また、夕食時に
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気がつけば私は井桁模様の忍び装束に身を包み、ぼーっと空を見上げていた。
「おーい!」という背後からの知らない声が私に向けたものだと確信しているのは、それは夢だから。
振り向けば、井桁模様の忍び装束を着た三人組の男の子がにこにこと立っていた。
眼鏡をかけた男の子が私の手を掴んだ。
「ほら、みんな待ってるから!」
ああ、そうだ。
みんなとドッジボールをするって約束したっけと突然に私は思い出す。
「早くドッジボールやろうぜ」
「はやくはやく~」
首に黒いマフラーを巻いた吊り目の男の子と、ふくよかな男の子も私の背中を押してきた。
「うん、分かった。分かったから、押さないでよ」
「お前達、遊ぶのはいいが宿題はやったのか?」
春の晴れた昼下がりに影が差す。
黒装束の背の高い男の人だった。
目が合えば微笑まれ、私の中に名前の知らない温かな感情が生まれた。
「「「そのうちやりまーす」」」
間延びした三人組の返事に、先生は漫画のように思いっきりずっこけた。
「その返事は絶対にやらんな!?やらんのだろう?!」
私は我慢できずにくすくすと笑えば、三人組は不思議そうに、背の高い男の人は困ったように私を見つめていた。
「全くお前達は……」
その時、ふくよかな子がくしゃみをした。
するととんでもない量の鼻水がとんでもない勢いで彼の小さな鼻の穴から噴射された。
驚いているのは私だけで、眼鏡の子もマフラーを巻いている子も呆れ顔で見ていた。
彼は勢いよく出た鼻水を勢いよく吸い込みだすので私は更に驚くが、背の高い男の人は慌てて彼の前に屈む。
「ほらほら戻すんじゃない。鼻をかみなさいといつも言っているだろう」
懐からハンカチサイズの布を取り出し、ふくよかなこの子の鼻にそれをあてがえば、男の子はズビビビと威勢のいい音を立てて鼻をかんだ。
「全く……夕飯までには切り上げるんだぞ?」
鼻水を含んだ布を躊躇いなく懐に戻した男の人は、困ったように微笑む。
「「「はーい」」」
手を上げて返事をする三人組だけれど、私だけ返事が出来なかった。
名前の知らないこの気持ちに支配され、声を発することができなかったのだ。
男の人は手に腰をあてて和やかな表情で私の返事を待っていた。
「はい……っ」
慌てて手を挙げながら返事をする。
「よし!」
満足そうに頷いた男の人は去って行く。
私はその人の背中から視線をそらすことが出来なかった。
「ほら!行こうぜ!」
「みんな待ってる」
「う、うん!」
三人が私の手を引くので、走り出す。
温かで、それでいて寂しさも混じった、甘くて苦い気持ち……この気持ちは何だろう。
「げっ!」
その時、吊り目の子は急ブレーキをかけたように止まりだしたから、私はその子の背中に鼻をぶつけてしまった。
「どしたのきりちゃん…………げっ!」
「わあぁぁ」
眼鏡の子も、ふくよかな子も、吊り目の子の「げっ!」の理由が分かったらしい。
彼等の視線は前方からこちらに向かって歩いてくる、紫色の忍び装束の人を見ていた。
「か、かかか隠れろ!」
あたふたする彼等だが、
「おやおや、これは一年生の忍たま諸君」
初めて会うけれど、声と態度で分かる。
この人はきっと自信家で、自惚屋だと。
「どうしたのかね。教科、実技共に学年一優秀で、戦輪の腕にかけては忍術学園一、四年い組のこの平滝夜叉丸に何かご用かな?」
サラサラと垂れている前髪を振り払う滝夜叉丸という男の人の傍を私達は急いで走り抜ける。
「何でもありませーーん!」
「ぼくたち急いでいるのでーー!」
「ではではーー!!」
走り抜けたにも関わらず、滝夜叉丸先輩は後ろの方でぐだぐだと一人で延々と話していたのだった。
そんな不思議な夢だった。