黎明を走って
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「土井先生のことが……好き、です」
返ってきたのは沈黙だった。
土井先生は目を閉じた。
開け放たれた窓から注がれる月光に照らされた先生の顔は、凛々しくて、心臓が破れそうだった。
数秒の間が永遠のように感じる。
だから肩に手を置かれた時、血が沸騰しそうなほど、顔に熱がこもる。
「ありがとう」
それは月の光よりも優しくて寂しい笑顔だった。
「でも、その気持ちには応えられないよ」
優しい笑顔から紡がれた言葉は私を暗闇へと誘う。
目の前が真っ暗になった、という表現はこういうことなのだなと、他人事のように感じた。
胸から響く心臓の音も他人のもののように思え、肺は勝手に酸素を欲しがって私に呼吸をさせる。
「……」
私は何て言ったのだろう。
よく覚えていない。
きり丸くんとの約束があるから、アルバイトは手伝うとか、そんな事を言った気がする。
教室を出て、暗闇の中を私はのろのろと歩く。
失恋すれば涙が流れると思っていた。
失恋。
少女漫画で読んだ、好きな人に振られてしまうやつだ。
泣いて泣いて、そこからどうなるんだっけ?
他の誰かが都合良く声をかけて別の恋物語が始まったり、夢を見つけてそこに向かって努力したり。
そんな風だった気がする。
もう、この想いは持っていても何もならない。
土井先生が好き。
ようやく向き合えたあまりにも大きな想い。
決死の思いでぶつけた気持ちは、今眼前に敷き詰められた闇の如く、無になったのだ。