君のなかに、僕はいない
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炊き立てのお米の匂い。
弾ける音を立てながらフライパンの上を転がる香ばしいウィンナー。そして、ご機嫌そうな鼻歌。
聴覚と嗅覚を刺激された月島は、ソファに沈んでいた身体を腕で支えながらゆっくり起き上がった。朝が弱いのか、黙りこくってぼーっとしている。
「おはようございます、月島くん。」
「ん...おはよう」
短く挨拶をすると、月島はそろりと立ち上がり、顔を洗うため洗面台は向かった。あかりはちょうど出来上がった朝ごはんをテーブルへ運ぶ。
洗面所から戻った月島は驚いたように少しだけ目を開きテーブルに並べられた食事を見ながら椅子に腰掛ける。
「...君、ご飯作れるんだ。」
簡単なサラダとご飯、目玉焼き、ウィンナーにお豆腐とわかめのお味噌汁。どうやら月島の知る彼女に料理のイメージが無かったらしく、目の前に並べられた食事を見つめながら、思わず失礼なことを口走っている。
「もちろんです、一人暮らし長いので!」
あかりは彼の嫌味とも取れそうな言葉を気にせずどこか得意げな表情で「ふふん」と笑っている。そんな彼女に一瞬ふっと笑いながら手を合わせて「いただきます」と挨拶をし、味噌汁を啜った。
「.....美味しい」
「本当ですか、よかったです…!」
土地が違えば味噌汁の味も違うとはよく言われるが、不思議と月島の口にそれは合ったようだ。彼の様子にほっと胸を撫で下ろしながらあかりも食べ進め、他愛のない会話をしながら、2人は食べ終えると先に月島が立ち上がった。
「…ごちそうさまでした。洗い物しとくから、支度すれば」
「ええっ、私やりますから月島くんはゆっくりしててください...!」
「いい。僕待つの好きじゃないし」
慌てて立ち上がるあかりを制止し、彼はテキパキと片付け始めた。ピシャリと言い放たれた言葉と彼の手際の良さに狼狽えながら、あかりは慌てて「はい!」と返事をして出かける支度を始めるのだった。
車に乗り込んだ2人が向かった先は、様々なジャンルのお店が入ったショッピングモールだった。
服や細かい雑貨、布団までなんでも揃うため非常に便利ではあるが、休日の人混みからは逃れられないのが難点である。
「さ、まずはどこからいきましょうか...あそこの雑貨屋さん可愛い…あ、あっちの洋服屋さん、若い子向けで人気みたいですよ!」
ショッピングモールの地図を拡げながら意気揚々としているあかりに、月島は少し心配そうな眼差しを向けた。
「ちょっと、迷子にならないでよね....」
「大丈夫ですよ!さっき電話番号も交換しましたし、安心です!」
「そういう問題じゃないんだけど(迷子になる前提…)」
スマホを出して得意げに笑うあかりに、呆れ気味の月島は小さな溜息を吐くと彼女が指さした洋服屋へ向かって行った。あかりは慌てて彼の後を追いかけた。
そんな調子でお店を回ること1時間以上。
「月島くんって...即決力がすごいですね...!」
「そう?」
両手に荷物を持った月島と、申し訳程度に荷物を持っているあかりは並んで歩いていた。彼女は一連の月島の買い物をする様子を思い返していたようで、改めて驚きの声を上げていた。
私服や寝巻き等の洋服はもちろん、バッグや靴、小さな収納棚等...大きいものは郵送にしたが、手で持てる量も既に限界そうだ。しかし、兎に角決めるのが早い。
一つのものを買うまでにかかる時間は10分もなく、ほぼ即決するおかげで時間がかからず体力も消費しにくい。
だがその分店舗数を回っているため、そろそろあかりのヒール靴に包まれる足が悲鳴を上げそうになる頃である。
すると、月島はぴたりと足を止め、近くのカフェを指さした。
「君、あのカフェにいて。一旦車に荷物置いてくるから」
「えっ大丈夫ですか?持てないんじゃ...」
あかりの心配をよそに、ひょいと彼女の荷物も持ちあげる。慌てて車の鍵を月島のポケットに入れると、顔色一つ変えずに「どーも」と言い残し彼は駐車場へ向かっていった。
「すごいです...あの量を一人で...」
彼の後ろ姿を見ながら、驚きを隠せない様子で思わず呟くあかりは、指定されたお洒落なカフェへ入っていった。
外のテラス席に案内され、席に座るとじわりと足や体が回復されていくように疲労感が薄まっていく。時間を確認しようと鞄の中にしまっていたスマホを見ると時刻よりもさきに「非通知」の文字が目に飛び込んできた。
「また非通知...月島くん、昨日の今日でご家族にご連絡できていないのかもしれませんね」
次かかってきた時はちゃんと出れるように、と胸決めながら次はテーブルの上に置かれたメニューに視線を送った。
「(わぁ....パンケーキ...!でも、月島くんが食べたいかわからないし、今日は我慢しましょう…!)」
ちょうど小腹を空かせたあかりが、メニュー表の一際目立つパンケーキに目を奪われている頃、月島は車に到着し荷物を積んでいた。
ピリリリリ....
