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私は今、とある洋館に来ている。
洋館で行われているのは桃里と月城の合同ダンスイベントだ。
いつもの様に環の思い付きだろう…と思っていたが今回は違うらしい。
なんでも桃里の生徒会長が持ち掛けて来たイベントだそうだ。
今となってはその事にも納得だ。
向こうの生徒会長はダンスイベントにかこつけて、大方環とお近づきにでもなりたかったのだろう。
しかし姫であり彼女でもある私が環の傍を離れないが為に、生徒会長さんはちょっと女の子同士でお話したくて、なんて私を呼び出した。
そう。いま私は桃里の生徒会長に呼び出され、洋館の隅に位置する個室に居るのだ。
卑怯な事に向こうは何故か副会長ともうひとり居て3対1。
明らかに私は不利ではないか。
「あなた先程から環様にべたべたし過ぎじゃないかしら?」
「姫だか知らないけど、あなたみたいな子は環様には似合わないわ」
予想通りの罵詈雑言。女って怖い。
やはり桃里を受験しないで正解だったかも知れない。
なんて考えていると、生徒会長さんの細くて綺麗な指がスッと私の顎を掬う。
「今の自分の状況わからないの?随分と余裕そうじゃない」
「さんざん環様を独り占めしたんだから、このくらいは甘んじて受けなさいよ」
ふふっと笑うとふたり掛かりで私を押さえ、生徒会長は何処から取り出したのかハサミを手に私の前に立つ。
何をするの、と問うより早く、彼女は私のドレスを裾から躊躇い無く切り裂いていった。
「その格好、とてもお似合いよ」
そう言い捨てて足早に去る彼女たち。
丁寧に扉には鍵を掛けられ、外には出られない。
「何が楽しいんだか…」
本当、こんな事をして何が楽しいのやら。
折角のドレスもボロボロになってしまった。
藤吾先輩にどやされるだろうな…なんて思うあたり、まだ心に余裕があるのだろうか。
携帯も置いてきてしまったし、環も彼女らに捕まってきっと探しには来れないだろう。
そもそも私がこんな事になっているなんて気付いていないかも知れない。
そんな考えが浮かんで来ると、急に視界が潤み涙が溢れて頬を伝う。
閉ざされた静かな空間には、私が啜り泣く音だけが響く。
止まらない涙に自分でも驚いていた時、廊下から聞き慣れた足音が聞こえた。
思わず垂れていた頭を上げ扉を見つめる。
カチャリと鍵が開いた扉から見えた人物は、想い待ち望んだ愛しい彼。
「唯!」
「環…!」
環は私に駆け寄りぎゅっと力強く抱き締めた。
私もそれに応える様に強く抱き締め返す。
環が来てくれた安心感からか、再び涙が溢れだした。
彼は何も言わず、私の背中を優しくあやすように叩く。
「やはりお前をひとりにするんじゃなかったな。俺とした事が…」
環は悔しそうにギリッと歯を噛み締める。
そして腕を私から放すと、携帯を取り出し誰かに電話をし始めた。
相手は藤吾先輩らしく、場所を伝えるとサッと通話を終える。
程無くしてノックの音が響き藤吾先輩が顔を覗かせた。
手には豪華なドレスを持って。
「こらまた派手にやられたなぁ…」
「すみません、折角作ってくれたのに……」
「まぁお姫さんが悪い訳やないし、今回は仕方あらへん」
「さ、唯。このドレスを着ろ」
「え?うん……?」
今の連絡の間にでも作ったのだろうか?そんなまさか。
聞くと、デザイン候補が2つあり、とりあえずどちらも作ったのだそう。
「着たけど…ちょっと派手じゃないかな?」
「やはり俺様の見立て通り、こっちの方が似合うじゃねーか」
にやりと笑いながら環は私に手を差し出した。
「ダンスホールで思いきり目立ってやろうじゃねーの。行くぜ、俺だけのプリンセス」
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「ルネの青に溺れる鳥」様よりお借りしました。
