「花曇」様よりお借りしました。
2014/05/18
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