ふと携帯が鳴り、ディスプレイをみるとそこには「母」の文字が。
「もしもし、あぁ、母さん。昨日連絡した件だけど...」
返ってきた母の言葉に、月島は血の気が引いていくような感覚に襲われ、気付けば駆け出していた。
自分が指定したカフェへ人混みをかき分けながら全速力で走ると、テラス席に座るあかりの前に1人の見知らぬ男が立っていた。
「....っあかり!!」
「つ、月島くん...!?(し、下の名前で…!)」
切羽詰まった表情で、月島は彼女の名前を呼ぶ。想像より早く現れた月島に驚きを隠せないあかりは思わず立ち上がった。
「チッ、男連れかよ」
盛大に舌打ちし、二人の前から早々に歩き去ろうとしている男の肩を掴んだのは月島だった。
「ねぇ、この子にしつこく電話かけてんの、あんた?」
威勢よく振り返った男の表情が、酷く強ばり固まっている。あかりには月島がどんな表情か窺い知ることはできないが、男が月島に恐れを抱いているのは確かだった。
「ち、ちげぇよ....!放せ!!」
「...そう」
手の甲に血管が浮き出るほど強く男の肩を掴んでいた月島は、酷く冷たい声色を放つ。
男の答えに、少しばかりホッとした表情を浮かべた月島はその手を離した。男は情けない虚勢を張りながら、乱暴な言葉を投げると走り去っていった。
「月島くん...!お怪我はありませんか…!?」
「さっき、親から連絡あった。君に電話はかけていないって。…っだから、君をひとりで待たせてたから危ないって思って」
息を切らす彼の表情はとても真剣で、額には汗が滲んでいる。
「そうだったのですね....ごめんなさい、私のせいで」
あかりはハンカチを取り出すと、月島の額に当て汗を拭った。その瞬間、月島は彼女の腕を掴みそれを制止した。
「大丈夫、だから。…近い」
「あっ、ごめんなさい...!ではあの、これ使ってください!....ってあれ、月島くん...?」
腕で口元を隠しながら顔を晒す月島に、あかりはハンカチを差し出しながら慌てて謝罪したが、彼の様子に違和感を覚え首を傾げた。
「お顔が真っ赤ですよ、月島くん!大丈夫ですか!?」
「は、走ってきたんだから仕方ないでしょ...!」
「そ、そうですよね、すみません!私のせいで走らせてしまって...!」
そうじゃない、と言葉を返すにも墓穴を掘る気がして、月島は押し黙り溜息を吐いた。
あかりは疲れさせてしまった罪悪感を抱えながら慌ててテラス席に案内し、メニュー表を月島に見せた。
「何飲みますか...?食べ物もありますよ!」
「...アイスカフェオレ。君、頼んだの?」
「いえ、月島くんがきてから、と思いまして...!私はアイスティーにします!」
月島は彼女の言葉を聞くと店員を呼び、オーダーを始めた。
「アイスカフェオレと、アイスティーひとつずつください」
そう言い終えると、月島はあかりをちらりと見やった。口をぎゅっと結んだ彼女はメニュー表のパンケーキを見つめている。
「...あとこれ、ひとつ」
「かしこまりました!こちらのパンケーキは、バターかマーガリン、メープルシロップからお選びいただけますが、どれになさいますか?」
「だって。どれがいいの?」
「え、ああっ...ええっと...メープルシロップでお願いします!!」
彼女の言葉に、店員はにこりと笑うと、オーダーを間違うことなく復唱し、去っていった。
「あ、あの...」
「食べたかったんでしょ。(昔から甘いの好きだったし…)」
おずおずとあかりが口を開くと、頬杖をつきながら月島は笑っていた。その笑顔に心臓が跳ねたことを気づかないふりをしながら、あかりは両手で顔を覆った。
「お恥ずかしい...」
「食べたいものは食べたいって言えばいいのに」
鼻で軽く笑う彼の言葉に、あかりは胸が温まるのを感じ頬を緩ませて頷いた。その笑顔に月島はピクリと眉間に皺を寄せて眼鏡の位置を調整しながら口を開いた。
「で、話を戻すケド...非通知からの電話、うちの親じゃないかったよ」
月島曰く、母は手紙をあかり宛に送ったらしい。だが彼女は手紙を受け取っておらず、すれ違いが発生してしまったということだった。そして一度も電話はかけておらず、番号すら知らないという。
彼の話に、あかりの顔色はみるみる青ざめていった。
「他に思い当たる節があるんじゃないの。電話以外で」
「...郵便物、でしょうか」
月島が怪訝な表情で首を傾げると、あかりは思い返すように話し出した。
