EX.ある昼下がり
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その日も忍術学園の学園長である大川平次渦正は退屈していた。
誰も自分の話など聞いてくれない。
お茶飲み友達もガールフレンドも都合が付かない。
実につまらない。
今日幾度目の溜息を付いた。
こんな時、天才的な思いつきが湧いてくるものなのに、思いつかない。
病気だ。
病気に違いない。
そう叫ぶと、ヘムヘムは呆れかえっていたが、自分の体は自分が一番良く分かっている。
とにかく病気に違いない。
医務室で寝かせてもらおう。
そう思い立ったところ、小松田がドタドタと足音をたてながら血相を変えて庵に来た。
何事かと尋ねれば、先程彼が見聞きしたことを耳打ちされる。
元天才忍者の顔は、ぱっと輝いた。
その一刻後、緊急集会を告げる半鐘が鳴り響く。
何だ何だと集まる教師と生徒達。
朝礼台の上には、ここ最近、いや、ここ数年で一番の笑顔の学園長。
まさか、また、突然の思い付きか。
その表情からして、一体感どんな面倒な事を思いついたのやら。
教師達はそっと溜息を付いた。
「えー、皆の者、よく集まった。皆を呼んだのは他でもない!今日から、新しい事務員さんが来ることになったのじゃ」
出茂鹿之助か?
一同はそう思い、ちらりと小松田を見た。
小松田の表情は固い。
いや、口がムズムズしている。
何かを堪えている様子だった。
「では紹介しんぜよう!」
学園長は声を張り上げた。
校舎の裏から誰かが歩いてくる。
皆、目を丸くする。
見たこともない上等の生地と春の花々を思わせる上品な色合いの服。艶やかな髪が歩く度に揺れる。
彼女が傍を通れば、花の香りがした。
見たこともない履物は朝礼台の階段を昇る時、コツコツと音を立てた。
自信に満ちあふれた笑みを湛え、その者は朝礼台の上に立ち、礼をする。
ゆっくりとだが、その所作は無駄がない。
そんな。
まさか。
「再び異世界から来た食堂のお手伝い兼事務員兼その他雑用係の伊瀬階朱美です。よろしくお願いします」
その手には、懐中時計が握られていた。
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