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慣れない寮生活に女子ひとりという心細さ、分からない授業に王国民に追いかけ回される毎日。
五月病、という奴だろうか。
私は色々な事に疲れ、不安に押し潰されそうな日々を過ごしていた。
そんな毎日のなか唯一の楽しみと言えば、染谷先輩と会う事だった。
姫の世話役に指命された彼は、見た目は怖いが真面目に世話役をこなしている。
朝は部屋に来て起こしてくれるし、夜は寝るまで傍に居てくれる。
宿題で分からない箇所を聞くと、丁寧に教えてくれた事もあった。
「一条、疲れてんのか?」
今日の夜も染谷先輩が部屋に来てくれていた。
そして心配そうな声で聞いてくる。
「まぁ…いまだにちょっと、学校生活に慣れてない所もあって」
「この学院は色々他とは違うからな。その気持ちは分かる」
私はベッドに潜り込み、眠る態勢に入っている。
先輩は椅子に座り、ベッドサイドから私を見ていた。
「染谷先輩」
「なんだ?」
私は布団から自分の手を出し、先輩を見た。
「私の手、ぎゅって握ってもらっても良いですか?」
突然のお願いに、染谷先輩は少しだけ驚いた顔をする。
しかしすぐに普段の表情に戻り、私の手を先輩が大きな手で包み込んだ。
「姫の願いを聞くのが世話役らしいからな」
先輩の優しく柔らかい笑顔は、初めて見た。
「…ありがとうございます」
「ああ。おやすみ、一条」
その日は久し振りにぐっすり眠れた気がした。
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「花曇」様よりお借りしました。
2015/05/26
五月病、という奴だろうか。
私は色々な事に疲れ、不安に押し潰されそうな日々を過ごしていた。
そんな毎日のなか唯一の楽しみと言えば、染谷先輩と会う事だった。
姫の世話役に指命された彼は、見た目は怖いが真面目に世話役をこなしている。
朝は部屋に来て起こしてくれるし、夜は寝るまで傍に居てくれる。
宿題で分からない箇所を聞くと、丁寧に教えてくれた事もあった。
「一条、疲れてんのか?」
今日の夜も染谷先輩が部屋に来てくれていた。
そして心配そうな声で聞いてくる。
「まぁ…いまだにちょっと、学校生活に慣れてない所もあって」
「この学院は色々他とは違うからな。その気持ちは分かる」
私はベッドに潜り込み、眠る態勢に入っている。
先輩は椅子に座り、ベッドサイドから私を見ていた。
「染谷先輩」
「なんだ?」
私は布団から自分の手を出し、先輩を見た。
「私の手、ぎゅって握ってもらっても良いですか?」
突然のお願いに、染谷先輩は少しだけ驚いた顔をする。
しかしすぐに普段の表情に戻り、私の手を先輩が大きな手で包み込んだ。
「姫の願いを聞くのが世話役らしいからな」
先輩の優しく柔らかい笑顔は、初めて見た。
「…ありがとうございます」
「ああ。おやすみ、一条」
その日は久し振りにぐっすり眠れた気がした。
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「花曇」様よりお借りしました。
2015/05/26
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