忍者夢短編
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02 コーポウズマサ 雨宿り編
ある時、とある地方の大地主・大川平次渦正氏が、その広大な土地に大川平次渦正学園を作り上げた。初等部から大学院まで設立され、敷地内はまるで1つの都市のようだ。
そんな学園の東門の前に建つコーポウズマサの101号室に私は住んでいる。
ここに住んでいると、渦正学園の生徒達の様々な姿が見られる。
突然の豪雨で外が騒がしい。
それはアスファルトを叩く雨音だけではない、無邪気な子どもの声も混じっている。
ドアを少し開けて様子を窺うと…
アパートの前で制服姿の三人の子どもがゲラゲラ笑い合ってる。
おそらく、ゲリラ豪雨で瞬く間にびしょ濡れになったことに笑い合っているのだろう。
「あ、あんた達早く入りなさい!風邪引いちゃうでしょ!」
ーーー
「おねーさん、ありがとうございます」
お風呂に入れさせて、服を洗濯している間、三人の子ども達が今日体育で使ったであろう体操服に着替えさせた。
1Kのこの部屋は今とても狭い。
出したお菓子とジュースは、あっという間に無くなったが、今はゲームに夢中だ。
安アパートに似つかわしくない、大型液晶テレビと数台のゲーム機。それを発見した三人は、お菓子を食べている間もチラチラと見ていて、私は思わず笑ってしまった。
「服が乾くまで時間かかるから、好きなゲームやってていいよ」
というと、三人は大はしゃぎした。
「あ、きりちゃんズルい!」
「ズルくねぇよ。さっさと取らなかった乱太郎が悪い」
「あ、僕落っこちちゃった」
コントローラーをカチャカチャしながら騒ぐ三人の背中は、見ていて楽しい。
コーヒーを飲みながらその背中を見ていると、
「お姉さんも一緒にやろうよ」
三人の中で一番背の低い子がコントローラーを渡してきた。
「私強いよ?手加減しないからねー」
「ほんと?」
「お姉さん大人気なーい」
宣言どおり大人気なく持ちキャラを選択して、完膚なきまでに叩きのめすと、三人は呆れながら笑って「「「大人気なーい」」」と声を揃えた。
対戦ゲームから、協力して遊ぶアクションゲームに変えて遊んでいると、洗濯機の乾燥が完了したメロディが鳴った。
それは、楽しい時間の終わりを告げる音だ。
閉めていたカーテンを上げれば、すっかり雨は上がり、夕陽が眩しい。
「さて、早く着替えて帰りなさいね?」
「「はーい」」
眼鏡の子と背の低い子は返事をしていたが、一番背の高い子はスマホをいじっている。
どこで手に入れたのか知らないけど、昔の硬貨の柄がプリントされたスマホケースが目に付いた。
「どしたのきりちゃん」
「んー、土井先生がこっち来るみたい」
「へー」
先生!?
吞気な調子で会話している三人を余所に私は一人で狼狽えた。
ていうか先生と連絡取ってるの?
何で先生と気楽にメッセージ送り合ってんの!?
