夏の朝は忙しない
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目が醒めた。
鳥の声が聞こえていて、隣を見ればきり丸くんがすやすやと眠っている。
無邪気な寝顔に私は幸せな気持ちになる。
そのきり丸くんの隣には………
土井先生も眠っている。
その寝顔に、寝起きの頭は一気に覚醒する。
大きな瞳は閉じられて、髪は下ろしていて、寝間着で………いつもと違う土井先生だ。
この人が、私の恋人。
今日から夏休みだ。
両想いとなった私達は、夏休みの間、土井先生ときり丸くんの家で過ごすことになったのだ。
……両想いからのいきなり同棲って、結構凄い。
きり丸くんがいるから二人きりではないけど、この川の字で寝る絵面はもう恋人ではなく、家族で………。
一層ドキドキしてくる。
朝っぱらからこんなに心臓を働かせて大丈夫だろうか。
と、とにかく起きよう。
夏休みの間、ここに住まわせてもらう以上、役に立たなくては。
まずは朝ご飯を作ろう。
足音を立てぬよう、炭櫃のある部屋へと移動した。
「ふう」
土間へ降りて一息。
起こしてしまっては悪いなと思っていたから、こうやって一人で朝食を作れそうで良かった。
さて何を作ろう。
「おはよう、朱美」
「………!!」
背後からの抱擁と優しい声。
ふわりと優しい匂いと温もりが私を包む。
「ど、………土井先生………」
きっと私が起きたことなど気づいていて、私に気づかれずに背後に忍び寄ったのだろう。
首を捻り、彼を見れば少し不機嫌そうにジト目で私を見つめていた。
「名前で呼ぶようにとあれほど言ったじゃないか…」
「………」
「ほら。言って?」
腕を解いて向かい合うように私を向き直させる土井先生。
私の視界には、胸元まではだけた寝間着と傷んだ髪を下ろしている土井先生がじっと私を見つめている、という光景が広がっていて。
もう、刺激が強すぎて心臓に悪い。
耳が熱い。
それでいて彼の名前を呼ぶなんて、口から心臓が出てしまうのではないだろうか。
「は……、んすけ…さん」
「真っ赤だ………」
いっぱいいっぱいな私をクスクスと笑う土井先生が恨めしい。
「改めて、おはよう。朱美」
「おはよう………ござい、ます。ど……半助、さん」
ぎゅっと抱きしめられ、そして触れるだけの口づけ。
「君が家にいるなんて…なんだか照れるな」
唇が離れ、ふっと笑う土井先生の頬は少し赤かった。
「本当ですか?」
「なぜ疑う」
こつんと額がくっつく。
「そう見えないから、です」
「こう見えても嬉しくて舞い上がっているんだ」
絶対嘘だ。
私が言いたいことを察した土井先生はくすりと笑って、そしてするりと離れていく。
「そろそろきり丸も起きる。忙しくなるぞ」
すると勢いよく襖が開かれた。
「おはようございまーす!」
「おはよう。いつもより元気だなきり丸」
「そりゃあそうですよ!だって今日から夏休み!稼ぎ時ですから!」
「おはよう。きり丸くん。今から朝ご飯作るね」
「ぼくも手伝いますって」
「ありがとう」
「朝ご飯の後は、うちの洗濯ついでにご近所さんの洗濯っすよ」
「さっそくバイトなんだ。午後は宿題の時間ね」
「何言ってるんすか朱美さん。子守のアルバイトに決まってるじゃないっすか」
「私も勉強したいんだけどなあ」
言い合う私達をよそに、土井先生は窓を開けていた。
ほら、余裕そう。
私だけこんなにドキドキしてる。
土井先生と目があった。
「………」
夏の朝日を受けながら私に微笑みかける土井先生を見て、二学期まで心臓が持つのか物凄く不安になったのだった。