cappuccino
主人公お名前をどうぞ
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高校生になってすぐに、遊ぶ金欲しさにバイトを始めた。
あまりしんどくなくて、お洒落で、可愛い女の子とたくさん出会えそうなところがいい。出来れば学校のやつらには会いたくないから、家の近くがいい。近所には女子大もあるし、そこで綺麗なお姉さんと恋にでも落ちたら最高だ。
そんな理由から選んだのはあまり大きくないチェーンのカフェ。週に1日3時間からOKというのも大きな魅力だった。
しばらくの間は、レジ打ちに空いた時間に食器洗いという説明を受け、俺のバイト生活は始まった。
始めて2週間。
予想通り、綺麗なお姉さんのお客さんや可愛い同世代のお客さんはたくさん来た。接客業はどうやら天職のようで、これまでのところ難無く過ごせている。
バイト先の人間関係も至って良好。
人手不足なようで、部活の後に2時間だけでいいからと頼まれることもあったけれど、悪い気はしない。
コーヒーの香りでいっぱいのお店で、のんびりとバイトをしてバイト代を貰う。時給はそんなに良くはないものの、環境を加味すると悪くない条件だった。
「いらっしゃいませ。店内ご利用でしたら先にお席を……」
「あ、わたしお客さんじゃなくて。ここでバイトしてる楪です。店長いますか?」
言われるがままに店長を呼び、楪さんはバックヤードに入っていった。
バイトの人、まだ会ったことない人いたんだな。
程なくして、楪さんと店長は出てきた。
「来週の火曜日からまたよろしく頼むよ。」
そう言って、店長は楪さんを見送った。
「店長、あの人……」
楪ねろりさん、隣の駅の大学院に通う大学院生。学生時代からここでバイトをしていて、就職活動でここ2ヶ月ほど休んでいたが、来週から復帰すると教えてくれた。
「千石くんに部活後に来てもらっていたけど、無理言ってごめんね。来週の火曜にお願いしていた部活後のシフトも、無理しなくていいから。」
綺麗な人だったなと楪さんを思い出しながらぼんやりと店長の言葉を聞いていた。
同じバイトだし、また会えるかな。
=====
帰りにいつものように廃棄直前のフードを貰い、平らげた。
「お疲れ様でした。」
高校生の帰りは大学生よりも少し早い。
まだ少し寒い中、早歩きで家を目指した。
「清純」
バイト先を出て50mほどのところで声を掛けられた。
「中学生はこの時間補導されちゃうよ?」
元カノの、メイちゃん。
本当に本当に大好きだったし、今見ても本当に本当に可愛いなと思う。
「わたしまだ納得してないの」
「一生納得しないでしょ」
部活ばかりで辛いと言って離れていったのは彼女の方だ。振られたのは俺の方。
時間がないなりに、好きだった。彼女も友達に自慢気に俺のことを話していたと風の噂で聞いた。だから、大丈夫だと思っていた。
「バイトなんてする時間あるんじゃん」
君と会ってた時間と同じくらいだよと告げても彼女は納得しなかった。
なんだかむしゃくしゃして、イライラして、
「こっち来て」
ふたりでよく行った公園のトイレに彼女を押し込んだ。
=====
「今度、清純のバイト先に遊びに行ってもいい?」
気怠いタイミングも合わさり、声を弾ませて尋ねる彼女が心から鬱陶しかった。また彼女面されてしまうだろうか。また束縛されてしまうだろうか。面倒くさい。
「ごめん、そういうのちょっと」
しょぼくれる彼女を横目に、ズボンを整え、帰り支度をする。最低だと言われても何も言い返せない。俺は最低である。自覚している。
これでいいんだ。彼女も嬉しそうにしていた。気持ちよさそうにもしていた。ウソの好きも愛しているも言っていない。
変な期待を持たせても仕方ない。これで彼女も俺を最低だと思ってくれればいい。ビンタの一発くらいなら喜んで受けよう。それでおしまい。
「遅いから気をつけて帰るんだよ。」
じゃあ、とその場を後にしようとすると、抱き締められた。やめてよ、そういうの、面倒臭い。という言葉を飲み込んだ。どこまで八方美人なんだろうか、俺は。
「俺、別れた時と変わらず時間取ってあげられないからさ。同じこと怒られ続けるの嫌なんだよね。メイちゃん、きっと前みたいにもっとわたしに時間使ってよってヒステリックになるでしょ。お互いに良くないよ。」
じゃあ、と回された手を解いてその場を後にした。これでおしまい。本当におしまいだ。
涙する彼女を目にすると、また俺の中の八方美人が疼くことが容易に想像できたので振り返らない。さようなら。
