黎明を走って
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朝になりかけの刻。
金色の月が主張する濃紺の空のもと、音を立てずに障子戸を開けて、外廊下から外に降りる。
教員長屋の入口には、墨を垂らした闇がただ広がり、静寂が敷き詰められているのみだった。
自分が選んだことだ。
それでも毎朝僅かな期待を抱いている自分の愚かさに呆れを通り越して笑いがこみ上げてくる。
懐中時計の文字盤は、8の文字が消えていた。
残された時間の少なさを見せつけられ、どうしようもない焦燥感に駆られる。
忍術学園の皆。
杭瀬村の皆。
もっと話したい。
もっと知りたい。
もっと役に立ちたい。
たった一人に心を囚われている場合ではないのだ。
そう毎朝言い聞かせる。
今日の午後はくノ一教室の授業を見学し、その後は交流会という名の女子会を行う。
忍たま達が夕食手伝いの日だから、たっぷりと話せる。
話題は恐らく恋の話が八割、いや九割だろうか。
今日は穴に落ちること無く無事に食堂まで辿り着けた奇跡に感動しつつ、勝手口から厨房に入る。
「おはようございます!」
「おはよう朱美ちゃん!」
腹から声を出せば、おばちゃんも元気な挨拶を返してくれた。