今更だけど、このご時世、勝手に子どもを家に上げたのはヤバいんじゃ…。
そしてこの子達も、知らない人の家にあがったことがバレて怒られてしまう。
「せ、先生来ちゃうの!?どどどうして?」
「お姉さん、声裏返ってるよ。大丈夫?」
既に三人は着替えを済ませ、いつでも出られる格好であった。
ピンポーン
と、インターホンが鳴る。
私は恐る恐るドアスコープを覗くと、そこには私とさほど年が変わらない男性がスーツ姿で真顔で立っている。
チェーンは外さずにドアを開けた。
スコープ越しでは分からなかったが、その男性は背が高く、真顔で立たれると、威圧感があった。
ドアが開いたと分かると、その男性は眉尻を下げて、何度も頭を下げた。
「すみません。私、大川平次渦正学園初等部3年は組の担任の土井と申します。この度はウチの生徒がご迷惑をおかけしまして大変申し訳ございません」
ひたすら頭を下げる土井さん。
私は慌ててチェーンを外した。
「いえいえ。こちらこそ、生徒さんを勝手に預かってしまって。どうぞ、中へ」
「いえいえ、ここで結構です」
近くで見ると、先生は端整な顔立ちをしているが、髪の毛は痛みきってて、前髪が少し跳ねてしまっている。そのアンバランスさが親近感を引き出していた。
「あ、土井先生~!!」
ランドセルを背負い、ドタドタと玄関まで走ってくる三人組。よく見なくても、三人の口元にはチョコやスナック菓子の屑が付いていて、いかにも寛いでいました感が漂っている。
三人の顔を見るなり、土井先生は呆れて溜息をついた。
「本当にご迷惑をおかけして…」
「いえ!私は大丈夫です。むしろ私の方こそ……」
「先生。お姉さん、ゲームすごく強かったんだよ」
「大人気無いくらい」
「きりちゃん、何回も吹っ飛ばされてたもんね」
大人の会話などお構いなしに、三人は先生に先ほどまでの事を矢継ぎ早に話し始める。
先生は額に手を当てた。
「お前達……ゲームまでやってたのか…」
「「「楽しかったでーす」」」
満面の笑みで答える三人に、先生は肩をがくりと落とした。
「では…本当に……お騒がせしました…」
「あのお気になさらずに」
先生は終始頭を下げっぱなしだった、
「「「またねー」」」
「またねじゃない!」
三人の挨拶にすかさず先生は突っ込みを入れた。まるで息の合ったコントのようで、私は笑ってしまった。
私は手を振って四人の背中を見送った。
眼鏡の子と背の小さな子は、駅の方へ向かい、先生と背の高い子は学園の中へ戻っていった。
確か寮があったから、あの子は寮生なのかもしれない。
先生は、呆れながらも男の子の話を聞いてあげている。でもその眼差しは、とても優しくて、生徒達のことを大切に思っている教師なのだと伝わってくる。
ふと、先生は振り返り目が合った。
私は目が合うとは思わなかったから、曖昧な笑みを浮かべると、先生は柔らかい笑みと共に頭を下げた。
夕陽に照らされた先生の笑顔に、胸が震えたのだった。
ある時、とある地方の大地主・大川平次渦正氏が、その広大な土地に大川平次渦正学園を作り上げた。初等部から大学院まで設立され、敷地内はまるで1つの都市のようだ。
そんな学園の東門の前に建つコーポウズマサの101号室に私は住んでいる。
ここに住んでいると、渦正学園の生徒達の様々な姿が見られる。
突然の豪雨で外が騒がしい。
それはアスファルトを叩く雨音だけではない、無邪気な子どもの声も混じっている。
ドアを少し開けて様子を窺うと…
アパートの前で制服姿の三人の子どもがゲラゲラ笑い合ってる。
おそらく、ゲリラ豪雨で瞬く間にびしょ濡れになったことに笑い合っているのだろう。
「あ、あんた達早く入りなさい!風邪引いちゃうでしょ!」
ーーー
「おねーさん、ありがとうございます」
お風呂に入れさせて、服を洗濯している間、三人の子ども達が今日体育で使ったであろう体操服に着替えさせた。
1Kのこの部屋は今とても狭い。
出したお菓子とジュースは、あっという間に無くなったが、今はゲームに夢中だ。
安アパートに似つかわしくない、大型液晶テレビと数台のゲーム機。それを発見した三人は、お菓子を食べている間もチラチラと見ていて、私は思わず笑ってしまった。
「服が乾くまで時間かかるから、好きなゲームやってていいよ」
というと、三人は大はしゃぎした。
「あ、きりちゃんズルい!」
「ズルくねぇよ。さっさと取らなかった乱太郎が悪い」
「あ、僕落っこちちゃった」
コントローラーをカチャカチャしながら騒ぐ三人の背中は、見ていて楽しい。
コーヒーを飲みながらその背中を見ていると、
「お姉さんも一緒にやろうよ」
三人の中で一番背の低い子がコントローラーを渡してきた。
「私強いよ?手加減しないからねー」
「ほんと?」
「お姉さん大人気なーい」
宣言どおり大人気なく持ちキャラを選択して、完膚なきまでに叩きのめすと、三人は呆れながら笑って「「「大人気なーい」」」と声を揃えた。
対戦ゲームから、協力して遊ぶアクションゲームに変えて遊んでいると、洗濯機の乾燥が完了したメロディが鳴った。
それは、楽しい時間の終わりを告げる音だ。
閉めていたカーテンを上げれば、すっかり雨は上がり、夕陽が眩しい。
「さて、早く着替えて帰りなさいね?」
「「はーい」」
眼鏡の子と背の低い子は返事をしていたが、一番背の高い子はスマホをいじっている。
どこで手に入れたのか知らないけど、昔の硬貨の柄がプリントされたスマホケースが目に付いた。
「どしたのきりちゃん」
「んー、土井先生がこっち来るみたい」
「へー」
先生!?