実は、偶に郵便物が届かない現象が起きるというのだという。月島の母が送ってきた手紙があかりの元へ届かなかったのもそのせいなのでは、という考えに至ったようだ。
「次、非通知からかかってきたら僕がそばにいる時に出て。下手に僕が出ると逆上されるかもしれないし」
「あ、ありがとうございます。心強いです」
月島の好意をありがたく受け取り、あかりは無理矢理笑顔を作って頷いた。
すると彼は眉間に皺を寄せながら、あかりの仕事の出勤時間や終業時間、場所などを突然細かく聞き出した。勢いに押されるがまま、あかりは質問に答えていき、暫く考える素振りをみせた月島は、ようやく口を開いた。
「朝は僕と一緒に家を出る。夜は最寄駅から歩いて15分以上もあるし、僕が迎えにいくから」
きょとんとした顔で、あかりは腕を組む月島を見つめた。彼の言葉の意味が理解できないといった様子のあかりはハッとして口を開いた。
「待ってください、月島くんにそんな迷惑はかけられません!」
「じゃあ、君にもしものことがあったらどうするわけ」
低い声で、彼は呟くように言った。その瞳は静かな怒りに揺れている。あかりは思わず押し黙ってしまった。
「幸い、君と僕の仕事場は近いし。仕事が終わったら連絡して」
唇を噛みながら、あかりは重く頷いた。彼はそんな彼女の様子に呆れたような笑みを溢している。
「ま、君みたいな鈍臭そうな子に言いよる奴なんて、たかが知れてるでしょ」
「いたぁっ、ひ、酷いです...!」
憎まれ口を叩く月島は俯く彼女のおでこを指で弾いた。突然の小さな衝撃におでこを押さえながら涙目で訴えるあかりに、月島は鼻をフンと鳴らした。
「お待たせしました、こちらがアイスカフェオレ、アイスティーと、パンケーキでございます」
先程オーダーをとった店員が笑顔でテーブルにそれぞれを並べ「ごゆっくりどうぞ」とお辞儀をし、にこりと微笑みながら立ち去っていく。
「わぁ、美味しそう...!」
あかりの目の前にはメープルシロップでキラキラと光り輝く厚みのあるパンケーキが置かれている。カフェオレに口をつける月島は、頬杖をつきながら表情をキラキラ輝かせるあかりを眺めていた。
元気よく手を合わせたあかりはにこにこと笑いながら「いただきます!」声をあげている。
苺の果肉がたっぷり乗っていて、パンケーキもぷるぷると震えるほどふわふわで分厚く、ナイフを通すと気持ちいいほどにスッと切れてしまった。
「美味しいです...!こんな美味しいパンケーキ、初めてです...!」
「ふ、大袈裟。」
心からの笑顔をこぼすあかりに、月島はつられて笑いながら、彼女の頬についたシロップを指先で掬おうとした。
その手はあかりの口元に触れることなく、月島の元へ戻っていく。その様子に、あかりは慌てて紙ナプキンで口元を拭った。
「あ、はしたなかったですね....すみません...」
「いや、そうじゃない...」
「でも、とってもおいしいですよ。一口、いかがですか?」
眉間に皺を寄せ、頬杖をついたまま視線をずらす月島に、あかりはにこにこと笑顔を浮かべながら、フォークに刺したパンケーキを彼の口元の近くに運んだ。
条件反射で小さく口を開いた月島の口の中に、一口サイズのパンケーキが運ばれる。
「ふふ、どうですか?」
「...っ、おいし、い」
悪戯に笑うあかりに、月島は胸の高まりを抑え切れず、顔を片手で覆い真右を向いて口の中に入れられたパンケーキを咀嚼した。
「月島くん、私嬉しかったんです。さっきの言葉」
あかりの言葉に、月島は視線を彼女に送り首を傾げた。
「食べたいものを食べればいい、って。当たり前のことかもしれないのですが、人の顔色を伺ったりして...できてなかったなぁと思いまして...」
あかりはパンケーキを食べながら幸せそうな表情を浮かべて、彼女は言葉を続けた。
「だから、ありがとうございます。月島くん」
面と向かって笑顔でお礼をいう彼女に、月島は顔を逸らし、耳まで真っ赤に染めあげて「大袈裟」と言葉を返した。
ゆったりとした時間が流れるなか、しっかり体力を回復させた二人は暫くしてカフェを出た。
「本当に良かったのでしょうか...ごちそうになってしまって」
「僕が付き合わせたんだし」
あっけらかんと答える月島に、あかりは申し訳ない表情を浮かべていた。
すると、当てもなく歩いていた二人の目に止まったのは、スポーツ用品店だった。彼は一瞬足を止めたが、何事もなかったかのように歩き出す。
