鬼の手短編
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遠くて近い春
今日は一際寒い。
学校の帰り道、隣を歩く鵺野先生は秋口から着ているペラッペラなジャケットの襟を立て、ぶるぶると震えていた。
私たちの間を、北風が音を立てて吹き抜ける。あまりの冷たさに耳が痛くなるほどだ。
人通りの少ない夜の道を、私たちは寒い寒いと言い合いながら帰っている。
「へーっくしょい!」
鵺野先生は、何とも豪快なくしゃみを放った。
「大丈夫ですか?」
代謝のいい鵺野先生は、寒さに強いイメージがあったし、昨日も寒かったけれどケロリとしていた。しかし今日の寒さはどうも駄目みたいだ。
「ええ!ぜぜぜ全然へっちゃ…ら…っっくしょい!」
震えながら笑っていても説得力はゼロである。おまけにくしゃみをもう一発放つ鵺野先生。
このままではさすがの鵺野先生も風邪を引いてしまうだろう。
「あ!」
街灯に照らされ、ぽつんと佇む自動販売機に私は声をあげる。
ICカードを片手に私は小走りして、二人分のお汁粉を買って、鵺野先生に見せれば、目を輝かせて早足で私の元へとやってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます!!」
駅までもう少し。
これで乗り切りたい。
プルトップを引き上げ、優しい甘さと温かさに私たちはホッと息をつく。
「く~、生き返る~!」
まるでビールを飲んだ時の感想を言う鵺野先生。でもそう言いたくなる気持ちは分からなくもない。
しかしまたしても吹き抜ける北風に、束の間の温もりはあっという間に消え去ってしまう。
「さむっ」
私は缶を握り締めたが温もりは心許ない。
「そうだ!」
鵺野先生はそう言って立ち止まり、缶をスラックスの後ろのポケットへと中身が溢れぬようにしまうと、私の両頬は確かな温もりに包まれる。
鵺野先生の両手が私の頬を包んだのだ。
「暖かいですか?道明先生」
彼の太い眉は下がって少し困ったように笑う先生の頬は、確かに赤かった。
「………はい」
私も片手を先生の頬に添える。
先生の冷たい頬がじんわりと指先に伝わる。
「鵺野先生も暖かいですか?」
真っ赤になった鵺野先生に尋ねれば、彼は何度も頷く。
「ええ!ええ!そりゃあもう!熱いくらい!!」
私も、先生から分けられた熱以上に、今、頬が熱い。
今日は一際寒い。
学校の帰り道、隣を歩く鵺野先生は秋口から着ているペラッペラなジャケットの襟を立て、ぶるぶると震えていた。
私たちの間を、北風が音を立てて吹き抜ける。あまりの冷たさに耳が痛くなるほどだ。
人通りの少ない夜の道を、私たちは寒い寒いと言い合いながら帰っている。
「へーっくしょい!」
鵺野先生は、何とも豪快なくしゃみを放った。
「大丈夫ですか?」
代謝のいい鵺野先生は、寒さに強いイメージがあったし、昨日も寒かったけれどケロリとしていた。しかし今日の寒さはどうも駄目みたいだ。
「ええ!ぜぜぜ全然へっちゃ…ら…っっくしょい!」
震えながら笑っていても説得力はゼロである。おまけにくしゃみをもう一発放つ鵺野先生。
このままではさすがの鵺野先生も風邪を引いてしまうだろう。
「あ!」
街灯に照らされ、ぽつんと佇む自動販売機に私は声をあげる。
ICカードを片手に私は小走りして、二人分のお汁粉を買って、鵺野先生に見せれば、目を輝かせて早足で私の元へとやってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます!!」
駅までもう少し。
これで乗り切りたい。
プルトップを引き上げ、優しい甘さと温かさに私たちはホッと息をつく。
「く~、生き返る~!」
まるでビールを飲んだ時の感想を言う鵺野先生。でもそう言いたくなる気持ちは分からなくもない。
しかしまたしても吹き抜ける北風に、束の間の温もりはあっという間に消え去ってしまう。
「さむっ」
私は缶を握り締めたが温もりは心許ない。
「そうだ!」
鵺野先生はそう言って立ち止まり、缶をスラックスの後ろのポケットへと中身が溢れぬようにしまうと、私の両頬は確かな温もりに包まれる。
鵺野先生の両手が私の頬を包んだのだ。
「暖かいですか?道明先生」
彼の太い眉は下がって少し困ったように笑う先生の頬は、確かに赤かった。
「………はい」
私も片手を先生の頬に添える。
先生の冷たい頬がじんわりと指先に伝わる。
「鵺野先生も暖かいですか?」
真っ赤になった鵺野先生に尋ねれば、彼は何度も頷く。
「ええ!ええ!そりゃあもう!熱いくらい!!」
私も、先生から分けられた熱以上に、今、頬が熱い。