吞気な調子で会話している三人を余所に私は一人で狼狽えた。
ていうか先生と連絡取ってるの?
何で先生と気楽にメッセージ送り合ってんの!?
今更だけど、このご時世、勝手に子どもを家に上げたのはヤバいんじゃ…。
そしてこの子達も、知らない人の家にあがったことがバレて怒られてしまう。
「せ、先生来ちゃうの!?どどどうして?」
「お姉さん、声裏返ってるよ。大丈夫?」
既に三人は着替えを済ませ、いつでも出られる格好であった。
ピンポーン
と、インターホンが鳴る。
私は恐る恐るドアスコープを覗くと、そこには私とさほど年が変わらない男性がスーツ姿で真顔で立っている。
チェーンは外さずにドアを開けた。
スコープ越しでは分からなかったが、その男性は背が高く、真顔で立たれると、威圧感があった。
ドアが開いたと分かると、その男性は眉尻を下げて、何度も頭を下げた。
「すみません。私、大川平次渦正学園初等部3年は組の担任の土井と申します。この度はウチの生徒がご迷惑をおかけしまして大変申し訳ございません」
ひたすら頭を下げる土井さん。
私は慌ててチェーンを外した。
「いえいえ。こちらこそ、生徒さんを勝手に預かってしまって。どうぞ、中へ」
「いえいえ、ここで結構です」
近くで見ると、先生は端整な顔立ちをしているが、髪の毛は痛みきってて、前髪が少し跳ねてしまっている。そのアンバランスさが親近感を引き出していた。
「あ、土井先生~!!」
ランドセルを背負い、ドタドタと玄関まで走ってくる三人組。よく見なくても、三人の口元にはチョコやスナック菓子の屑が付いていて、いかにも寛いでいました感が漂っている。
三人の顔を見るなり、土井先生は呆れて溜息をついた。
「本当にご迷惑をおかけして…」
「いえ!私は大丈夫です。むしろ私の方こそ……」
「先生。お姉さん、ゲームすごく強かったんだよ」
「大人気無いくらい」
「きりちゃん、何回も吹っ飛ばされてたもんね」
大人の会話などお構いなしに、三人は先生に先ほどまでの事を矢継ぎ早に話し始める。
先生は額に手を当てた。
「お前達……ゲームまでやってたのか…」
「「「楽しかったでーす」」」
満面の笑みで答える三人に、先生は肩をがくりと落とした。
「では…本当に……お騒がせしました…」
「あのお気になさらずに」
先生は終始頭を下げっぱなしだった、
「「「またねー」」」
「またねじゃない!」
三人の挨拶にすかさず先生は突っ込みを入れた。まるで息の合ったコントのようで、私は笑ってしまった。
私は手を振って四人の背中を見送った。
眼鏡の子と背の小さな子は、駅の方へ向かい、先生と背の高い子は学園の中へ戻っていった。
確か寮があったから、あの子は寮生なのかもしれない。
先生は、呆れながらも男の子の話を聞いてあげている。でもその眼差しは、とても優しくて、生徒達のことを大切に思っている教師なのだと伝わってくる。
ふと、先生は振り返り目が合った。
私は目が合うとは思わなかったから、曖昧な笑みを浮かべると、先生は柔らかい笑みと共に頭を下げた。
夕陽に照らされた先生の笑顔に、胸が震えたのだった。