「ここ、入りませんか?」
「君、スポーツやってるの?」
「いえ、今はやってはないですけれど...あ、私あそこのお店見てきますのであと15分後にここに集合しませんか?」
半ば強引にあかりはその場を離れて向かいの雑貨屋に向かった。
「(そういえば、月島くんのお茶碗とか買わないといけませんね...)」
あかりは今日の朝食を思い浮かべる。
一人暮らしだったため2人分の揃っているお皿などあるはずもなく、非常に不恰好な朝食だったと思い返し思わず苦笑いを浮かべた。
可愛らしい猫柄のお茶碗とお味噌汁のお皿を手に取り「まるで彼のようだ」と思わず笑みを溢しながらカゴに入れた。
一方、月島はスポーツショップを徘徊しながらランニング用の靴や服を選んでいた。
一通り店内を回り、お会計を済ますとあかりとの待ち合わせ場所へ向かった。
「あ、月島くん!良いものは買えましたか?」
「うん。お待たせ」
月島はまた両手に荷物を抱える形となり、その姿にあかりは思わず笑ってしまった。
「ふふ、今日一番たのしそうでしたよ。よかったです」
「そんなことないと思うけど」
こっそり買い物中の月島を覗き見ていたあかりは、思い返しながらクスリと笑う。納得のいかない表情で言い返す月島は、あかりが持っている荷物を奪い取った。
「あっ、いいですよ!月島くん!」
あかりが取り返そうとするも、彼の背が高すぎて手が届かない。
「君の足がそれ以上遅くなったら日が暮れるデショ」
「ひっ酷いです!意地悪ですね!月島くん!」
「ふ、よく言われる」
片方の口角を釣り上げて笑う月島は、隣で頬を膨らませる彼女を流し見た。そんな彼の様子に胸が「トクン」と高鳴り、その自身の反応にあかりは小首を傾げた。
「(なんだか、胸が...いえ、気のせい、ですね)」
「早く帰るよ」
足を止めたあかりの先を行く月島は振り返り、呆れた声でそう言うとまた歩き出していった。
その言葉にハッとしたあかりは慌てて返事をし、彼の元へ駆け出したのだった。
ショッピングモールを出て、家に到着すると、あかりはもう一つの部屋を月島に案内した。玄関を上りリビングを繋ぐ廊下の途中にある六畳ほどの部屋である。
「よかったです。1人じゃ部屋が余っててもったいなかったので」
買ったものをその部屋に運び入れながら、あかりはにこりと笑った。当初、月島は部屋を与えられるのは申し訳ないという思いで断ったのだが、あかりの強い要望で月島に部屋を一つ使ってもらうことにしたのだった。
「じゃあ、私は向こうの部屋に行ってますので...ゆっくりお片付けしてくださいね!」
「うん、ありがとう。あとでちょっと外出るけど、夕飯の時間までには戻る」
「そうですか、ちょうどよかった...あのよかったら、これ...使ってください」
バタバタとリビングへ走って戻ってきたあかりの手に握られているのは、四角い箱だった。
「好みじゃなかったら私に返品して大丈夫ですので...」
箱の蓋を開けておずおずと差し出したのは、キャメルカラーのキーケースだった。それには既に一つの鍵がつけられている。
彼は目を見開き、差し出されたキーケースをただ見つめていた。
「...月島くんに似合いそうだなって思って...でもっ、考えてみたら好みがありますよね...!すみません、ご相談して決めるべきでした...」
一向に受け取られないキーケースを箱に戻そうと、顔を真っ赤に染めたあかりはうっすらと涙を浮かべていた。
月島はハッと我にかえり、彼女の腕を掴む。
「...いや、ごめん。びっくりしただけだから...ありがとう」
「いっいいえ!お引っ越し祝いと、助けてくださったお礼です」
腕を掴まれたあかりは月島を見上げて嬉しそうな笑みを浮かべている。彼は掴んだ腕と反対の手に持たれていたキーケースをヒョイと取り、小さく笑った。
受け取ったキーケースから、たったひとつだけ鍵がぶら下がっていて、それが光を反射してキラキラと輝きを放っている。
受け取ってもらえた嬉しさと、月島の表情につられて満面の笑みを溢すあかりは鼻歌混じりに軽い足取りでリビングへ戻っていった。
リビングの扉が閉まる音が聞こえた直後、月島はその場にしゃがみ込み、盛大なため息を漏らした。
「はー、本当変わらないよね、そういうところ」
彼女の笑顔を見るたびに胸が痛いくらいに高鳴る月島は、悩ましげな表情を浮かべ暫くその場から動けずにいるのだった。
(君の記憶のなかに、僕はいない)
(それでも、僕は)