2016/03/03
洋館で行われているのは桃里と月城の合同ダンスイベントだ。
いつもの様に環の思い付きだろう…と思っていたが今回は違うらしい。
なんでも桃里の生徒会長が持ち掛けて来たイベントだそうだ。
今となってはその事にも納得だ。
向こうの生徒会長はダンスイベントにかこつけて、大方環とお近づきにでもなりたかったのだろう。
しかし姫であり彼女でもある私が環の傍を離れないが為に、生徒会長さんはちょっと女の子同士でお話したくて、なんて私を呼び出した。
そう。いま私は桃里の生徒会長に呼び出され、洋館の隅に位置する個室に居るのだ。
卑怯な事に向こうは何故か副会長ともうひとり居て3対1。
明らかに私は不利ではないか。
「あなた先程から環様にべたべたし過ぎじゃないかしら?」
「姫だか知らないけど、あなたみたいな子は環様には似合わないわ」
予想通りの罵詈雑言。女って怖い。
やはり桃里を受験しないで正解だったかも知れない。
なんて考えていると、生徒会長さんの細くて綺麗な指がスッと私の顎を掬う。
「今の自分の状況わからないの?随分と余裕そうじゃない」
「さんざん環様を独り占めしたんだから、このくらいは甘んじて受けなさいよ」
ふふっと笑うとふたり掛かりで私を押さえ、生徒会長は何処から取り出したのかハサミを手に私の前に立つ。
何をするの、と問うより早く、彼女は私のドレスを裾から躊躇い無く切り裂いていった。
「その格好、とてもお似合いよ」
そう言い捨てて足早に去る彼女たち。
丁寧に扉には鍵を掛けられ、外には出られない。
「何が楽しいんだか…」
本当、こんな事をして何が楽しいのやら。
折角のドレスもボロボロになってしまった。
藤吾先輩にどやされるだろうな…なんて思うあたり、まだ心に余裕があるのだろうか。
携帯も置いてきてしまったし、環も彼女らに捕まってきっと探しには来れないだろう。
そもそも私がこんな事になっているなんて気付いていないかも知れない。
そんな考えが浮かんで来ると、急に視界が潤み涙が溢れて頬を伝う。
閉ざされた静かな空間には、私が啜り泣く音だけが響く。
止まらない涙に自分でも驚いていた時、廊下から聞き慣れた足音が聞こえた。
思わず垂れていた頭を上げ扉を見つめる。
カチャリと鍵が開いた扉から見えた人物は、想い待ち望んだ愛しい彼。
「唯!」
「環…!」
環は私に駆け寄りぎゅっと力強く抱き締めた。
私もそれに応える様に強く抱き締め返す。
環が来てくれた安心感からか、再び涙が溢れだした。
彼は何も言わず、私の背中を優しくあやすように叩く。
「やはりお前をひとりにするんじゃなかったな。俺とした事が…」
環は悔しそうにギリッと歯を噛み締める。
そして腕を私から放すと、携帯を取り出し誰かに電話をし始めた。
相手は藤吾先輩らしく、場所を伝えるとサッと通話を終える。
程無くしてノックの音が響き藤吾先輩が顔を覗かせた。
手には豪華なドレスを持って。
「こらまた派手にやられたなぁ…」
「すみません、折角作ってくれたのに……」
「まぁお姫さんが悪い訳やないし、今回は仕方あらへん」
「さ、唯。このドレスを着ろ」
「え?うん……?」
今の連絡の間にでも作ったのだろうか?そんなまさか。
聞くと、デザイン候補が2つあり、とりあえずどちらも作ったのだそう。
「着たけど…ちょっと派手じゃないかな?」
「やはり俺様の見立て通り、こっちの方が似合うじゃねーか」
にやりと笑いながら環は私に手を差し出した。
「ダンスホールで思いきり目立ってやろうじゃねーの。行くぜ、俺だけのプリンセス」
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「ルネの青に溺れる鳥」様よりお借りしました。
2016/03/03
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