あまりしんどくなくて、お洒落で、可愛い女の子とたくさん出会えそうなところがいい。出来れば学校のやつらには会いたくないから、家の近くがいい。近所には女子大もあるし、そこで綺麗なお姉さんと恋にでも落ちたら最高だ。
そんな理由から選んだのはあまり大きくないチェーンのカフェ。週に1日3時間からOKというのも大きな魅力だった。
しばらくの間は、レジ打ちに空いた時間に食器洗いという説明を受け、俺のバイト生活は始まった。
始めて2週間。
予想通り、綺麗なお姉さんのお客さんや可愛い同世代のお客さんはたくさん来た。接客業はどうやら天職のようで、これまでのところ難無く過ごせている。
バイト先の人間関係も至って良好。
人手不足なようで、部活の後に2時間だけでいいからと頼まれることもあったけれど、悪い気はしない。
コーヒーの香りでいっぱいのお店で、のんびりとバイトをしてバイト代を貰う。時給はそんなに良くはないものの、環境を加味すると悪くない条件だった。
「いらっしゃいませ。店内ご利用でしたら先にお席を……」
「あ、わたしお客さんじゃなくて。ここでバイトしてる楪です。店長いますか?」
言われるがままに店長を呼び、楪さんはバックヤードに入っていった。
バイトの人、まだ会ったことない人いたんだな。
程なくして、楪さんと店長は出てきた。
「来週の火曜日からまたよろしく頼むよ。」
そう言って、店長は楪さんを見送った。
「店長、あの人……」
楪ねろりさん、隣の駅の大学院に通う大学院生。学生時代からここでバイトをしていて、就職活動でここ2ヶ月ほど休んでいたが、来週から復帰すると教えてくれた。
「千石くんに部活後に来てもらっていたけど、無理言ってごめんね。来週の火曜にお願いしていた部活後のシフトも、無理しなくていいから。」
綺麗な人だったなと楪さんを思い出しながらぼんやりと店長の言葉を聞いていた。
同じバイトだし、また会えるかな。
=====
帰りにいつものように廃棄直前のフードを貰い、平らげた。
「お疲れ様でした。」
高校生の帰りは大学生よりも少し早い。
まだ少し寒い中、早歩きで家を目指した。
「清純」
バイト先を出て50mほどのところで声を掛けられた。
「中学生はこの時間補導されちゃうよ?」
元カノの、メイちゃん。
本当に本当に大好きだったし、今見ても本当に本当に可愛いなと思う。
「わたしまだ納得してないの」
「一生納得しないでしょ」
部活ばかりで辛いと言って離れていったのは彼女の方だ。振られたのは俺の方。
時間がないなりに、好きだった。彼女も友達に自慢気に俺のことを話していたと風の噂で聞いた。だから、大丈夫だと思っていた。
「バイトなんてする時間あるんじゃん」
君と会ってた時間と同じくらいだよと告げても彼女は納得しなかった。
なんだかむしゃくしゃして、イライラして、
「こっち来て」
ふたりでよく行った公園のトイレに彼女を押し込んだ。
=====
「今度、清純のバイト先に遊びに行ってもいい?」
気怠いタイミングも合わさり、声を弾ませて尋ねる彼女が心から鬱陶しかった。また彼女面されてしまうだろうか。また束縛されてしまうだろうか。面倒くさい。
「ごめん、そういうのちょっと」
しょぼくれる彼女を横目に、ズボンを整え、帰り支度をする。最低だと言われても何も言い返せない。俺は最低である。自覚している。
これでいいんだ。彼女も嬉しそうにしていた。気持ちよさそうにもしていた。ウソの好きも愛しているも言っていない。
変な期待を持たせても仕方ない。これで彼女も俺を最低だと思ってくれればいい。ビンタの一発くらいなら喜んで受けよう。それでおしまい。
「遅いから気をつけて帰るんだよ。」
じゃあ、とその場を後にしようとすると、抱き締められた。やめてよ、そういうの、面倒臭い。という言葉を飲み込んだ。どこまで八方美人なんだろうか、俺は。
「俺、別れた時と変わらず時間取ってあげられないからさ。同じこと怒られ続けるの嫌なんだよね。メイちゃん、きっと前みたいにもっとわたしに時間使ってよってヒステリックになるでしょ。お互いに良くないよ。」
じゃあ、と回された手を解いてその場を後にした。これでおしまい。本当におしまいだ。
涙する彼女を目にすると、また俺の中の八方美人が疼くことが容易に想像できたので振り返らない。さようなら。
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