忍者夢短編
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お団子ハート
今日はバレンタインデー。
元の世界では今頃友達と友チョコの買い物と本命のために誰かの家でチョコを作っていることだろう。
朱美は、自分の世界に思いを馳せた。
いつも朱美は、友達と叔父家族達にあげていた。
みんな好きな人にあげていたけど、大切な人達に感謝を伝える日なんだから。
友達の浮ついた空気のなか、私はそんな捻くれた思いを密かに抱えていた。
半分本音であったが、好きな異性など思う余裕などなかったことへの妬みがもう半分だ。
チョコレートって室町時代にはまだ伝来してなかったような…ということはこの世界にも無いだろう。
たぶん。
そもそもバレンタインデーという文化もないだろう。
それでも、みんなに感謝を伝えたい。
チョコはあげられないけど。
材料の揃えやすさと、量産のしやすさを考えると、お団子…だろうか。
学園長と食堂のおばちゃんにバレンタインデーの趣旨を伝え、材料を揃えて、おばちゃんと一緒に作った。
お昼のデザートとして出すつもりだ。
お昼時。皆の喜ぶ顔が嬉しい。
定食のお盆を渡したとき、皆の顔がぱっと明るくなる。
しんべヱ君にいたってはお代わりを所望していた。
「あら、朱美ちゃん。来たわよ」
食器洗いをしていると、おばちゃんが耳打ちする。
私は振り返ると、カウンター越しに土井先生がいることに気がついた。
「ばれんたいんでぇって、好きな人に渡す日でもあるんでしょ?」
満面の笑みで私の背中をバシバシ叩く。
「ほら、朱美ちゃんが渡さなきゃ」
おばちゃんに押し出され、私はカウンター越しの土井先生と目が合った。
「朱美さん。A定食お願いします」
「はい」
私はA定食に、今日だけの小鉢を乗せる。
「おや。これは?」
「私の世界では、今日はバレンタインデーという日なんです。大切な人やお世話になった人に、贈り物をする日なんですよ」
先生の前に立った途端に心臓は煩く鳴りだす。私に向けてくれる柔らかい微笑みが、更に加速させる。
「そうなんですね。いやぁ、ありがとうございます」
頭を搔く先生が少し照れているように見えるのは、きっと私の願望だ。
「おや、土井先生のお団子。猪目形をしていますな」
隣の山田先生の指摘に私は鼓動が更に速くなる。
土井先生は山田先生の小鉢と見比べ、本当ですね、と声を上げた。
「何か良いことがあるかもしれませんね」
そう言って土井先生は笑う。
土井先生のだけ、ハート型に整えたお団子。
そんな些細な私の出来心。
山田先生から猪目型と指摘されてドキリとした。
この時代に、この形に名前があるとは知らなかった。幸運の象徴なのだと、食堂のおばちゃんが後で教えてくれた。
土井先生は猪目型のお団子を見て、一瞬だけ目を細め、パクリと一口で食べた。
今日はバレンタインデー。
元の世界では今頃友達と友チョコの買い物と本命のために誰かの家でチョコを作っていることだろう。
朱美は、自分の世界に思いを馳せた。
いつも朱美は、友達と叔父家族達にあげていた。
みんな好きな人にあげていたけど、大切な人達に感謝を伝える日なんだから。
友達の浮ついた空気のなか、私はそんな捻くれた思いを密かに抱えていた。
半分本音であったが、好きな異性など思う余裕などなかったことへの妬みがもう半分だ。
チョコレートって室町時代にはまだ伝来してなかったような…ということはこの世界にも無いだろう。
たぶん。
そもそもバレンタインデーという文化もないだろう。
それでも、みんなに感謝を伝えたい。
チョコはあげられないけど。
材料の揃えやすさと、量産のしやすさを考えると、お団子…だろうか。
学園長と食堂のおばちゃんにバレンタインデーの趣旨を伝え、材料を揃えて、おばちゃんと一緒に作った。
お昼のデザートとして出すつもりだ。
お昼時。皆の喜ぶ顔が嬉しい。
定食のお盆を渡したとき、皆の顔がぱっと明るくなる。
しんべヱ君にいたってはお代わりを所望していた。
「あら、朱美ちゃん。来たわよ」
食器洗いをしていると、おばちゃんが耳打ちする。
私は振り返ると、カウンター越しに土井先生がいることに気がついた。
「ばれんたいんでぇって、好きな人に渡す日でもあるんでしょ?」
満面の笑みで私の背中をバシバシ叩く。
「ほら、朱美ちゃんが渡さなきゃ」
おばちゃんに押し出され、私はカウンター越しの土井先生と目が合った。
「朱美さん。A定食お願いします」
「はい」
私はA定食に、今日だけの小鉢を乗せる。
「おや。これは?」
「私の世界では、今日はバレンタインデーという日なんです。大切な人やお世話になった人に、贈り物をする日なんですよ」
先生の前に立った途端に心臓は煩く鳴りだす。私に向けてくれる柔らかい微笑みが、更に加速させる。
「そうなんですね。いやぁ、ありがとうございます」
頭を搔く先生が少し照れているように見えるのは、きっと私の願望だ。
「おや、土井先生のお団子。猪目形をしていますな」
隣の山田先生の指摘に私は鼓動が更に速くなる。
土井先生は山田先生の小鉢と見比べ、本当ですね、と声を上げた。
「何か良いことがあるかもしれませんね」
そう言って土井先生は笑う。
土井先生のだけ、ハート型に整えたお団子。
そんな些細な私の出来心。
山田先生から猪目型と指摘されてドキリとした。
この時代に、この形に名前があるとは知らなかった。幸運の象徴なのだと、食堂のおばちゃんが後で教えてくれた。
土井先生は猪目型のお団子を見て、一瞬だけ目を細め、パクリと一口で食べた。